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求める人がいるから、続ける人がいる

この記事を書いている頃、ニュースでこのような報道がありました

”ロシアのプーチン大統領、軍事作戦継続のため、部分的動員の大統領令に署名”

これは、ウクライナでの軍事作戦に携わる兵員の増員を目的とした行動です
ただ単に ”兵隊が足りないから、補充する” という安直な理由からきているようです
”足りないから補充” という、人を物のように扱う考え方、これで作戦を続けられるでしょうか

時として、事業の運営・経営で、このような考え方となることがあるかもしれません
・人手が足りないから、求人活動で補う
・お客さんが来ないから、広告を出して呼び込む

でも、人手が足りない原因は何でしょう
お客さんが来ない理由はどこにあるのでしょう

平素でも大きな課題なのに、災害等の非常事態では、更に大きな問題となります
そのためには、”人” という事業資産をどのように捉えて、考えるべきなのでしょう

今回は、事業継続の要と言える ”人” という面にスポットを当てたお話となります


■ 全ては ”人” にあり

事業の運営・経営には4つの資産が必要です

人・物・金・情報

このうちの ”人” は、次のような理由で最も貴重な資産と言えます

  • 事業の存在意義と収益の源泉
    顧客・サービス利用者

  • 事業の構成員で原動力
    従業員・職員

  • 他の事業資産の運用者
    物・金・情報は、人の判断によって動かされる

  • 限度・限界がある
    育成に時間・費用・労力がかかる
    人数の制限や能力発揮の限界がある
    年齢や心身状態によっては働けなくなる

  • 人以外の代替がない
    事業に必要な特定の資格や技能を持つ
    機械で判断・処理できないことができる
    人と人の信頼関係が作れる

ここに面白い例があります
お馴染みのダチョウ倶楽部の「押すなよ!押すなよ!」というシーン
AIがこれを正確に判断して行動できるかという、技術革新上の課題があります

「押すなよ!」の言動から、その後に起こる結果が予測できて、笑いの期待感が膨らむ
「押すなよ!」という言動を察して、待ってました!と背中を押す
期待どおりだけど、背中が押される前から、笑ってしまう

人は、他の人のことを思い、察するような感覚や感情を持っています
非論理的・定性的な感覚と判断は、現時点の機械やAIでは無理なことでしょう

一方、事業は、現状を把握・判断し、将来を予見した活動は論理的・定量的な考え・活動が必要です
そのような考え・活動は、もしかすると機械やAIが代わりに行えるかもしれません

しかし、事業の運営・経営は人と人との間で行う活動です
相手が会社であっても、最終的には人と人の付き合いが必要となります

このように、人は論理性と非論理性、定量性と定性性といった相反する特性を上手に使い分けることができます
そんな ”人” の存在は、代替や取り換えが難しい事業資産だと言えます
また、人がいるから事業が成り立つのですから、”全ては人にあり” ということになります


■ 人を活かす事業継続マネージメント

ロシアの部分的動員による兵員補充と、事業上の欠員補充・顧客獲得には、大した違いはありません
それは ”目的達成のために必要な人を集める” という意味で同じだということです

しかし、両者の決定的な違いは、”人を死なせる行動” と ”人を活かす行動” にあります
”活かす” とは、人が人を守り、人が幸せに暮らし、そのために人が活躍するということです

  • 人を守るとは、人命を守るだけでなく、人権・尊厳・信頼を守ることも含みます

  • 人が幸せに暮らすためには、人の要求に応え、雇用を創出し、利益を享受・共用すること

  • 人が活躍するためには、そのような場所と機会を設け、一人一人が個性を発揮してもらうこと

なお、事業の運営・経営上の ”人" とは、次の全ての人をいいます

  • 顧客・サービス利用者(買い手)

  • 職員・従業員(売り手)

  • 事業主・経営陣(売り手)

  • 事業に近しい部外者や社会全体

以上のことは、規模の大小や業種の違いにかかわらず、事業の運営・経営に不可欠なことです

ミニ・コラム
【 三方良し 】

江戸時代の近江商人の商い理論です

売り手良し・買い手良し・周り良し

売り買いの当事者の利益だけでなく、生産者や卸業などの関係者にも利益になり、結果的に社会全体の利益にもなることが、本当の商売であるという考え方です

さて、事業継続計画(BCP)を策定する際には、必ず ”人” に関する事項が出てきます
そのほとんどが、人命の保護と救済、職員等による活動の方針と要領となっています
その根本には、”人の活かし方” を事業戦略として打ち立てることにあります

BCPは、ただ単に ”災害等の事態における事業の継続” という狭い領域での対処計画です
したがって、策定する内容も防災や感染症対処などに限定されています

事業の運営・経営という広い領域では、非常時だけでなく、日常における活動の方針と要領が明確でなければなりません
そして、事業を継続させるための活動には、人を活かすための管理と運用が必要となります
例えば、このようなことが挙げられます

  • 分析評価
    ・顧客・サービス利用者の顧客満足度
    ・職員等の働きやすさの満足度
    ・経理上の無駄や業務上の無理の有無
    ・事業に影響を与える事象・事物の洗い出し

  • 是正と改善
    ・不満事項の是正
    ・充足事項の更なる改善
    ・効率化と適正化(適法化)

  • 事前対策
    ・物的環境の整理と整備
    ・事象等に応じた対処要領の策定と明示
    ・コンプライアンスの堅持と内外に対する発信

  • 信頼性の維持向上
    ・顧客と職員等との間の信頼関係
    ・職員等と事業主・経営陣との間の信頼関係
    ・提供するサービス等の質
    ・事業者側が発信する情報の質と量

  • 健康とメンタルのケア
    ・職場の安全性と快適性の維持改善
    ・職員等の健康の維持増進
    ・職員等の身の上や悩みなどの把握
    ・容易に相談できる体制の保持

  • 観察と点検
    ・アンケートによる満足度調査
    ・顧客・サービス利用者の表情や言動の観察
    ・職員等が働いている姿の観察
    ・職場の安全性と快適性の点検・確認
    ・経理や在庫管理の点検・監査
    ・各種計画や手順書の見直し

このような活動を ”事業継続マネージメント(Business Continuity Management)” と言います
事業の運営・経営に人の存在が不可欠であることは既述のとおりです
その ”人” を活かすためには、事業主・経営陣による事業継続マネージメントが重要となります


■ まとめ

事業を取り巻く状況は常に変化しています
変化する状況には、必ず ”人” が関わっています
そして、人が存在することで事業が成り立ちます

人の主体は、”顧客” ・ ”職員や従業員” ・ ”事業主や経営陣” です
また、事業にかかわる関係者や社会全体も含まれます

”人” が、事業に対して何を求めているのか
”事業” が、人に対してどういう存在であるべきか
その答えは、全ては人が持っています

事業継続マネージメントと言われる活動は、その ”答え” を探す活動とも言えます
そして、”人” という容易に代替や補充することができない貴重な資産を大事にする気持ちが必要です


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