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頑張っているのに、報酬減算?

令和6年度の報酬改定で、報酬が減算される項目が示されました
色々と体制を整えて加算項目を増やしても、減算項目があると何にもなりません
減算対象とならないようにするには、どうすれば良いのか?

今回の改定で決まった減算項目などについてお話します


減算になってしまう項目

今回の報酬改定で追加された減算対象の項目は、以下のとおりです
(括弧内は、対象とする事業所等と適用の開始時期)

  • 虐待防止措置未実施(共通:今年度から)

  • 業務継続計画未策定(共通:今年度から)

  • 情報公表未報告(一部を除き共通:今年度から)

  • 地域移行等意向確認体制未整備(施設入所支援:令和8年度から)

  • 個人単位ヘルパー長時間利用(共同生活援助:今年度から)

  • 短時間利用(就労継続支援B型の一部:今年度から)

  • 支援体制構築未実施(就労定着支援:今年度から)

  • 支援プログラム未公表(児童発達支援、放課後等デイサービス:令和7年度から)

  • 自己評価結果等未公表(保育所等訪問支援:令和7年度から)

なお、以下は、減算内容が変更となっています

  • 身体拘束廃止未実施減算(一部を除き共通)

  • 栄養士の非常勤・未配置減算(施設入所支援)

  • 各支援費重複減算(計画相談支援)

今回の改定で追加・変更された項目のほかに、既に適用されている項目もあります
それらは、大きく2つに分類できます
①人員・設備・運営の基準を維持させるための措置
②サービス利用者の権利の保護と利益を担保するための措置

いずれも、サービス利用者のために、事業者側の組織体質や業務処理要領、従業者の意識などが適正で健全な状態にあり続けさせることを目的としています


注目の減算3項目

減算対象の項目のうち、今回は次の3項目について注目してみます
これらは、未実施が認められた場合は、義務化された時点までさかのぼって減算対象となります

例えば・・・

生活介護事業所が、令和6年10月の運営指導等において、業務継続計画の未策定が判明した場合(かつ、感染症の予防及びまん延の防止のための指針及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っていない場合)、令和6年10月からではなく、令和6年4月分の報酬から減算の対象となります
(引用:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1)

1.虐待防止措置未実施(共通)

利用者の人権保護の観点で事業者が行うべき事項が明示されています
①次の全ての事項が行われているか
 ・虐待防止委員会の定期的な開催と従業者に対する結果の周知徹底
 ・従業者に対する虐待防止のための研修の定期的な実施
 ・虐待防止措置を適切に実施するための担当者の配置
②運営指導における確認書類等
 ・委員会議事録
 ・研修を実施したことが分かる書類
 ・担当者を配置していることが分かる書類

2.業務継続計画未策定(共通)

利用者に対するサービス等の継続した提供のために行うべき事項が明示されています
①自然災害及び感染症等発生時の業務継続のため、業務継続計画(BCP)を策定しているか
②運営指導における確認書類等
 ・業務継続計画(BCP)
 ・研修及び訓練を実施したことが分かる書類(※注3)
 ・見直しを行ったことが分かる書類(※注3)

3.情報公表未報告(一部を除き共通)

利用者に対するサービス等の適正な提供のために行うべき事項が明示されています
①利用者ニーズに即したサービスを容易に選択できるよう、法に基づく情報公表が報告されているか
②各都道府県等で定める期日までに報告


上記の1と2は、運営指導等において、実施状況等を示す文書・書類が必ず確認されます
3については、各都道府県等で定める期日までに必ず報告しなければなりません
 
さて、これら3つの項目には「とある状態」が生ずることがあります
 
” とりあえず体裁を整えた = 形だけ

議事録や実施記録などは、運営指導がある日までに作成してしまえば、体裁は整います
でも、本来目的に即していない結果を記録しても、自分らの事業に何のメリットもありませんし、文書や書類の偽造と指摘されかねません
 
業務継続計画(BCP)も、ネット上にあるひな形を使えば、簡単に作れます
でも、実際に使おうとしたら、内容が希薄で使いものにならないということがあります
 
情報公表の報告も、実態と異なる内容を報告しても、いずれは発覚します
何よりも利用者と自分らの事業に全くメリットがありません
 
そういう観点で、これら3つの項目は、減算されるから対策するという見方ではなく、本来目的を真正面で捉えて、確実に行わなければならないものと考えてください


減算を回避するには

改めて明言しますが、以下は、減算されるから取り組むものではありません
それぞれの本来目的を考え、整えるモノ・コトはしっかりと整えましょうということです

1.策定するべきものは策定する

策定が義務化されている計画などは、ちゃんと策定します
 ・業務継続計画(BCP)や非常災害対策計画
 ・感染症等対策指針
 ・身体拘束の適正化の指針
なお、義務はなくても上記の計画等を補助・補足するものも一緒に策定しておく方が良いでしょう
 ・避難行動マニュアルや防災チェックリストなど
 ・感染症等対策マニュアルや感染症発生時のチェックリストなど
 ・虐待防止指針やコンプライアンス指針など

2.行ったことは、必ず記録する(様式サンプル付き)

運営指導等においては、委員会(会議)、研修や訓練、計画の見直しなどの実施状況を書類で確認します
当然、口頭による追認確認がありますが、行ったことを記録する書類がなければ、未実施と指摘されます
①委員会
 ・会議実施後は、速やかに議事録を作成する(保存期間は5年を基準)
 ・個人情報を記録する場合は、議事録の目立つ個所に標示を行う
②研修と訓練
 ・年間(年度)の実施計画を作成しておく[様式サンプル
 ・実施後は、速やかに実施記録を作成する[様式サンプル
 ・計画と実施記録を同じフォルダ等で管理する(保存期間は5年を基準)
③業務継続計画(BCP)など
 見直しを実施した経緯と結果を書面で残す[様式サンプル
 ・計画書の更新・修正と改定履歴の記載
 ・計画の改定が必要でなかった旨の記録の作成(保存期間は5年を基準)
 

3.担当者を必ず決めて明示する

管理者やサビ管などの人員基準で定められる人員配置のほか、業務上の担当者や責任者を指定し、誰もが認知・確認できるように明示しておく
以下は、明示手段の例です
 ・事業所内の人員組織図
 ・担当者・責任者の一覧表
 ・職員連絡名簿などへの記載
 ・委員会や会議の議事録に担当者等を明記

4.事実を正確に記録・記載する

何度も言いますが、正直で正確さが問われます
事実や現状を正確に把握し、書面やデータによる記録や記載においても間違いがないよう、二重チェックと相互チェックを行います


まとめ

日頃から一生懸命に事業運営を頑張っていても、やるべきことを怠ると報酬額が減ぜられることがあります

今回の報酬改定に伴って義務化された事項は、障害福祉に絶対必要な事項であるとの認識のもとに、現状を整理して、対応することが重要です
手間と時間がかかることもありますが、利用者さんと自分らにとって大切なことですので、真摯に対応していただきたいと思います

なお、今年度に限らず、次年度以降に適用される減算対象の項目がありますので、今の内から準備を進めることをお勧めします


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