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BCPの策定はどうやるの

策定の参考サイトなど

BCPを策定する際に、書籍やネット上の情報を探すところから始まると思います
ネットからは多くの最新情報を得ることができますので、ぜひ参考にしてください
以下は、おすすめのサイトです

  • 企業防災のページ
    内閣府防災担当が提供するサイトです
    事業継続ガイドライン(PDF)でBCPの概要説明がありますので、全体像を確認したい場合に活用できます
     関連サイト:企業防災のページ(内閣府防災担当)

  • 中小企業BCP策定運用指針
    中小企業庁が提供するBCPの策定と運用に特化したポータルサイトです
    入門編から上級編までの段階的な説明とともに、資料や様式、サンプルなどが揃っていますので、策定に着手する際に役立ちます
     関連サイト:中小企業BCP策定運用指針

  • 事業継続力強化計画
    同じく中小企業庁が提供する事業継続力強化計画の認定制度のサイトです
    策定したBCPをもとに事業継続力強化計画を作成して認定を受けると、防災・減災態勢の整備の支援として税制措置や金融支援、補助金の加点などが受けられる制度です
     関連サイト:事業継続力強化計画の認定制度

  • BCP策定支援ポータルサイト
    各地方自治体でもBCPの策定と運用に関する情報を提供しています
    東京都では、中小企業振興公社が主体となってBCP策定に関する情報を公開するほか、セミナーや専門家のアドバイスを受ける制度と助成金に関する情報を提供しています
     関連サイト:BCP策定支援ポータルサイト(東京都)

  • 介護・障害福祉サービス事業所等を対象としたポータルサイト
    介護施設・介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所等に特化したBCP策定に関する厚生労働省のポータルサイトです
    自然災害対策と感染症対策のガイドライン、事業所等の種類に応じたひな形や説明動画が充実しています
     介護系のサイト:
     介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修
     障害福祉系のサイト:
     障害福祉サービス事業所等における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

    その他として、独立行政法人福祉医療機構の総合サイト(WAMNET)でもBCPに関する情報を発信しています
     関連サイト:WAMNET


策定の進め方

策定するにあたり、書籍や参考サイトから策定方法やひな形などの情報を得ることができます
入手した情報をもとに、策定の準備から完成まで、段階を踏みながら進めましょう
以下は、策定の進め方の一例です


策定チームを作る

  • チームメンバーの結成
    ごく簡単なBCPは事業主だけでも策定できますが、サービス利用者の生活に影響がある介護・障害福祉の事業や医療事業のBCPは事業主一人でできるものではありませんので、複数名からなる策定チームを結成します
    策定チームは、事業運営上の主要メンバーとすることが妥当ですが、防火管理者である従業員や防火・防災・救命に関する資格保有者がいれば、その方々を含めることで、分野別の意見や情報を皆で共有しながら策定することができます

  • 策定の趣旨説明
    会議・ミーティングを開催して、なぜBCPを策定することとなったか(理由と必要性)と策定することで何が得られるのか(策定の効果)をメンバー全員に説明してゴールと方向性を明確にします
    あらかじめ会議資料を作成・配布し、後から確認できるようにしておくと良いでしょう

  • 策定チームメンバーは緊急対策チームとなる
    策定チームのメンバーは、事業運営上の主要メンバーという立場だけでなく、策定を通じて最大の理解者・認識共有者となり、事態発生時の緊急対策チームとしても活動することを認識してもらうようにします

  • 策定にかかわる役割分担とスケジュール管理
    策定チームの会議やミーティングを何度も開催して策定作業を進めることになります
    会議等の主催、進行、記録などの役割分担を決めておくとともに、会議等の開催時期のスケジュールを決めておきます


策定する内容とその順番を決める

  • 概ねの策定内容は事前に決めておく
    メンバーを集めて「それではどうぞ」と言っても何も進みません
    事前に策定する内容が確認できる一覧を作成して、配布します
    a.BCPを策定した目的
     発起人である事業主・経営陣の考えたものを伝えます
     また、集まったメンバーで再考することでもいいでしょう
    b.基本方針
     事態発生時における事業継続のための対処方針もある程度決めておきます
     集まったメンバーで再確認するとともに、追加・修正などの意見交換につなげます
     例:人命保護を優先する、主力事業の経営を維持する、顧客の信頼を確保する

  • チームで策定する内容を決める
    BCPに記載すべき内容を項目ごとにチームで決定します
    この際、ネット等で得られた情報のほか、防災計画や避難確保計画などを策定済みであれば、それらも参考にします(むしろ、他の計画と比較して齟齬や矛盾がないようにします)
    なお、策定する内容の一例は後に述べます → 策定内容の一例

  • 策定の順番
    基本的な流れは、大きな事項を決めてから小さな事項を決める流れです
    例えば、次のようなBCPの根本となる事項を決定してから、細かな事項の検討を進めます
    ①目的:BCPで示す各種の事項や要領などで達成する目標
    ②基本方針:目的のために行う活動などの方向性
    ③事態発生時に優先して復旧・継続させる重要事業
    ④想定される事態と被害
    ⑤重要事業の被害復旧目標
    各事項を検討するにあたり、それぞれ ”何をいつまでに” 決定するかの時期を決めます
    ※策定の道しるべとなるものなので ”マイルストーン” と言います

