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BCPの運用は平時の経営ツール

自然災害等を想定したBCPや新型コロナウィルス感染症発生時のBCPなどの解説に出てくる言葉に「運用」というものがあります

今回は、「BCPの運用」について解説してみます


■ BCPは非常事態時だけのものではない

結論としては、BCPの運用の根本は、日ごろからの事業運営・経営と異なりません

BCPを策定際は、災害等の発生や新型コロナウィルス感染症の発生など、想定した非常事態が発生した時に、どのように被害を少なくし、受けた被害を復旧させ、どのように事業を継続するのかを戦略的に取りまとめたものです

それでは、非常事態ではない日ごろにあってはどうでしょうか
別に計画だの戦略だのを考えずにお客さんに対応し、事業を営んでいるのでしょうか
形や用語はどうあれ、事業目的があって、お客さんがいて、応対する事業主や従業員がいるから、事業が成り立っているはずです

ということは、日ごろの事業運営や経営にも、それなりの戦略があるはずです
その戦略の根本には、常に変動している事業に影響を与える状況や環境、経営状態などがあります
事業主や経営陣は、それらの状況に追随しながら「次の一手、将来の展望」という戦略を描いているはずです

事業の運営・経営は、非常事態であろうがなかろうが、この「戦略」が必要であることが共通しています


■ 平時と非常時との相違

ここで、BCPの運用と日ごろの事業運営・経営との相違点について整理しておきます
なお、各項目の内容は、ごく一般的で業種にかかわらず共通する内容としています


  ※事業に必要な資産
  :お客さん、取引先、従業員、仕入先などの人的なもの
  :施設、設備、資材、商品、原材料などの物理的なもの
  :予算、預貯金、予備費、負債などと呼ばれる金銭的なもの
  情報:社会ニーズ、顧客動向、経済動向、法改正、天気などの無形のもの

以上のように主たる内容で比較すると、次のような共通する部分があります

  • お客さんや社会ニーズに答える

  • 事業を継続すること

  • 事業に影響を与える環境等の変化

  • 事業に必要な資産

  • 事業活動時期は常時

これらは日ごろの事業でも、災害等の事態発生においても ”存在していて、必要で、行わなければならない事がら” ということになります


■ 平時は必ずしも「平らではない」

お客さんや社会ニーズ、事業を取り巻く環境や状況などは、常に変化していることは肌感覚でもお分かりかと思います
世の中は、災害等の非常事態でなくても、安定しているとは言えないのが現実です

気候変動はゆっくりとした変化ですが、冷夏や暖冬などの影響は事業の運営・経営に及びます
この場合は、事業への影響を予測して対策を講じたり、その場その場で対処する余裕もあるかもしれません

台風や強風、集中豪雨などは、ある程度の情報があれば直前までに対策を講ずることもできますが、地震や火山の噴火なのどは、発生時期や影響の予想ができづらく、事前の対策も超えることがあります

世間の口コミや風評、突然の事故、情報流出などの不祥事もある程度予測できて、事故や不祥事は防止することも可能ですが、ひとたび発生すると、その影響は予測・予想をはるかに超えることがほとんどです

いかがでしょう
時間の進み方や物事の見方によっては、平時と言っても必ずしも「平らではない」わけで、状況によっては ”非常事態は日常茶飯事” とも考えることができます
ですが、日ごろを「平時」と感じている人が大半ですが、「非常時」と感じるようになる境目はどこにあるのでしょうか


■ 非常時を平時にする考えと活動

回るお寿司のチェーン店は、1日のうちで時間帯に応じて回転台に置くお寿司の種類と数をコンピューター管理していることで有名です
当然、日付や曜日、月別、季節、天気などでも管理されており、それに伴って仕入れと在庫も管理されています
さらに、注文内容や数量、仕入数などの変化にも対応できるようにデータ管理されており、おそらく、災害等が発生しても、一定の被害規模なら対応できるデータとノウハウがあるものと想像できます

彼らの経営は、予測できることを徹底的に分析・データ化して、対策と体制を整え、それらすべてをデジタル技術を活用して完全システム化することで成り立っており、経営上の強みとなっています

言い方を変えれば、彼らは「測ることができる不測」を徹底的に分析して「予測値」に変えるという作業を行い、さらに、事業にかかわる重要な要素のうち、常に変化しているものは、その変化を注視して予測値を変えながら対策を講じ続けています

このように、徹底的な分析と対策、そのための活動の継続で「非常事態・不測の事態」を限りなく「平時の中の単なる変化」に変え、非常事態だと慌てる状況にならないようにしています
強靭な経営とは、まさにこのようなことを言うのだろうと思います


■ 改めて、非常事態時だけのものではない

BCPを策定するにあたり、ネット等で入手できる「ひな形」の多くは、非常事態における特別な対応や活動を記載するように作られています
無論、その形が間違っているわけではないのですが、何でもかんでも「不測の事態」と確定して考えるのではなく、日ごろから「測ることができる不測」を予測し、講じられる対策を考えて記載しておくべきです

そして、あらゆる変化に注意して予測と対策を講じることは事業運営・経営の基本であり、BCPで求めるところでもあるので、BCPは非常事態の時だけに使うものではなく、日ごろの事業運営・経営の中のひとつのツールという位置づけで策定して使うものとなります

そういう観点で見ると、BCPの運用とは、災害や感染症などの発生時でも事業を継続できるようにするため、「あらゆる変化に注意して予測と対策を立てる日ごろからの活動」ということになります


■ まとめ

  • BCPの運用の根本は、日ごろからの事業運営・経営と異なりません
    なぜなら・・・

    お客さんや社会のニーズ、事業に影響がある環境や状況(脅威)、事業に必要な資産は変化する

    ・・・からです

  • BCPの運用の根本は、日ごろからの事業運営・経営と異なりません
    なぜなら・・・

    お客さんや社会のニーズ、事業に影響がある環境や状況(脅威)、事業に必要な資産は変化する

    ・・・からです

  • 事業の運営・経営・継続は、次のような共通した活動で成り立つ
    測ることができる不測の事象を予測に変える活動
    あらゆる変化に注意して予測と対策を立てる日ごろからの活動

  • BCPの運用とは
    日ごろからの事業の運営・経営の中のひとつのツールという位置づけで使うもの

BCPを使えるツールとして作り上げ、育てて、使うことが事業主・経営陣の責務です


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