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音楽堂カルチャーナビ2023 Vol.2 Junichiの部屋(ゲスト:リチャード・ストルツマン,2023年9月13日,石川県立音楽堂カフェコンチェルト)

「2023年9月16日に行われるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演のチケットを持っていれば,500円で参加できます」ということで,指揮者の広上淳一さんがホスト役となってゲストから色々なお話を聞く「Junichiの部屋」に参加してきました。このネーミングは,「徹子の部屋」を参考にしたそうで,徹子の部屋同様,椅子に座った広上さんとゲストが,やはりカフェの椅子に座ったお客さんの前で自由に話をするという内容でした。

入場料にドリンクも含まれていました

今回のゲストは今年81歳になるクラリネット奏者,リチャード・ストルツマンさんで,その他,奥さんのミカ・ストルツマンさん,作曲家の池辺晋一郎さんも加わっての豪華メンバーによるトークイベントとなりました。トークの内容は次のような感じでした。

武満徹「ファンタズマカントス」

  • ストルツマンさんと広上さんは,広上さんがアメリカを中心に活動をされていた時代,武満徹の「ファンタズマカントス」で共演したことがある。

  • ストルツマン:広上さんがこの曲のスコアを見て,ピアノで演奏していたのを聞いて驚いた。美しいものを探そうとしている姿に感動した。

  • 広上:この曲は,武満さんがストルツマンさんのクラリネットを聞いて作った曲だと感じた。

  • ストルツマン:武満がタクシーの中で,この曲のメロディを歌ってくれたことがある。それでこの曲のテーマがよく分かった。

  • 広上:演奏家は作曲家に敬意を払いながら,演奏し続けることが大切。紹介し続けることが私たちの役割

  • その後,ストルツマンさんがこの曲を演奏した動画(クラリネット:リチャード・ストルツマン,ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮ウィーン交響楽団)視聴しました。

大きなモニターで視聴
  • 石川県立音楽堂の響きとモーツァルトのクラリネット協奏曲

    • ストルツマン:リハーサルで演奏する前は緊張していたが,このホールで一吹きしてとても良いサウンドだと感じた。ホールの音響が演奏を助けてくれた。

    • 広上(多分):モーツァルトのクラリネット協奏曲は,クラリネットが生きるように書かれている。

後半は休憩時間中にストルツマンさんに対してお客さんから出された質問への回答を中心に進められました。

(質問)健康の秘訣は?
ミカ:毎朝裸になって腕立て伏せ,腹筋などの筋トレや体操を行っている。

(質問)どう集中して演奏しているか?
ミカ:毎朝の体操が役立っており,毎日5,6時間練習している。

(質問)ストルツマンさんはクラリネットの可能性を広げたと思うか?
ブラームスとミュールフェルトは飲み友達だった。作曲家のおかげでやってこれた。自分も幸運だった。

(質問)ダブル・リップ奏法の利点は?
アンブシュアが違い,使いこなすまでは痛かったが,カルメン・オッパーマンから指導を受けて使えるようになった。

(指導)クラシックのクラリネットでもヴィブラートを使っても良いのか?
ハートがあればVibration はある。人間だから感じる。ドイツでは使わない伝統があるが,歌うことを追求するなら,使っても良いのでは(この辺は不正確かもしれません)

(質問)「現代音楽」を楽しむポイントは?
人それぞれに音楽の楽しみは違う。生きていることを楽しめば,「現代音楽」への偏見的なものはなくなるだろう(この辺も不正確だと思います)。
広上さんが補足:エンジョイすることでネガティブではなく,楽しむ感性も出てくる…ということでは。

最後に同じ定期公演で曲が演奏される,池辺さんを交えてのトークになりました。池辺さんは次のようなことを語っていました。

  • リハーサルの中で少しずつ音楽の骨格を作っていくプロセスを見るのが面白かった。指揮者の偉大さが分かる。

  • 推理小説は先が分からないから楽しめる。よく知られているクラシック音楽と違い,現代音楽は推理小説のようなもの。新鮮な思いで楽しめるはず。

  • 武満さんは演奏者からインスパイアされる人だった。ジャズの好きな人で,新宿のバーでミュート・トランペットの真似をしていたことを覚えている。

最後に広上さんから,演奏できる縁を大切にしたい,次の公演では聴く喜びを味わってほしいという言葉で締められました。

PS. イベント終了後,楽屋口でストルツマンさんからサインをいただきました。ストルツマンさんが所属していたアンサンブル,タッシの1980年代の録音です。「この時代がいちばん良かった」といったことを語っていました。

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