見出し画像

ガルガンチュア音楽祭2024 C02市民オーケストラの祭典(2024年4月21日)

2024年4月21日(日)15:00~石川県立音楽堂コンサートホール
コープランド/市民のためのファンファーレ
エルガー/エニグマ変奏曲より主題~第1変奏曲、第9変奏曲
ヘンデル/組曲「水上の音楽」(ハーティ版)
バーンスタイン/キャンディード序曲
ウィリアムズ,J//映画「スター・ウォーズ」~「メイン・タイトル」「レイア姫のテーマ」「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」
ガーシュウィン/パリのアメリカ人
(アンコール)スーザ/行進曲「星条旗よ永遠なれ」
鈴木織衛指揮ガルガンチュア市民オーケストラ(コンサートマスター:坂本久仁雄)*

*以下の石川県内のオーケストラのメンバーで編成された市民オーケストラ。金沢大学フィルハーモニー管弦楽団が協力。弦楽器の首席奏者及び管打楽器の要所をオーケストラ・アンサンブル金沢メンバーやOBが勤める。
石川フィルハーモニー交響楽団, 金沢弦楽合奏団, 金沢交響楽団, 金沢室内管弦楽団, 小松シティ・フィルハーモニック, メディカルオーケストラ金沢, 管弦楽団オルビスNOTO

いよいよガルガンチュア音楽祭2024 の本公演の開幕も近づいてきました。この日はプレ公演恒例の一つ「市民オーケストラの祭典」を石川県立音楽堂で聞いてきました。毎年楽しみな公演ですが今回は英国・米国がテーマということで,例年以上に華やかな曲が多く,鈴木織衛さんの指揮の下,充実した演奏を楽しむことができました。

最初に能登半島地震の被災者のための献奏としてコープランドの市民のためのファンファーレが金管楽器と打楽器奏者のみで演奏されました。

メンバーの内訳までは分かりませんが,ホルン,トランペット,トロンボーンは各5~10名ぐらいいましたので(テューバは1人だけだったかも。打楽器はティンパニ,大太鼓,銅鑼だったと思います),参加したオーケストラの金管楽器奏者が結集していた感じでした。曲はまず打楽器の衝撃的な迫力を持った音から開始。その後に続く,トランペットのハイトーンなどを含む金管楽器の音を聞いて,思わず背筋が伸びました。身が引き締まるような壮麗さを持った演奏でした。

続いてエルガーのエニグマ変奏曲から「主題~第1変奏」「第9変奏」が演奏されました。主題は弦楽器を中心とした哀愁のあるメロディで,その後第1変奏に入っていきました。「C.A.E.」というタイトルが付いていますが,これはエルガーのアリス夫人を指しているようです。第9変奏はこの曲の中でいちばん有名な「ニムロッド」。曲始まった途端,異次元の世界に入ったような感覚になる曲です。この日の演奏は,爽やかな風が吹く中,自然に暖かな感動が段々とわきあがってくる,といった演奏でした(個人の感想です)。この変奏曲,一度全曲を実演で聴いてみたいものです。

ヘンデルの「水上の音楽」は前週にエンリコ・オノフリさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演で,第2,第3組曲を聴いたばかりでしたが,この日はハーティによる編曲版で演奏されました。クラリネットなども入る現代のオーケストラ用の組曲ですが,最近はオリジナル版で演奏されることが大半なので,実演で聞くことはかえって珍しいかもしれません。

第1曲「アレグロ」はホルンが活躍がする大らかな曲。春の休日ムードにぴったりの健康的な気分がありました。ちなみにホルンのパートには,OEKのアンジェラ・フィオリーニさんも参加されていました。第2曲「アリア」は地味目の曲ですが,昔から何故か好きな曲です。弦楽器を中心としたゆったりとした揺らぎに酔うことができました。中間部で木管楽器が活躍した後,再現部ではホルンが加わるのですが,音をずっと伸ばす感じで,結構大変そうだなと応援しながら聴いていました。

第3曲~第4曲はどちらも短く,切れ味の良い音楽の後木管楽器が活躍する可愛らしい感じの曲。第5曲はフルートによるアリアのような曲。歌心に溢れた演奏で良い味わいがありました。そして第6曲は「アラ・ホーンパイプ」として知られている曲。ホルンとトランペットの掛け合いを楽しむことができました。ヘンデルの音楽には高貴さと親しみやすさが同居している感じがありますが,そのイメージどおりのバランスの良さのある演奏だったと思いました。

前半最後は沸き立つようなバーンスタイン作曲のミュージカル「キャンディード」序曲。この曲は指揮者の佐渡裕さんが司会をされていた頃の「題名のない音楽会」でテーマ音楽として使われて以降,定番曲となりましたね。この日のオーケストラは102名という大人数でしたが,マスとしての音の迫力に加え,各パートの音が原色的に飛び込んで来るのが良いなと思いました。冒頭のティンパニの一撃から音が引き締まっており,オーケストラの音を満喫できました。第2主題に当たる部分でのヴィオラやチェロなどによる流麗な歌も心地良かったですね。曲の最後の部分で変拍子のような感じになった後,それを振り切るように元気よく終わりました。そして特筆すべきは,速いパッセージが連続するフルート。首席奏者は村山金沢市長が担当しており,演奏後,立ち上がって大きな拍手を受けていました。

