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効率よくBCPを策定する3ステップ+2ステップ

「これからBCPを策定するぞっ!」と、やる気がでたものの、どこから始めたらいいのか迷ってしまうことがあります

とりあえず分かりやすい部分や簡単にできそうな部分から始めたくなりますが、策定が進むにつれて何がなんだか分からなくなるというスランプ状態になることもあります

この記事では、効率よく策定を進めるための方法について説明します


■ 大・中・小の3ステップで考える

その方法ですが、まずは、大 → 中 → 小 の3ステップ で骨組みを作ります

① 最初に検討して決めるのは、大・中・小のうちの大の部分です

策定する部分の中で ”最もブレない・変更が少ない主要事項” の部分で、BCPで示す目的や方針、優先して継続させるべき重要事業などが該当します
また、想定される状況に対して、到着する目的地、進むべき方向や何を重視するのかを示すカーナビのような性質のものです
なお、目的については、何があっても変えず・変わらず・変えさせない性質のものです

② 次に考えて決めるのは、中の部分です

目的に向かって事業を継続させるための ”身体” となる部分で、体制組織の構成、連絡・情報収集の体制、平常時の担当者と担当業務などが該当します
また、被害状況下での目的達成のための重要事項、業務・活動の概要もこのレベルで検討します

③ 最後は、小の部分です

被害状況下での目的達成のための業務・活動の細部、現場レベルの行動・活動の基準、備えておくべき資器材や物品の種類など、具体的で細かな内容がこの部分に該当します
なお、細かな内容を決める際は、6W1H方式で整理すると考えやすくなります

  • Why:どういう理由で・どういう結果を期待して

  • When:いつ・どういう時に

  • Where:どこで・どの場合に

  • Who:誰が

  • Whom:誰に・何に対して

  • What:何を・どれを

  • How:どのようにして

これら大・中・小の3ステップを身近なことに当てはめてみます

  • 大の部分「夕飯はおいしいカレーライスで決定」
    夕飯を食べるという目的にカレーライスを重要事業として決定しました

  • 中の部分「家族全員で食べるが、子供のことも考えて甘口で作る」
    家族という体制で食べて、甘口で自分が作るという重点事項を決定しました

  • 小の部分「具材は豚肉、ニンジン、玉ねぎ…食べごろは7時ころ…4人前…」
    具材を決め、食べごろに合わせた調理開始時間の決定、分量は4人前など、細かな事項を次々と決めます

このように、大きい部分を決めてから、次第に小さな部分を決めることで効率的に考えがまとまります
大きな部分を考えている最中に、より小さな部分を考えそうになったら、それはそれでメモ書きして、後から考える材料にします


■ 骨組みから肉付けの順で考える

大 → 中 → 小 の3ステップの次に骨組みを作ります

先ほどの大・中・小は考えの流れを説明しましたが、ここでも同じような流れを説明します
BCPの大の部分である目的を例にしてみます

最初は単純に「人命の保護を優先しつつ、事業を継続させる」が目的となります
その次には、人命とは誰のことなのか、継続させる事業も誰のどんな事業なのかが必要になります

骨となる部分を決めてから、その骨に肉付けする流れで考えるとブレや矛盾のない目的が見えてきます
例えば・・・

  1. 骨となる素案を考える
    BCPに示す目的を「人命の保護を優先しつつ、事業を継続させる」

  2. それぞれの単語に足りないモノを考える

    • 人命:自社の職場にいるお客さんと従業員、職場にはいないお客さんと従業員
         従業員の家族は? 自社ビル周辺にいる人たちは?

    • 保護:避難させる、隔離する、救助する、ケガの手当てする
         命を救うことが最優先? 命を守ることが最優先?

    • 事業:経営に直接影響のある事業、お客さんや社会ニーズが高い事業
         どれも重要だけど、どれか一つに絞るべきか?

    • 継続:今までどおりに継続できるのか?
         少しぐらいの被害でも継続できる重要事業は?

  3. 足りないモノを足した目的を文章化してみる
    ”この計画は、災害等職場に所在する顧客と事業に欠かせない従業員の命を守り、最重要事業を優先して復旧させることで、これを継続させる”
    何か変だとか、まだ足りないとか、くどい文章だとかを確認して修正します
    この際、自分だけの考えではなく、策定の主要メンバーなどの意見を聞いてもいいかもしれません

上記は一例ですので、業種や事業体系によって定めるものが異なりますが、骨組みを作ってから、肉付けする考え方で進めると、自然とシッカリしたモノになります


■ 障害福祉事業における策定

障害福祉事業などの場合は、事業の形態やサービスの提供内容によって特徴があります
大・中・小のステップでは中の部分、肉付けの部分で事業の形態等を踏まえて方向性を決めることが大変重要となります

  • 事業の形態が来所系なのか、入所系なのか、訪問系なのか
    守るべき対象が異なるほか、想定される災害等の状況と被害によっても異なってきます

  • 事業の停滞がサービス利用者とその家族の生活にどの程度影響するのか
    訪問系と比べて入所系は、事業の停滞は入居者に与える影響が非常に高くなります
    事態と被害の状況によっては、事業の停滞が人命にも影響するかもしれません

  • 他事業所等からの受け入れ、他事業所等への対応依頼の可能性があるか
    事業が継続できない事業所等から、サービス利用者の一時的な受け入れ依頼があったり、その逆にこちらから依頼する可能性があるかどうかでも、策定しておくべき事項が異なります

  • 職場の中や敷地に人を収容するスペースがあるか
    一時避難や隔離、ケガ等の手当、従業員全員を集めて各種活動が行えるかに影響します

このように、細かな事項は後から考えるとして、人命保護と事業継続を目的とした場合に想定される状況を(ざっくりとでもいいので)列挙・整理しておくべきでしょう


■ まとめ

BCPを策定する際は、思考を整理しなければ進めれることができず、無理に進めてもブレや矛盾が生じることで混乱し、思考が停止してしまいますのステップを踏んで丁寧に進めましょう

  1. 大 → 中 → 小の3ステップ

    • 大の部分:最もブレない・変更が少ない主要事項
           特に ”目的” は何があっても変えず・変わらず・変えさせない
           到着する目的地、進むべき方向や何を重視するのかを示すカーナビのような性質

    • 中の部分:目的に向かって事業を継続させるための ”身体” となる部分
           目的達成のための体制組織の構成などの重要事項を示す

    • 小の部分:具体的で細かな内容の部分
           6W1H方式で整理する

  2. 骨組み → 肉付け

    • 軸となる素案を考える

    • 素案の中の要素それぞれに足りないモノを考える

    • 足りないモノを足してみて文章化し、確認と修正を行う

この考え方は、BCPだけではなく日ごろの業務にも活用できますので、どんどん使って慣れるようにするといいでしょう


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