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BCPの目標復旧時間をどう決めたらいいのか

BCPを策定する際に、事態発生で中断・停滞する重要事業の ”目標復旧時間” を考えることになります

この目標復旧時間は、その名のとおり中断・停滞している重要事業をいつまでに復旧・再開するかの目標を示しておくことではあるのですが、”どうやって決めればいいの?” と迷うこともあるかと思います
また、何の根拠もなく ”3日後” と示したところで、本当に復旧できるかの保証はないでしょう

今回は、目標復旧時間の考え方について解説します


■ 目標復旧時間は設定すべきか

そもそも、災害などの発生が予測できづらいものですし、被害の範囲や度合いなどは、その時にならないと分からないため、被害から復旧する目標時間が必要なのか疑問に持たれるかもしれません

しかし、その時になって闇雲に活動して事業の中断が続くと、復旧しても顧客やサービス利用者が離れてしまうことで、せっかく事業が継続できるようになっても経営できないという状況に陥ります

特に、介護事業や障害福祉サービス事業、医療事業などは、災害などの非常時だからこそ、そのニーズが高まることが予測できますので、復旧できることから順次復旧させて事業の中断を限りなく短時間にする必要があります

事業の中断を短時間とするためには、事業に必要不可欠な業務や設備などの重要度・優先順位に応じて、再開・再機能する ”目途” がなければ、復旧に向けた戦略を立てることができず、日に日に労力と時間を浪費してしまいます
その ”目途” こそが ”目標復旧時間” ですので、BCPで設定しておくことは必要となります


■ 目標復旧時間はひとつではない

”目標時間が複数ある” ということですが、継続すべき事業を支える主要業務ごとに目標時間を設定しておくという意味です

事業を続けるための条件は、災害などのない平時でも、非常時でも共通して存在します
ひとつの事業は多くの人や施設・設備などによって、関連する細かな業務に支えられています

  • 事業に関係する業務を行う人が存在している
    例えば、事業主・経営陣などの指揮官クラス、技術や資格のある従業員など

  • 売り物が提供できる状態にある
    商品が存在している、サービスの提供が可能状態にある

  • 事業を行う場所がある
    元々の職場施設、安全とスペースが確保された他の施設など

  • 事業に必要な設備や備品が備わっている
    製造設備、サービス提供に直結する機材、経理・補給・運搬などに必要な資材など

  • 事業に必要なインフラが備わっている
    電気、水道、ガス、通信

  • 事業を継続するための予算がある
    現金や預貯金、借入金など

  • 事業に必要な情報が揃っている・入手できる
    書類や電子データが存在し、事業に関係する情報の入手や共有ができる

  • 業務が整理され、行われている
    体系化・手順化された業務が行われている

上記のように ”事業資産” と呼ばれる ”人・物・金・情報” に加えて、多様な業務が行われることによって事業が成り立っています
これ以外にも、お客さんがいなければ意味がありませんので、顧客ニーズや社会ニーズが存在しており、自分らの事業への期待・依存があることも事業継続の条件(外的条件)となります(今回は、事業者側の条件(内的条件)に絞って解説します)

重要事業が復旧するとは、これら条件の全てが満たされていることが理想ですが、災害などの事態発生で被害が出ている場合、全て満たされていることはなく、また、直ぐには満たされない状況になっているはずです

業種や業態によって事業に必要な条件が異なり、また、事業資産も必要とする量や数、常時必要か・時々必要かなどの細かな特性がありますので、細かな条件項目ごとに復旧させるべきレベル(目標復旧レベル)の設定とともに、復旧させるべき期限を設定することが重要となります

”目標復旧時間はひとつではない” の意味は、事業を継続するために必要な条件項目ごとに復旧時間が必要ということです


■ 復旧させるべきレベル(目標復旧レベル)

災害等の発生で被害が出ている状態から重要事業を復旧させるためには、何を・どの程度まで復旧させればいいのかを事前に考えておくことも必要です

その時になって、やれることから復旧を進めることになりますが、復旧活動に限られた事業資産を投じるのですから、事業資産を効率的に割り当てなければ、いつまでたっても復旧の目途がつきません

そのため、重要事業を支える事業資産や主要業務をどのレベルまで回復させるかをBCPで定めおくことは非常に大切なことになります

また、被害発生当初は、必要な物品の調達や人員の補充が不十分ですから、回復させるレベルは事業を継続できる最低限で考え、事態の長期化にも耐えられるようすべきです

このように、”何を、どのレベルまで、いつまでに” 復旧させるかを細かく定めおくことで事業の復旧と継続を戦略的に進めることが可能となります

介護事業や障害福祉サービス事業にあっては、各事業所等単位でできることも限られますので、他事業所等との連携・協同活動や医療機関と行政との連携も必要になりますので、BCPの策定と運用とともに、それらとの連携・協同関係の構築・維持が非常に重要となります


■ まとめ

  • 目標復旧時間の設定は必要か
    事業の復旧と継続に必要な事業資産と労力を効率的に配分して活動するために必要

  • 目標復旧時間はひとつではない
    事業を支える事業資産の調達・確保と主要業務の回復のため、それぞれの特性に合わせた目標時間が必要

  • 目標復旧時間と目標復旧レベル
    事業資産と労力を効率的に復旧・回復活動に割り当てるため、事業に必要な条件ごとに復旧させる最低限のレベルと復旧完了時間を設定しておく

  • 介護事業や障害福祉サービス事業
    自分らの事業所等単独でできること以外に、他事業所等、医療機関、行政との連携・協同の関係が必要
    連携・協同関係も事業資産のひとつと考えておく


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