    後は、マイルストーンをもとに会議等のスケジュールを立て、各メンバーがそれに向けた準備などを進める形となります


BCP案の作成

BCPの内容が決定されたなら、その内容を取りまとめてBCP案(書類)を作成します
ネット等でひな形が公開されているので、それを参考に作成するといいでしょう
この際に気を付けなければならないのは、次のとおりです

  • 会議等で決定した内容を正確に記述する
    この段階で不明確な事項や疑義があるなら、策定メンバーに確認するか、案文作成後に開催する会議等で確認・提議する

  • 可能な限り見やすくする
    名簿やリストは表計算ソフトで作成しても構いませんが、印刷時に読めないほど小さくならないようにします
    また、BCP発動の流れや手順的な内容はフローチャート化します
    なお、一つの内容(特に、表やフローチャート)がページをまたがないようにします
    これらの理由は、停電が伴う事態が発生したことを想定し、書類としてBCPを作成・管理し、いつでも目視で確認できるようにするためですので、その際の見やすさが重要になるからです


BCP案を協議する

BCP案ができたなら、策定メンバー全員で確認しますが、必要なら他の従業員らにも確認してもらいます
誤記や間違いもありますし、再度検討した方がいいという意見も出てくると思います
完成間近ですが、焦らず丁寧に内容の確認と協議を進めます
なお、すでに防災計画や避難確保計画などを策定済みであれば、それらとの矛盾や違いがないかを再確認します
場合によっては、BCP策定とともに、他の計画も見直す必要があるかもしれません


完成版BCPを管理する

長らく時間をかけて策定したBCPを完成版として出力します
この際、次の事項について注意してください

  • 必要部数のほか、予備を書類として作成する
    BCPを電子データだけで管理していると停電時に使えなくなります
    また、1部だけでは紛失や破損で使えなくなりますし、必要とする部課・セクションにあれば、その場で確認できます
    加えて、予備として1、2部多めに作成しておくと、復旧作業の現場などに持ち出して、確認しながら作業ができます

  • 保管場所
    いつでも確認・持ち出せる場所に保管します
    また、防災計画等もある場合は同じ場所で保管します
    なお、BCP内に個人情報や業務上秘密事項が記載されているならば、漏洩防止策も講じてください

  • 電子データのバックアップをとる
    BCPデータを一か所のパソコンや記憶媒体に保存していると、それらが破損や誤消去すると取り返しがつきませんので、複数のパソコンやUSBメモリーなどの媒体にバックアップするほか、クラウド・サービスを活用することも検討してください
    なお、顧客データや経理データなど、事業継続に必要な最新データも必ずバックアップとりましょう


策定する事項(一例)

以下は、最終的にBCPに記載する事項例を列挙したものです
これらの項目の全てを必要としないかもしれませんし、これら以上の項目も策定しなければならないと思いますので、業種・業態、事業継続上の事情、策定済みの防災計画等との整合性を考えて、策定すべき事項を網羅するようにします

介護施設・介護サービス事業所や障害福祉サービス事業所等は、サービス利用者の態様(入所・通所・訪問など)によって重視すべき事項や優先順位が異なりますので、被害状況下での業務要領は、ある程度細かい内容とする方がいいかもしれません

  • BCPの骨幹となる項目

    • 目的

    • 事態発生時に優先して復旧・継続させる重要事業(商品・サービス)

    • 想定される被害

    • 重要事業の被害復旧目標

  • 組織的な体制に関する項目

    • 緊急対策の体制

    • 緊急連絡体制

    • 情報の収集・伝達体制

    • 平常時の管理・整備の担当者(担当セクション)

  • BCPの発動フロー

    • 発動条件

    • 発動後の活動の流れ図

  • 被害状況下での業務要領

    • 二次災害・事故防止・感染防止対策

    • 販売・サービスの提供

    • 顧客・サービス利用者・事業関係者との連絡

    • 勤務管理

    • 防犯・所内治安維持

    • 従業員、顧客・サービス利用者のメンタルヘルスのケアとマネージメント

  • 事業継続に必要とするリスト等

    • 従業員名簿

    • 顧客・サービス利用者名簿

    • 顧客・サービス利用者状況確認リスト

    • 取引先・関係公共機関・関係事業所等の連絡リスト

    • 事業継続用の資器材リスト

    • 非常用の資器材リスト

    • 緊急避難マップ

    • 緊急搬出物品リスト

    • 非常時の感染症対策マニュアル

    • 防犯マニュアル

    • 従業員用に配布するマニュアルや携行カード等

  • 平常時の管理と整備

    • 管理体制

    • 施設、設備や備品の保守

    • 事業継続に必要とするリスト等

    • 事業継続用・非常用の資器材

    • 事業経営及びBCPに関するデータと書類

    • BCPほか、各種対策計画の見直しにかかる事項の記録

  • 教育研修と訓練の実施

    • 実施時期等の基準

    • 訓練の計画、実施、評価、BCPへの反映

  • BCPの見直し

    • 日ごろの業務を通じて得られた改善事項を反映

    • 訓練などで得られた教訓や改善事項を反映

  • その他(必要に応じて策定)

    • 被害状況下での資金調達の方針

    • 主力事業の方向転換(転換する条件、転換の方針など)

    • 業務上の提携・協力が可能と考える他事業所・他企業との調整の方針

    • 事業に関係する行政側担当部課との調整・情報交換

    • 従業員の家族に対する支援・ケアの方針

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