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上野耕平サクソフォンミニライブ&鉄道トーク(2023年8月30日,石川県立図書館)

2023年8月30日(水)14:00~ 石川県立図書館だんだん広場
ダニー・ボーイ
モリコーネ/ニュー・シネマ・パラダイス・メドレー
バッハ,J.S./無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調~アルマンド
ボノー/ワルツ形式による無伴奏カプリス
●演奏
上野耕平(サクソフォン)

サクソフォン奏者の上野耕平さんがミニライブ&鉄道トークを行うということで,平日の午後ではありましたが,石川県立図書館に出かけてきました。「夏休み中だけれども平日なので余裕で座れるだろう」と思って,ゆったりと出かけたところ,驚きの超満員。石川県立図書館のだんだん広場には,座席の「だんだん」と通路の「だんだん」があるのですが,通路に座ることになりました。後から振り返ると,この方が記憶に残りそうですが…少々硬かったですね。

1曲目はお馴染みのダニー・ボーイ。無伴奏での演奏ということで,この曲のシンプルで美しいメロディを飾り気のない音でじっくりと聴かせてくれました。混じりけのない美しい音でした。その後は,グーッと音量がアップしたり,静か~に音量を抑えていったり…ものすごく幅広いダイナミックレンジを楽しませてくれました。「これがクラシックのサックスだ」というデモンストレーションのような,自信にあふれた音楽でした。

その後はトークを交えてのミニコンサートとなりました。2曲目は,こちらもサックスの演奏では定番曲といっても良い,映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の中の音楽のメドレー。アルトサックスでの演奏で,特にその高音の切なさが印象的。ノスタルジックな曲想にぴったりでした。

その後は県立図書館の方が聞き手となっての鉄道トークとなりました。

今回の公演は,「来年3月の北陸新幹線県内全線開業」を記念して図書館内で行っている,特別展「鉄道タイムトラベル」に合わせてのイベントということで,まずは3月16日に敦賀まで開通することになったことが紹介されました。この件については,会場の反応は薄かった感じです。やはり敦賀から先の方が問題という感じでしょうか。

上野さんは,8歳からサックスを始めたのですが,鉄道好きの方は生まれた時からとのこと。鉄道好きになると地理が得意になるというメリットをおっしゃられていましたが,私の知人などを見てもその通りだと感じます。

まず,図書館でのイベントらしく鉄道に関するお薦め本が3冊紹介されました。

新幹線のたび:金沢から新函館北斗、札幌へ / コマヤスカン作. 講談社
books.or.jp/book-details/9784061332980

時刻表2万キロ / 宮脇俊三著(河出文庫)
https://www.books.or.jp/book-details/9784309470016

列車名の謎:鉄道ファンも初耳の「名・珍列車」伝説 / 寺本光照著(イースト新書Q)
https://www.books.or.jp/book-details/9784781680231

『新幹線のたび』は鳥観図で描かれているという点が面白そうでした。絵本ぐらいの大きな紙面で読んでみたいですね。『時刻表2万キロ』の著者の宮脇俊三さんのお名前は何となく聞いたことがあります。仕事+αで全線制覇されているとのことで,廃線になっている路線の記事などは,資料的にも貴重かもしれません。『列車名の謎』については,一種日本独特の文化を語った本のような感じですね。列車にこれだけ沢山の名前を付けてきたというのは国民性でしょうか。

その後は,「鉄道好き+サックスのテクニック」を兼ね備えた,上野さんならでは唯一無二の「鉄道音マネ」コーナーとなりました。通常のクラシック音楽のコンサートでは,封印しているかもしれませんが,本日はかなりマニアックなネタを含め,次のような「鉄道の音」が紹介されました。

  • モーターの音・・・列車が動き始める時の音だと思います。サンダーバードのモーターの音を紹介されていましたが(私自身,8月26日に乗ったばかりだったのでびっくり),「そういえばこんな感じだったかも」という音でした。「鉄道は歌っている」と上野さんはおっしゃっていましたが,確かにそのとおりですね。

  • ドレミファインバーター・・・詳細な説明は忘れましたが,これも列車が動き出す時の音だったと思います。日本では例が少ないそうですが,聞いた感じ,ラプソディ・イン・ブルーの冒頭のクラリネットのソロのようだなと思いました。このインバーターが登場する小説の紹介もあるということで,本のネタにつながったのも面白かったですね。

  • 名鉄パノラマカーのミュージックホーン・・・名古屋周辺の私鉄の発する警笛のような音。色々なタイプがあって,ビブラートが強いものから非常に音楽的なものまで,一度実際に聴いてみたいものだと思いました。

こういったネタ(?)を聴きながら,往年のタモリとかが好きそうな世界かもと思いました。

その後,音楽家としての上野さん推薦の「音楽家の食卓」という本の紹介がありトークコーナーは終了。ドヴォルザークは肉屋の息子で鉄道好きという話題につながったのですが,是非,次回はドヴォルザーク特集をお願いしたいところです。
https://www.books.or.jp/book-details/9784416619131

その後は音楽家に戻り,バッハの無伴奏フルート・パルティータの中からアルマンドが演奏されました。この曲だけはソプラノ・サックスで演奏されていましたが,緻密で輝かしい音が素晴らしかったですね。凛とした悲しみが刺さってくるようでした。バッハの無伴奏曲をサクソフォンで演奏したBREATHというアルバムも紹介されていましたが,一度全曲聴いてみたいと思いました。

最後はボノーによる,無伴奏サクソフォンのためのオリジナル作品,「ワルツ形式による無伴奏カプリス」が演奏されました。この曲についてはもう少し残響のある場所で聴いてみたいなと感じました。が,「カプリス」というタイトルどおり,曲想が色々と揺れ動く感じの曲で,華麗な雰囲気で締めてくれました。

というわけで,会場の密度同様に演奏+トーク+本の紹介…と非常に充実した内容の1時間。特に「思わずそちらの世界に行ってしまいたくなる」と思わせる鉄道愛あふれるトークが楽しかったですね。上野さんは,「実は車も好きです」ということでPart2を期待したいと思います。

PS. コンサートの後は展示も観てきました。充実の内容でした。

特急「雷鳥」のプレートが懐かしかったですね。

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