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通信障害から得られる教訓

私が長期出張していました時に社会全体に影響を及ぼす事態が発生しました
私も漏れなく巻き込まれましたが、想定していた事態でしたので、速やかに代替手段に切り替えて対応することで困ることはありませんでした

大手携帯電話会社の数日に及ぶシステム障害

生活や仕事に深く浸透している ”通信” という重要インフラは、いつでも・どこでも使えて当たり前な存在となっています
それゆえに何らかの障害で使えなくなった場合の被害は、時間の経過とともに予想以上に甚大化します

さて、今回の事態に遭遇して、あらためて通信の途絶がもたらす影響と対策を考える良い機会となりました
また、当該事業者の記者会見から、事業主が行う説明責任に関する着意についても考えさせられました


■ 通信途絶が怖いのは

今回のようなシステムトラブルのほかにも、災害などでも通信インフラに被害が発生することがあるでしょう
また、通信インフラは正常でも、自分らが持つ通信機能が使えないだけでも同様の被害は起こり得るでしょう

単に通信が途絶しただけでは、何ら被害は発生しません
被害は、通信によって他者や他社とのつながりが途絶えたり、必要とする情報が入手・共有できないという形で表れてきます

加えて、いつも話せる相手と話せなくなる、メールやLINEがつながらないという事象が人の心理面に ”不安” という被害をもたらすことでしょう
また、そのような不安から誤解や疑心暗鬼、誤った選択・判断を招くことも考えられます

現代の通信事情は、物理的距離があっても、通信手段によって人と人がつながっていることで社会を形成し、個人の精神安定剤となっているのかもしれません
また、 ”常につながっている” ということが途絶することほど怖いものはないかもしれません

今回のトラブル発生時は、メールもLINEも機能していましたし、固定電話や他社の携帯電話も機能していましたので、一部の緊急通報や商取引に影響を及ぼしたものの、甚大な被害に至らなかったことは幸いでした

しかし、通信ユーザーが受けた不安や不満は、当該通信事業者に対する信用の低下という形で現れますので、今回の事態は、そういう意味で怖い・恐ろしい事態となっています


■ 今回の事態で得られた教訓

① 通信に関するリスク管理

今回の事態は、色々なことで勉強となることがあります
個人として勉強となることもあれば、事業として参考となることもあります
特に、通信のリスク管理という面で教訓となることばかりです

  • 携帯電話以外の代替連絡手段を考えておく
    今回の事態にあっては、固定電話や公衆電話の活用を広く宣伝していました
    また、友人や同僚が異なるキャリアの携帯電話を使っているなら、使わせてもらうこともアリかと思います
    インターネットが使えるのなら、自分のパソコンからメールが使えますし、ネットカフェなどで情報を入手することも可能でしょう

  • 公衆電話の使い方や設置場所を知っておく
    昭和~平成前期生まれの世代は使い方をご存じでしょうが、使ったことがない世代が存在します
    また、小銭やテレカ(テレカという言葉すらも知らない世代もいます)の持ち合わせがなかったために使えなかったとの声もありましたので、日ごろから知っておくこと・備えておくことが大切でしょう

  • 連絡ができない。連絡がつかない場合の行動基準を決めておく
    地震災害対策などで示される自動出勤や伝令伝達など、連絡が取れない場合の行動基準を取り決め、関係者全員に周知・訓練しておくということも有効です

  • 通信インフラは電話やメールだけではないことを認識しておく
    インターネットや企業内通信の多くが電話会社の通信回線に乗っています
    今回の事態では、銀行ATMやキャッシュレス決済が使えなくなっています
    コンビニなどの全店舗オンラインのPOSシステム、電車会社のATMシステム、道路交通監視システムやETC、航空機搭乗チケットサービスなどなど、公共性があるオンラインシステムは通信途絶の影響を強く受け、いざとなったら使えなくなる可能性があることを認識し、依存しすぎないようにします

② アカウンタビリティも ”備え” と ”構え” が必要

さて、今回の事態では、障害を発生させた事業者側の対応にも注目が集まりました
いわゆる ”アカウンタビリティ(説明責任・説明義務)” というものですが、タイムリーに真実を語ったとしても、語る人の態度や話調で聞き手側の心証が大きく異なります

事業者側が考える ”不用意な発言・不安を煽る発言” を避けた結果、お客さんやユーザー側に真実と誠意が伝わっていないと厳しく指摘されることがあります
また、事故等の発生直後、慌てて説明したが保身に走る言動が見受けられて、更に世間からの指摘や注目が厳しいものとなった事例もあります

自分らの事業に影響のある災害や事故などの発生においては、事業の継続を指揮する ”ガバナンス” だけでなく、事業主だからこそ行わなければならない ”アカウンタビリティ” についても備えと構えが必要です

事業にマイナスであっても、お客さんやユーザー側にとってプラスであり続けなければならないわけですので、最低でも次のような事項が重要になります

  1. 真実と推測に分けた現状の把握と経緯を整理する

  2. 今後の行動方針と見通しを整理する

  3. 誰が、どの場で、どの順番で説明・公表するのか整理する

  4. ユーザー心理を考え、誠意のある言動や想定される要求と対応を整理する

  5. 説明・公表するタイミングは、1~3がしっかりでき上ってから速やかに行う

これら全て、ユーザー側の立場や心証に思いを巡らし、自分なら何が聞きたいのか・知りたいのかを明確にすることが重要です
それには相当の時間と思考を必要としますので、いざという時に備えて、平素からのイメージトレーニングやBCPなどに実施要領の手順化や広報用チェックリストなどの整備をしておくことが必要です

今回の事態で当該事業者の代表が語ったこと、その時の態度を見聞きして、どのように感じられましたでしょうか
また、4月に発生した知床半島沖での遊覧船沈没事故を振り返っても、通信途絶時の対応と事業主のアカウンタビリティが大きく問題視されていますので、これらを教訓として生かすといいでしょう


■ 今からでもできる・今だからこそやる

現代の科学・技術をもってしても予測・予想できない事態が発生することは多々あります
また、予測・予想できない事態に対処できる完璧な備えは存在しません

大地震の発生を正確に予知することは無理ですが、発生した時にどんな被害が起こりそうかなどの ”リスク” は予測・予想できます
予知・予見できないから何もできないではなく、予測・予想を基に ”備え” と ”構え” をできることを行うことが大切です

そして、多くの教訓が得られた今回の事態を受け、災害や事故などが発生していない平穏な今だからこそ ”備え” と ”構え” を整備する絶好のチャンスと捉えていただきたいと考えます

”ピンチはチャンス” という言葉がありますが、致命的なピンチは、やはりピンチであり、チャンスに転じさせることは困難です
先人の致命的ピンチから得られる折角のアドバイス(不謹慎な言い方かもしれませんが)を、自分らの致命的ピンチとさせない ”絶好のチャンス” としてください

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