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厚真で暮らすこと11.動機は愛がいい

ローカルベンチャーな人たちが、クラスターを形成して、新たなインダストリーを生み出す一歩として開催された、ローカルリーダーたちのミーティングに参加した1日。

すでに何を言っているのかわからない。案内をもらって、あまりよくわかっていないまま、かつ深く考えず、申し込みをしてしまった。全然、思ってたんと違う。満ち溢れるキラキラオーラに若干、引いた。会場に入った途端、もう帰りたい。

ローカルベンチャー協議会の主催で、『ローカルリーダーズミーティング2022in北海道厚真町』が10月8日(土)が開催された。

ローカルベンチャー協議会。
2016年9月、地域の新たな経済を生み出すローカルベンチャーの輩出・育成を目指し、西粟倉村とNPO法人ETIC.の呼びかけに賛同した8つの自治体により発足した(ローカルベンチャー協議会HPより)。
厚真町も協議会の幹事団体であることは知っていたし、ローカルベンチャースクールが開かれ、毎年、起業型地域おこし協力隊として採用された方々が、町内外で活動しているのも知っている。

厚真のみならず、全国各地でローカルベンチャーとして活動する人が増えてきた昨今、個人で、各地域での活動から、これからは自治体や団体の垣根を越えて、ITを駆使し、広域で課題を解決していく時代だ!ということを基調講演や分科会を通して学ぶ研修会が厚真で開かれた、というところだろうか。
参加者、運営スタッフを含めたら150人規模の研修会。しかも、全国のローカルベンチャートップランナーたちが集うのだもの。そりゃキラキラオーラも出ますわ。キラキラを通し越して、ギラギラしてる感じです。

キーノートセッションって、基調講演的な位置づけかしら。

場違い感は半端じゃ無かったけれど、とはいえ、せっかく参加するのだから時間を無駄にするのはもったいない。内心、心細くはありながら、シレっと素知らぬ顔して居続ける図太さは、厚真に来てだいぶ鍛えられたと思う。アウェイ戦こそ堂々と(目の前の景色はホームなのに、ね)

これまでにもローカルベンチャーというヒトモノコトについて、折に触れて話を聞いてきたつもりだったけれど、今回は質が違って。そもそも、ローカルベンチャーに携わる人たちの集まりだから、ローカルベンチャーとは何たるものか的な基礎部分は、視聴する側にすでに備わっているものという前提なので、講義も本題ズバーン。
周りの皆さんの頷きがスゴイ。メモはノートPCかタブレット。気になるスライドはスマホで1枚パシャっと。

レーシングカーのようにハイスピードで駆け抜けていく言葉の数々は、なるほどと理解できるものもあれば、違和感として残るものもあった。
話を聞きながらA5サイズのノートを広げ、子ども教室の卒業生にもらった3色ボールペンを手に、私は講義の内容よりも、今、自分の中にある違和感の正体を探ろうと頭と手を動かす。


このミーティングに申し込みをした後、町内で関わりのありそうな人に、出るんですか?と聞いたら、大概、キョトンとした顔をして「そんなのあるの?」と逆に聞き返された。

参加者やスタッフ関係者を合わせると、150人規模の研修交流会。
デジタル庁統括官である村上敬亮さんによる基調講演。
全国の事例に触れ、厚真町にとっても身近なトピックが並ぶ分科会。
30歳以下の若い起業家によるプレゼンテーションと交流会。
地方発信で世界を動かすトップランナーたちとの人材交流。

参加者の多くが「村上さんの話なんて、なかなか聞けないから、それだけでも価値がある」「活動する地域の中で孤独を感じることがある。今回、たくさんの人に出会って、仲間を見つけられた。良い学びの時間だった」「これからの自分たちの事業に活かしていきたい」と語った。そんな研修交流会が、北海道の札幌や函館ではなく、厚真で開催された。厚真にいながら、ローカルベンチャーの神髄に触れられる場があったのだ。


その事実を、多くの町民が新聞やテレビなどのメディア、町の広報誌を通して知る。もしくは、町外の方から「やっぱり厚真って先進的な町ですね~」とか言われて、ん?何の話??と思いつつ、笑ってごまかす。

