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体制の整備って、悩ましい

介護事業や障害福祉サービス事業における業務継続計画を策定・運用する際に困ることがあります
特に、”運用の体制” という部分を策定する際は、悩ましい課題となります

  • そもそも、体制とは何なのか

  • 職員数を考えると、いくつもある体制や委員会を上手く作れない

  • 担当者を決めると、その担当者に業務や責務が集中してしまう

今回は、この ”体制の整備” に関する課題の解決について考えてみます


■体制とは

この課題の原因は、障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準にあります
各事業所等は、この基準に従って ”体制” を整備しなければならない規定となっています

  • 事業の運営に必須の人員に関する基準(基本基準)

  • 業務管理の体制

  • 非常災害時の関係機関への通報及び連携の体制

  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための対策を検討するための委員会

  • 身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会

  • 虐待防止のための対策を検討する委員会

  • 苦情を受け付けるための窓口

体制や委員会とは、責任者と職員を構成員とする組織的なカタチをもったものです
組織である以上、”誰が、何をする” を明示する必要があります
少なくとも、次のような内容を明示します

  • 役職・配置先と担当する人

  • 担当する仕事・責務

  • 不在時の代行者

体制とは、文字どおり、”組織の体と制度” のことをいいます

責任者と職員は、既に事業所等という法人組織の中に所在しています
法人組織の本来目的は、利用者に対する介護・障害福祉サービスの提供です

その中で、特定の目的をもった業務を行うためには、複数名で対応することになります
しかし、その複数名の統制が取れなければ、適正・的確な対応はできないことでしょう
そこで、担当する人や責務などを決めて、責任者の指揮下で動くようにしておきます

この ”特定の目的” が、先ほどの非常災害時の対処や感染症や虐待の防止などです
特定の目的に沿った活動をするため、適任者を指定して組織化することを ”体制の整備” といいます

運営基準では、記載の基準事項について、”体制を整備して対応・活動するように” と指示しているのです


■ 体制の作り方

それでは、それらの目的をもった体制を、どうやって作ればいいのでしょうか
特定の目的をもって活動する適任者は、どのように選定すればいいのでしょうか

標準的な考え方は、次のとおりです

  • 何種類の細かな業務があるのか

  • それらの業務量や難易度はどの程度になりそうか

  • 誰の責任・指揮の下に置くのか

  • 担当は1名でいいのか、複数名で分担・班分けして対応させるべきか

  • 結果として、何人くらい必要なのか

  • その特定の目的に関わりのある業務や活動との関係が深い部署はどこか・人は誰か

  • 他の体制や委員会などとの兼ね合いはどうなのか

これらを整理した上で、組織図を作って、適任者を充てるようにします

職員が数十名も所属する会社などでは、係のところが ”部・課・科” となることでしょう
しかし、職員が十数名程度の事業ならば、個人名が入ることでしょう


■ 兼務で担当せざるを得ない場合

さて、このような体制や委員会が複数もある場合は、どうなるのでしょう
部課科で組織化された会社などでは、複数の体制等があっても、何とか運営できるでしょう

ところが、十数名程度の事業所等の場合、いくつもの体制等に割り当てる人数はいないでしょう
しかも、その大半がシフト勤務や訪問業務が主体であると、本部に所在する機会が少ないこともあります
そのような状況で、いくつもの体制等を作ろうとすると、必ず ”兼務” という手段となります

法人の代表が、事業所の管理者と施設長を兼ねているところも多いことでしょう
サービス管理者が本来業務の他に、関係書類の管理や経理も行っているかもしれません
少ない人員で多くの業務を行うためには、兼務という仕事のやり方にならざるを得ません

初めに紹介した非常災害時の対処や感染症や虐待の防止に関する体制の整備においても同様になります
ところが、規定の中には、次のようなことが示されていることがあります

「(〇〇委員会は、)運営委員会などの他の委員会と独立して設置・運営することが必要である。」

他の委員会と独立させる企図は、以下の二つがあります

  • 一人の職員・ひとつの部課科に業務の負担が偏ることを防ぐことで、内容のある業務の実施を担保する

  • いくつもの業務が混在するで、担当(者)が不明確になる・業務が混乱することを防止する

規定に従い、真正面に体制を整備しようとすると、少人数の事業所等では確実に人材不足になります
また、何とか業務を割り当てたとしても、管理・統制が煩雑となる可能性があります

そこで、先ほどの規定に続く、次の一文を上手に活用します

「相互に関係が深いと認められる他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置運営することとして差し支えない。」

つまり、2つ以上の体制や委員会にまたがって兼務する職員を指定するための方策です
誰から見ても、相互に深い関係のある体制や委員会を組み合わせ、同時並行で業務を行うのです

例えば・・・

  • 虐待防止委員会と身体拘束等検討委員会
    それぞれの委員会の設置の目的に
    ”利用者の人権擁護のため、適正な業務の実施と厳正な監督・指導”
    を入れておくことで、相互の関係性が深まります

  • 感染対策委員会とBCP対策本部
    それぞれの委員会等の活動目的に
    ”感染症発生に備えた対策、感染発生時の緊急処置とまん延防止の処置により、人と事業の安全を確保する”
    と明示しておくことでも、この2つの体制を1つの組織で運営することが可能です

向かうべき目標と行うべき業務が同じであれば、一つの体制組織で運営することができます
また、個人が担当する業務も一つのやり方で、2つの目標・目的を達することができます

複数の業務を一人の職員やひとつの部課科に兼務で行わせるのは容易なことではありません
しかし、複数の業務を上手に融合・関連付けて行わせれば、負担減となり、確実性も高まります


■ まとめ

介護事業・窓外福祉サービス事業等は、利用者の日常生活に直接かかわる事業です
そのため、法令等で厳しい規制や制約、行わなければならない事項が多岐にわたりあります

条文一つ一つに対応させるようにすると、職員数などの制約で実現化が難しいと思えることがあります
その時には、やるべきこと・必要な労力などを整理した上で、業務内容を融合・関連付けるようにすると良いでしょう
また、今後においても、新たな実施事項が追加されることが予期されますが、その際も同様に考えをまとめると良いでしょう

そんな時にも、整備した体制や委員会の場で、担当者一同の下に検討を進めれば、いいアイデアも出ることでしょう
カタチだけの体制や委員会の整備になりがちですが、事業主・管理者だけで悩むよりは、いい考えが出ることもあります
そういう活動をするためにも、体制や委員会の組織づくりと運営を大切にすることを強くお勧めします


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