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音声配信ブーム?から1年をすぎて

2021年初春から、Clubhouseが急激に人気を集め、動画配信の次は音声配信だ、という流れの中で、既存の音声配信プラットフォーム(アプリ等)も注目され、TwitterやSpotifyなども、音声配信に参入。国内外で、音声配信が盛り上がりを見せるかに思われました。
さて、Clubhouseブームから、1年あまり、音声配信はネット世界のメインストリームになることはできたのでしょうか。

himarayaとRECの終了

昨年(2021年)に、himarayaが個人向けの音声配信サービスを終了し、電子BOOK(ネット配信)に注力することを発表。RECは音声配信事業をStand.fmに譲渡することを発表しました。
また、「#私を布教して」も2201年末にサービスを終了しています。
2022年の5月末現在、ライブと収録ができる音声配信サービスは、stand.fmとSpoon、Radiotalk、音声だけでライブが行えるサービスとしては、ピカピカやDoneru、ボイスポコチャ、HAKUNAがあります。
さらに、IRIAMやREALITYなどは、アバターが必要ですが、音声だけのライブ配信、と言えないこともないかもしれません。

聴くだけじゃなく、音声ライブで会話したい

終了したhimarayaもRECも、収録配信型の音声サービスです。そして、サービスが続いているのは、ライブ配信型の音声サービスを行っているプラットフォームばかりです。
とくに、今年サービスを開始したボイスポコチャやHAKUNAは、アーカイブが残らず、いわゆるライブ配信アプリの音声版、といった位置づけになります。
また、Spoonやstand.fmでは、収録配信も盛んですが、人気が高いのはやはり、ライブ配信のようです。
収録とライブの一番の違いは、配信者とリスナーが直接会話できるかどうか、ということです。
音声配信ブーム到来を告げる記事では、「最後に残った耳に訴えかけるメディア」という意味合で、音声配信を持ち上げていましたが、実際のところは、17やポコチャ、ふわっちなどのライブ配信アプリと同じように、リスナーのコメントにリアクションする「双方向のコミュニケーション」が人気なわけです。

耳だけで楽しめる第三のメディアは不発

音声配信の利点として、「手元で何か作業していても、本や雑誌を見ていても、耳だけは空いている」と言われていました。だからこそ、音声配信が第三のメディアとして成功するといわれていたわけです。
たしかに、ClubhouseやSpotifyLiveなどの音声特化型の配信は、画面でコメントを追ったり、打ち込んだり、という必要がありません。その点では、耳だけで楽しめる第三のメディアの条件を満たしているわけです。
もちろん、ほかの音声配信でも、収録配信の場合は、地上波のラジオと同じように、聞流すことができますから、これも条件を満たします。
ところが、音声配信サービスで、生き残っているだけでなく、いまなお増えつつあるのはライブ配信ばかり。耳だけで楽しめるという条件は破綻しています。

リアルタイムで会話するコミュニケーション配信

17やポコチャ、ふわっちなど、ライバーと呼ばれる配信者が活動するライブ配信アプリはご存じでしょう。
では、これらのライブ配信サービスと、音声配信サービスのライブと何が違うのでしょうか?
単に、映像が有るか無いか、ただそれだけです。配信者のお喋りにチャットでコメントを送り、配信者がそれを読んでリアクションする。そして、リスナー同士もチャットで盛り上がる。
つまりは、ライブ配信も、ライブ音声配信も、リアルタイムで会話を楽しむコミュニティという点では、違いがありません。
そして、どちらも、リスナーはスマホの画面を見ながら、音声を聴き、コメントを入力するので、配信を聴きながら、ほかの作業をすることなどできません。

