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”指揮の不在” と ”指揮官の不在”

元首相の銃撃事件は、ほとんどのテレビ局が事件直後の番組を変更して一斉に報道するほどの大きな事件となりました
折しも参議院議員選挙期間中ということもあって、政界・政局の面でも大きな衝撃が事件後も巡っています

政界・政局の今後の課題は、元首相が率いた会派の代表と運営をどうするのかだそうです
事件の行方や政界・政局全体の状況は、時間が経過するにつれて変動し、予想・予測がつきませんが、会派をけん引してきた代表者が不在となった今、会派を構成する方々はそれぞれに動かれているようです

さて、事業主が突然、事業から不在となった場合でも事業の運営・経営は継続できるでしょうか
監督という指揮官を突然失った野球チームは、どうすれば選手をまとめ上げて試合に勝つことができるでしょうか

今回は、事業主が備えて構えておくべき ”指揮” について考えていきたいと思います


■ ”指揮の不在” と ”指揮官の不在” の違い

たった一文字違いですが、事業の運営・経営においては重大な意味を持ちます
指揮官には通常、以下のような権限と責任があります

  • 組織・人に関する管理監督・統率

  • 重要事項に関する意思決定

  • 意思決定に基づく組織・人に対する指示命令

  • 組織・人の利益保証と補償

  • 部内外に対する説明責任

これら代表的な権限と責任があり、株式会社などでは指揮官一人の権限や責任の一部は取締役(会)など複数名に分任されることがあります

さて、指揮官の不在(他界という最悪の不在も含む)という状況は、組織にとって困ることがあります
権限や責任を誰が代わりに担うのか、重要事項の判断を誰が行えるのか、組織に属する人々は誰の言葉を信じれば良いのか・・・

私が所属していた自衛隊などの行政の多くは、指揮官が一時的にその場に所在していなくても、報告・連絡の態勢が常に保たれています
また、指揮官が長期不在となった場合に備えて、権限と責任の代理・代行や一時的な委譲・移譲などの取り決めがあるので、指揮権を持つ者が常に所在しているという仕組みがあります

つまり、指揮官という個人が不在になっても ”指揮権行使の不在” は発生しません

指揮官の不在が指揮権行使の不在となるのは、事前の取り決めや仕組みがないからです

元首相が率いた会派が、会派代表者の不在(指揮官の不在)で色めいているのは、事前の取り決めや仕組みがなかったために ”指揮の不在” が生じているからです


■ 指揮官の責務

規模が小さくても事業を運営・経営する事業主も立派な ”指揮官” です
事業主の不在で事業が成り立たないようでは事業そのものの危機となります

災害や事故、病気などで事業主が不在となっても事業・組織が止まることがないように対策を講じなければなりません
対策とは、事前の取り決めや仕組みづくり、代理・代行者や次期代表者の指定などを言います

その対策は事業主である指揮官の権限でしか行えません
また、事業主が定めた対策は、組織内に周知しておかなければ機能しません
周知の方法は、口頭ではなく文書化していなければ、正確に伝わりません

  • 国や行政の取り決め事項は、法律や条例などで示します

  • 会社内部の規定は、社則や内部通達などで示します

  • 自分の死後の遺産分与は、遺言書で示します

  • いざという時の事業の継続の細部実施要領は、事業継続計画(BCP)で示します

いずれも ”誰かが上手くやるだろう” 、”言わなくても分かっているだろう” という考えは通じません
”もしもの時になったら、その都度示そう” では、指揮官不在という ”もしもの時” に指揮官自らが示すことはできません

指揮の不在を防ぐための取り決めや仕組みづくりなどは、事業主(指揮官)の責務であることを意識しておいてください


■ まとめ

  • 指揮官・事業主の不在に備えて、指揮権の取り決めや仕組み、代理・代行者などを定める

  • 定めた取り決めなどの対策は文書化して部内に周知する

  • 取り決めなどの対策は、指揮官・事業主しかできない責務である

まだ着手されていないのであれば、指揮官・事業主が不在とならない今から進められることを強くお勧めします


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