後半は映画「スター・ウォーズ」の音楽で始まりました。1970年代にスタートした後,息長く愛されているシリーズで,ハリウッドを代表する映画の一つと言えると思います。作曲者のジョン・ウイリアムズも大変息の長い活動をされている映画音楽の大家ですが,近年はベルリン・フィル,ウィーン・フィル,サイトウキネンと世界のメジャーオーケストラがその映画音楽を取り上げており,オーケストラ音楽のレパートリーとしても定着してきていると思います。

「スター・ウォーズ」シリーズについては,私自身1980年代までの最初の3部作しか観ていないのですが,この日演奏されたのも元祖スター・ウォーズといった感じのあるお馴染みの3曲。既に古典となった新しい名曲の魅力を実感できました。

まずは「メインタイトル」。これがなければこの映画は始まらないという曲ですね。最初の打楽器を中心とした一撃の後に続いて,トランペットの颯爽としたハイトーン。ホルンの勇壮な響き。弦楽合奏による豊かな音のうねり。「言うことなし」という音の流れに包まれました。途中,チェレスタやピッコロが入る部分がありますが,ピッコロ担当は村山市長。静かだけれども鮮やかな部分で,ここでも存在感を発揮されていました。この曲については,ホルストの「惑星」に「似過ぎ」な部分もありますが,次々と楽想が涌いてくる感じが活劇SF映画の最初にぴったりで,聴くだけで高揚感が高まりますね。

2曲目の「レイア姫のテーマ」は,木管楽器などが活躍する緩徐楽章的な音楽。特にホルンの長いソロが素晴らしいと思いました。ロマンが溢れていました。最後はこの日コンサートマスターを担当されていたOEKの坂本久仁雄さんのソロ。こちらも美しい音楽でした。

3曲目は「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」。この曲はシリーズ2作目の「帝国の逆襲」で初めて出てきた曲ですが,「メイン・タイトル」と並んで定番中の定番として定着している曲ですね(個人的には栗コーダーカルテットの脱力した感じの版も好きです)。安定感のあるテンポによるビシッと引き締まった演奏で,ダーク過ぎない折り目正しさのある演奏だったと思いました。

演奏会の最後はガーシュインの「パリのアメリカ人」が演奏されました。編成が結構大きいこともあり(サクソフォンが入りますね),金沢では実演では聞く機会の少ない作品です。曲は連続的に演奏される3つの部分から成っていますが,個人的にはどうしても大昔のミュージカル映画「巴里のアメリカ人」に出てくる,ジーン・ケリーを中心とした長大なバレエシーンを思い出してしまいます(1950年代の映画なので,リバイバル上映で観たものですが)。

曲の最初の部分は,パリの街中を闊歩するような音楽。慌てないけれども,軽快なテンポで開始。打楽器にクラクションが入っているのもこの曲の特徴の一つですね。景色が変わるように音楽の色合いが変わってくるのが楽しいですね。この部分の後半で,坂本さんのヴァイオリンの音が聞こえてくると,夕方が近づいてきた感じになります。

第2部はトロンボーンののんびりとしたソロに続いて,トランペットによる情感豊かなソロへ。夜のムードですね。この曲のいちばんの見せ場の一つだと思います。とても味わい深い演奏でした。その後もサクソフォンが活躍するなどソリスティクな部分が続き,ジャズっぽいブルーな味を楽しむことができました。

第3部はチャールストンのような音楽。鈴木織衛さんの作る音楽には堂々としたシンフォニックな味があり,ビッグバンドがさらに拡大してオーケストラになったような演奏だなと思いまし。この部分では,テューバのソロ(これだけ長いソロはこの楽器には珍しいかも)の堂々とした音が素晴らしかったですね。この曲も終盤に近づいたなぁと名残惜しい気分になった後,最後はティンパニのロールやキラキラとした響きを交えて,堂々と締めてくれました。

この曲を実演で聴くのは久しぶりでしたが,次々と楽しい楽想が湧き出てきて,オーケストラ音楽に浸る「しあわせ」のようなものを感じることができました。

アンコールは,アメリカ音楽がテーマならば,ピッコロが活躍し手拍子を入れられる「アレ」しかないと予想していたのですが,やはり「アレ」でした。

ピッコロ担当は村山市長で,中間部ではしっかり立ち上がって演奏されていました(ここは曲の途中でも拍手を入れてあげたかったですね)。曲の最後の部分は,佐渡裕さんがシェナ・ウィンド・オーケストラと演奏する時のような感じでテンポアップし,奏者は全員起立。チェロも頑張って立っていました。この「何でもあり」という感じは音楽の祭典の気分にぴったりですね。というわけで,今年のガル祭の盛り上がりは確実,と思わせる楽しい演奏会でした。

PS. 音楽堂周辺も「黄色の看板」が増えてきましたね。

音楽堂の1階では「能登のステキ写真展」を行っていました。

見附島の写真が沢山並んでいました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?