で、大概「ふーん、そんなことやってたんだぁ」で終わる。まぁ、まだそれならいいほうで、「また町民は蚊帳の外か!」と憤慨する人もいれば、「あぁ、いつものパターンね」とあきらめを帯びた視線を向けるられるのも、想像に難くない。


厚真でやるなら、もっと厚真の人が居たら良かったのになぁ、と思う。
終わった後「頭のイイ人は、話すスピードも速すぎて、何言ってるのか、ちょっとわからなかった……」とか、「新しい仕組みが必要……って、じゃあ、今ある地元の産業はいらないってことか」とか、「でも、これからの未来って、そうかーって思う部分もあったよ」とか、「今回で目覚めた。ローカルベンチャーに、俺はなる!」とか。
研修会が終わった後、テーブルを囲みながら、厚真の人たちと話をしてみたかったなぁ、と。

これだけのフルボリューム、関心のない人には苦行にしか感じないと思う。
でも、それをただの苦行で終わらせないためには、なんでつまらないのか?何が難しいと感じるのか?そういうモヤモヤや、イライラを聞くことが大事なんじゃないか、って今回参加してみて思った。逆に、すごく感化されて変な方向に走っていく人もいるかもしれないけど(それはそれで、面白いような、面倒くさいような……)


もう一つ、わかったこと。
あの場に集まっていた人たちを樹木に例えるならば、ローカルベンチャーのトップランナーたちは、太陽に向かって貪欲(どんよく)に高く、広く伸びていく枝葉の人たち。
私みたいな地域のプレイヤーは、その土地に食い込む根であり、地域の土壌から養分を蓄えて太くなる幹のような人たち。

枝葉の人たちに出会って話を聞くと、すごいなーと思うけど、私自身、あんまり憧れはしない。自分が枝葉の人になる道筋は思い描けないから。それと同時に、この人たちにはそれぞれの地域の人の顔が、どれだけ見えているん
だろう(いや、見えていないのでは)?とモヤモヤするばかり。

ミーティングのまとめの部分に入ったあたりだったと思う。
そのサービスやビジネスが、100人にあたって1人にしかニーズがなかったとしても、10万人を対象にすれば1000人集まる。
地域の中で100人に1人を見つけるのに苦労をしていても、10万人の世界で物事を考えてみたら、自分が目指す社会は実現するんじゃないかと、いう話をされていて、そうか、これを考えて実現していくのがローカルベンチャーのトップランナーってやつなのだ!いや、もうそもそも見てるものが違うんだ!と、気づいた私。
そりゃ、モヤモヤもしますわな、と違和感の正体に一歩迫った気がする。

100人:1、100,000:1000。両方大事よー、とは言ってたけれど。
じゃあ、都市部でやる方がいいんじゃないのか?都市部より地方からっていうのが今のトレンドなのでは?と、ひねくれたモノの見方をする。悪い癖だと思う。地方発信の意味は、もう少し理解を深める時間が必要で、これは今後の宿題。



見ている世界・見えている景色、モノゴトを考えるベクトルが違う。でも、太陽を目指す枝葉も、幹を支える根っこも、両方なければ高くも広くも太くもなれない。

ただ、私は地面に近いところにいるからなー。木が倒れないように根を守る・育てることが役割と思うと、世界の10万人より、町の4,400人に向き合っていたいなー。
町内の小・中学生、合わせて340人。このたった340人が幸せになってくれたら、それで満足だと思う自分がいる。

ローカルベンチャートップランナーの話を聞いても、発展途上ローカルベンチャーの話を聞いても、結局、思い浮かぶのは厚真の人のこと、うちの子たちのこと。それを再確認できたのが一番の収穫だったかもしれない。


ローカルリーダーズミ―ティングの翌々日、厚真中学校吹奏楽部の定期演奏会があった。開演から5分ほど遅れて会場に着いたら、ほぼ満席。たくさんの人が子どもたちの頑張りを応援に来ていた。愛のある景色だった。
リーダーズミーティングが開かれた同じ会場に、たくさんの人。2日前はあんなにアウェイな空気を感じたのに、この日は完全にホームだった。これからも私は私で勝負する。風に乗って『何のために戦おうとも、動機は愛がいい~』のフレーズが頭の中に流れ続けている。

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