ClubhouseやSpotifyLiveなら、耳だけで楽しめる

文字チャットを非表示にして、音声だけで楽しめるClubhouseやSpotifyLiveであれば、耳だけで楽しむことができます。
どちらも、テキストチャットもできますが、それは付帯的な情報の表示。例えば日付や時間など、聞き逃してしまうような情報のやり取りに限定した利用がスマートだと思います。
そして、聞き専のリスナーは、じっくりと会話を聴くことで、発言したいリスナーは、ステージに上がって一緒に会話することで、耳だけで楽しめる音声メディアらしくなると考えています。
これは、アーカイブを残す場合にも重要で、リアルタイムで聴けなかったリスナーがストレスなく楽しむためにも、テキストチャットの利用は最小限にした方がいいでしょう。

収録配信はPodcastへ

SpotifyのAnchorの登場により、Podcastを作成するハードルが下がりました。
これまでは、音声の録音と編集を行ってデータを作成し、Podcastを配信するサービスにアップロードするといった作業が必要でした。
Anchorを利用すれば、スマホで録音して、そのままPodcastの配信までを行うことができます。
もちろん、これまでも、Radiotalkなどの一部音声アプリでも、配信をPodcastにも行うことはできましたが、音声の組み合わせなどを自由に編集できる点で、収録の配信を考えた場合、Anchorの方が優れているといえます。
日本では、あまり利用されていない印象があるPodcastですが、米国では人気が高く、今後日本でも一層普及する可能性があります。
また、地上波のラジオとの連動コンテンツやアーカイブとして、Podcastを利用する番組も徐々に増えています。
音声配信サービスの人気が、ライブ配信に集中していることもあり、収録配信はPodcastへと移行していくものと考えます。

スケールメリットを再確認した一年

音声配信サービスのほとんどは収益化が標準となっています。一部配信者は幾ばくかの収益を得ていますが、サブスクにしても、投げ銭にしても、実働フォロアー数に依存します。全員が課金してくれるわけではないにしろ、フォロアー数が多ければ、収益も上がるのは当然です。
ここで問題がいくつかあります。
まず、課金者が純粋なリスナー(聞き専)であれば、収益も純粋に利益になるわけですが、配信者同士の相互フォローのように、相互課金の形になっていると、純粋な利益は期待できません。
次に、絶対的な利用者数です。音声配信アプリでも、登録者数十万人以上を謳うところが少なくないですが、実働リスナーから配信者を差し引いた純粋なリスナー数は不明です。
そもそも、YoutubeやTikTokに比べて、登録者数が少なすぎます。しかも、日本人もしくは日本に興味のある人以外が、日本語の音声配信を聴きに来ることはないでしょう。もちろん、海外からでも利用はできますが、海外から英語などで利用することは考えられていません。
そして、クッキー排除の影響はあるものの、YoutubeやTikTokなどは、広告収入で運営され、クリエイターに収益の一部を分配する、という方式を行っています。それに比べ、いわゆる配信アプリは広告収入がなく、ビジネスモデルとしての不安が残ります。
そう考えると、リスナー数でも、収益のボリュームでも、音声配信アプリのスケールメリットは限られています。

YoutubeやTikTokでいいんじゃない?

最初に書いたように、収録の音声配信サービスは減ってきています。逆に、ライブの音声配信サービスは、新規参入も増え、まだまだ活気がありそうに思えます。
ところが、「#私を布教して」など、ライブの音声配信サービスも、終了していることが気になります。
stand.fmやSpoon、Radiotalkなど、古参の音声配信に加え、新たにDoneru、ボイスポコチャ、HAKUNAなどが参入。ボイスポコチャがポコチャの音声版という位置づけであるように、配信を通じたコミュニケーションサービスという色合いが強くなりつつあるように感じます。
また、IRIAMやREALITYをはじめとするアバターを利用したサービス、17やポコチャなどのライバーが活躍するサービスも、音声配信のライバルといえます。
これからも、音声配信やそのライバルサービスが登場することでしょう。しかしながら、音声配信がメインストリームに乗れなければ、YoutubeやTikTokのような存在にはなれそうにありません。
もしかしたら、YoutubeやTikTokで、Vtuberみたいに音声配信する方が、より多くのリスナーに、お喋りや作品を届けることができるかもしれないです。

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