ある先輩の話(3)~運命の糸

 定年を機に銀行員からパン屋を始めた先輩の話の続きです。

 先輩は、お母様の介護のために定年を機に仕事をやめて、実家に戻られたのですが、すぐにお母様が亡くなられて、面倒を見る必要がなくなったために、仕事を探す探し始めたそうです。介護つながりで職安を訪問した帰りに出口で配っていたホームヘルパー2級が取得できるという職業訓練講座のチラシをなんとなく手にしたことがパン屋になるきっかけだったそうです。

 自分は運命論者ではないのですが、いくつもの偶然が重なって思ってもみない方向に転がり始めるというのは、よくわかります。今の時代はそうではないかもしれませんが、自分たちの時代は会社の命令で職場や職種が変わり、そこに自分の意志はなかなか持てません。自分の人事だけはいつもわからない(知ろうともしなかった)。齢60歳に近くなり、自分の出処進退は自分で決めることができるのですが、そこにも偶然やなんとなくもやもやと感じていた思いが作用するのではないでしょうか。

 先輩もまた、運命の糸に引っ張られて、パン屋を始め、そのつながりで縁もゆかりもない長岡の地に住まいを移されたのは、天の配剤ではないかと感じてしまいます。

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