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BCPと防災、何が違う

業務継続計画(BCP)をネット検索すると多くの情報が出てきます
そして、必ずと言っていいほど、自然災害と防災の話が主題となっています
業務継続計画を説明する上で、自然災害というリスクが最もイメージしやすいからでしょう

防災(計画)と業務継続計画との違いが分からない
何が求められ、何を求めれば良いのか分からないという方も多いことでしょう

今回は、防災(計画)と業務継続計画(BCP)との違いについて解説してみます


■ ” 防災(計画)=業務継続計画 ” ではない

結論ですが・・・

  • 防災(計画)は、災害を防止することと、人や財産を守る活動・行動

  • 業務継続計画は、あらゆる状況下でも事業を存続させる活動・行動

業務継続計画を説明する上で、防災から話を進めると理解しやすいのは事実です
ですが、考え方や考えるべきポイントは、両者には違いがあります

防災は、人や財産の保護・救済に重点が置かれています
災害から被害をできるだけ少なくし、被害が出ても早く救う・復旧するという活動です

一方、業務継続計画は、事業や事業の主軸となる業務の継続に重点が置かれます
事業にインパクトを与える事象をできるだけ少なくし、被害が出ても早く復旧するという活動(計画)です

防災(計画)と業務継続計画の関係は・・・
事業や事業の主軸となる業務を継続させるために、防災という考え方を組み合わせた活動(計画)という関係です


■ 大きな意味での経営の戦略と計画

この記事を書いている昨今、物価高やエネルギー費の高騰で、どこの事業経営も負担増となっています
業種等によっては、経営難という非常事態に陥っている事業者もあることでしょう
物価高などは自然災害ではありませんが、事業への被害を考えると、目では見えない災害と言えます

他方で、影響は受けていても、経営のダメージまでに至っていない事業もあります
仕入れとエネルギーをさほど要しない非製造業などであれば、ダメージは少ないことでしょう
また、将来の物価高やエネルギーの枯渇などに対応できている事業もダメージは少ないことでしょう

物価高などを災害と見るならば、事業者側に ”防止・阻止する手段” は、ほとんどありません
できることがあるとすれば、いつ高騰するか分からない物価高等に ”備える” だけとなります
物価高などへの備えとなると、もはや経営(学)の分野のお話です

つまり、事業継続計画で求めるのは、経営(学)上の防災活動であり、そのための戦略です
ということは、想定・予測する事態や被害は、自然災害だけが対象ではなくなります
極端な話、事業主が転んで入院しただけでも、経営上の非常事態となることもあるのです
(歌手やタレントなどは、その代表例です)

以上のことから、事業の特性や体力によって、ダメージとなる事態が全く異なります
同じ業種であっても、地理的・物的・人的・経営上の特性によって、千差万別というわけです
また、その時々の事業の状態や周辺環境でも異なってきます

事業を存続・継続させることを目的とした対策と対処の戦略は、もはや経営戦略です
その戦略を具体的にしたものが計画であり、計画に基づく活動が伴ってこそ、成立します


■ 事業継続計画の策定と運用

”敵を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず”
よく耳にする孫子の兵法の一説です

事業の脅威となるものすべてが ”敵" とするなら、次のようなものが挙げられます

自然災害、大事故、大事件、戦争や紛争、テロ、サイバー攻撃・・・

また、状況の変化や存在自体が ”敵" にもなり得ます

政策、経済、法令・条例、競合、世論の意識や行動、お客さん・・・

さらに、こんなこともあります

”真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である(ナポレオン)”
従業員の法令等違反や職務怠慢、コンプライアンスの抵触・・・

”己を知る” とは、自分らの事業の特性や体質、従業員などのことだけではありません
〇事業に脅威・ダメージとなる "敵" の認識があるのか否か
〇事業の弱点の補い方、強みの活かし方
〇何をすべきかを知っているのか・認識できているのか

事業継続計画を策定する上で、事業の敵を挙げようとすると、何でもかんでもになりがちです
しかし、本当の敵は何なのか、どこにいるのか、どうなると敵に転じるのかを考えるべきです
また、己のことをどこまで知っているのか、認識できているのかを問う必要もあります

これらが整理できれば、真の敵に対する戦略が立てやすくなります
戦略が立てられれば、具体的に誰が・何を・いつまでやるなどを組み立てられます

さらに、そのような考えを持ち、戦略を実践・実行し続けることで、敵の変化に対応が可能です

①敵と己のことを知る・認識する
②敵や脅威を評価する
③対策の戦略や具体策を組み立てる
④対策を実践・実行する
⑤実践・実行の結果、敵と己のことを知る・認識する
⑥その後の脅威を評価する
⑦改めて、対策の戦略や具体策を組み立てる・・・・

以上のような活動を繰り返すことが事業の運営・経営の一環でもあります
これ以外にもPDCAなどによる繰り返し方向もあります

これらの活動のことを ”運用” といい、事業継続計画を活かすための重要な活動です


■ まとめ

”BCPと防災、何が違う”
この問いの答えは

  • 事業を存続・継続させるために、防災という考え方を組み合わせた活動(計画)という関係にある

  • BCPは、防災という概念ではなく、経営(学)という概念

ということで、”違いのありなし” で考えることではありません
むしろ、BCPに防災の概念を取り込むことが必要なのです

防災のことをよく考えてみてください
人や財産を守った後、”そこにあるもの・そこで求めること” が必ず続きます
防災活動の後のことまでも考え、対策などを講じるのがBCPであり、その根本となる戦略が必要なのです


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