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【曲目解説】ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ Ravel / Pavane pour une infante défunte

ラヴェルの音楽の中でも,そのメロディの優雅な美しさとタイトルにぴったりの謎めいた気分で特に親しまれている作品です。パヴァーヌというのは16世紀スペインに生まれた宮廷舞曲の一つ。孔雀のように威厳をもって静々と踊られる舞曲です。

オーケストラ曲として馴染んでいる方も多い作品ですが,まず,1899年にピアノ独奏曲として作曲されました。ラヴェル自身,この曲に対して「あまりにもシャブリエ風。貧弱な形式...」と批判的だったのですが,実は愛着もあったようで,1910年に自身で小編成オーケストラ用に編曲しています。ラヴェルの曲の中でも特に人気の高い作品で,どちらの版も実演で演奏される機会の高い作品です(アンコール曲として演奏されることも多いですね)。

タイトルが曰くありげなのですが,ラヴェルによると単に「語呂が良いから」という理由で付けたとのこと。原題は”Pavane pour une infante défunte"。カタカナで書くと「パヴァーヌ・プウ・ユヌ・アンファン・ディファン」という感じでしょうか。特に「アンファン・ディファン」という部分が「いい感じ」ですね(Google翻訳などで発音を聴いてみてください)。

言ってみれば,聞き手側が勝手に想像を広げ,「若くしてなくなった王女...」を追悼する気分で聴いてしまう曲です。初めからそれを意図して作曲書いたように感じさせてしまうあたりがラヴェルらしいところなのだと思います。

曲は,A-B-A-C-Aの小ロンド形式で書かれています。以下,オーケストラ版の楽器で説明します。

弦楽器のピチカートの上,ゆったりとしたレントのテンポでホルンが哀愁を帯びたメロディの第1主題を朗々と歌って曲は始まります(A)。主題はト長調ですが,明るいのか暗いのかわからない独特の気分を醸し出しながら荘重に進んでいきます。しばらくして,オーボエにロ短調の第2主題が登場します(B)。その後,第1主題がオクターブ上で反復されます。ここでは伴奏音型が少し複雑になっています(A)。

フルートで始まる第3主題がCに当たります。ハッとさせるような気分の変化があり,色々な楽器で引き継がれていきます。最後は華麗な雰囲気になりますがそれほど長くはなく,すぐに第1主題が再現します(A)。ハープなどの伴奏音型はさらに細分され,精緻さを増していきます。

終結部は少し気分が変わり,静かに全曲が閉じられます。

作曲:1899年(管弦楽編曲:1910年)
初演:1902年4月5日,国民音楽協会の音楽会(会場:サル・プレイエル(パリ))でリッカルド・ビニェスの演奏(管弦楽版:1910年12月25日,アッセルマン演奏会で,指揮はアルフレード・カゼッラ)
編成(管弦楽版):フルート2,オーボエ,クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,ハープ,弦五部)

(カバー写真のCD)
Ravel: Orchestral Works / シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団((LONDON 421 458-2 (4枚組))(サイン:2001年3月1日オーチャード・ホール(東京) NHK交響楽団第13回オーチャード定期)

(参考資料)

  • 「ラヴェル」(作曲家別名曲解説ライブラリー;11)音楽之友社,1993年

  • 中河原理著「名曲との対話:オーケストラに聴く103曲」 音楽之友社,1971年

  • ウィキペディア日本語版の解説

執筆:2023年4月20日

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