東日本大震災当日に生まれた子たち

震災から2年経った2013年。
私はテレビ局のディレクターとして、被災地を巡って取材をしていた。

まさにその日に生を受けた子どもたちに、
小さな椅子を贈るプロジェクトを追いかけていたのだ。

大災害の中で産み落とされた命。
お母さんやお医者さんもやはり命がけだった。
中には、生まれた直後に揺れがきて、
産湯もそこそこに分娩室から一階の待合室に避難し、
大勢の患者さんと床の上でひと夜を明かしたお母さんもいた。

その日に生まれた赤ちゃんは、お誕生日を祝ってもらえない。
多くの人が亡くなり涙を流す日だから。

「それはあんまりだ!」
と北海道の市民団体が動いた。
「希望の君の椅子」と名付けられた旭川家具のとっても素敵な椅子を、
メンバーが手渡して回った。

子どもはもちろん、お母さんもお父さんもとっても喜んでいた。
小さくなっていた気持ちにフワッと春風が入り込んだみたいに。

「よそ者」という言葉は、嫌な意味で使われることが多いが、
こんなことは「よそ者」にしかできない。
海を渡った北海道に、
「おめでとう、生まれてくれてありがとう!」と声をかける誰かがいる。
一人じゃないよと。

あの日、自分だけの小さな椅子をもらって、
大喜びしていた2歳児は、11歳のお兄ちゃん、お姉ちゃんになった。
もう椅子にお尻は入らないだろう。

運命の日に誕生した子どもたち。
お誕生日おめでとう。みんなに希望をくれてありがとう!

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