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オーケストラ・アンサンブル金沢 オーケストラの日2024(2024年3月31日)

2024年3月31日(日)14:00~ 石川県立音楽堂コンサートホール

いしかわ子ども邦楽アンサンブル
1) 箏曲「飛躍」による変容
2) 長唄「勧進帳」から
3)  松任谷由実(詞:早川和良)/ひゃくまんさん小唄
オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)
4) ウォルトン/弦楽のための2つの小品
5) メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」op.26
6) マルケス:ダンソン第2番
OEKエンジェルコーラス with OEK
7) 小田美樹(詞:南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生, 編曲:信長貴富))/群青
石川県ジュニアオーケストラ with OEK
8) ケテルビー/ペルシャの市場にて
オーケストラと歌おう!(全員)
9) 山本直純(詞:坂田寛夫)/歌えバンバン
10)(アンコール)シュトラウス,J.I/ラデツキー行進曲
●演奏
松井慶太指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:松井直)*4-10,いしかわ子ども邦楽アンサンブル*1-3,OEKエンジェルコーラス*3,7,9,石川県ジュニアオーケストラ*8-10
司会:徳前藍

3月31日は「オーケストラの日」 ということで石川県立音楽堂で行われたオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)いしかわ子ども邦楽アンサンブル,OEKエンジェルコーラス,石川県ジュニアオーケストラが共演する「オーケストラの日2024」に参加してきました。この演奏会は毎年OEK定期会員は「ご招待」のファン感謝デーなのですが、当然のことながら3月31日が平日になることも多いので、参加するのは久し振りのことでした。指揮は松井慶太さんでした。

最初はいしかわ邦楽アンサンブルのステージでした。最初は金屏風の前での筝合奏の演奏でした。「飛躍」による変容という曲が演奏されましたが、箏と箏の音が絡み合いながら、変奏されていく、西洋音楽を思わせる作品。優しい響きも美しかったですね。その後は長唄「勧進帳」の一部。歌舞伎の中でもおなじみの曲の聞き応えのある合奏。最後、一気にテンポアップしていく部分は、まさに西洋音楽で言うところの「ストレッタ」ですね。久しぶりに三味線に合わせての謡を聴いて、血(?)が騒ぎました。このコーナーの最後は、予定を変更して、OEKエンジェルコーラスの皆さんを交えての「ひゃくまんさん小唄」で「どんどんつくつく…」と賑々しく締めてくれました。

続いてはOEKのコーナー。演奏されたのは、今年のガルガンチュア音楽祭のテーマにちなんで、英国とアメリカの音楽。指揮の松井慶太さんのこだわりの3曲を楽しませてくれました。最初に演奏された、ウォルトン弦楽のための2つの小品は、静かで抒情的な感じの2曲。静かな揺らぎのある、哀愁に満ちた音楽でした。3月の定期公演でフィンジの「弦楽のためのロマンス」を聴いたばかりでしたが、英国の弦楽合奏曲は独自のジャンルを築いている感じですね。2曲目の方は、少し音色が明るくなり、ようやく春が近づいてきたなという雰囲気。演奏後の松井さんのトークによると、もともとは映画「ヘンリー5世」のために作られたもので、百年戦争を描いた悲しい場で流れる音楽とのこと。現代の作曲家では武満徹さんも映画音楽をたくさん書きましたが、そこから転用された音楽の中にキラッと光る名曲がある点でも共通するのではと思いました。

メンデルスゾーン序曲「フィンガルの洞窟」は、スコットランドにあるヘブリディーズ諸島の風景を描写した音楽ということで、英国つながりです。ゆったりと漂う優雅で美しい演奏。特に印象に残ったのが、チェロパートが歌い上げる切ない歌。何度聞いても良い曲です。中間部での木管楽器やトランペットのくっきりとした演奏、後半に出てくる遠藤さんのクラリネットのしっとりとした音(待ってましたという部分です)。どれも見事でした。最後はダイナミックに締めてくれました。

このコーナーの最後はメキシコの作曲家、マルケスによるダンソン2番。この曲はそれほど大きな編成ではなかったのですが(大半の管楽器は1本ずつ。ただしハープ、トロンボーン、ピアノが入っていました)、松井さんの解説によると、ダンソンというのは、もともと小さな楽団が演奏するラテン系の大衆音楽の「つなぎの踊り」(この辺の記載は間違っているかもしれません)とのことでした。この曲でも、曲の最初の部分から遠藤さんのクラリネットが活躍。ほの暗く怪しい雰囲気のある「魅惑のラテン音楽」といった感じで、ピアノとパーカッションが静かに刻むラテン系のリズムの上に艶やかなメロディが流れていきました。その後もテンポと音楽の色彩感が刻々と変化しながら、暗い情熱を湛えた音楽が続きました。最後の方では、この日のコンサートマスターのソロが入った後、どんどんテンポを上げてカオスな感じに。独特の味を持った魅力的な作品でした。

続いてOEKエンジェルコーラスが登場し、OEKとの共演で、東日本大震災後に作られた「群青」という合唱曲が演奏されました。小学生が作った、友人への思いを綴った歌詞に先生が曲を付けたもの。「同じ空を見上げているはず」と歌う子供たちの優しい声が耳に沁みました。能登半島地震の被災地の復興が十分に進まない中、被災された方が聞いても共感する部分のある曲だと思いました。

そして、先週、石川県ジュニアオーケストラの定期演奏会で聞いたばかりの「ペルシャの市場にて」が、今回はOEKとの合同で演奏されました。子供たちとOEKメンバーが隣り合って配置し(子供たちが白、OEKが黒の衣装。それが交互に並んでしました)、ステージはいっぱい。先週聞いた時よりも楽器が多くなっている感じで(打楽器が増えていたかも)、さらに臨場感たっぷりの音楽になっていました。「市場の喧噪」を描いた部分など、より野性的でダイナミックでした。そして今回もチェロパートの演奏する「王女のテーマ」での熱いカンタービレが魅力的でした。

演奏会の最後は、いしかわ邦楽アンサンブルのメンバーも合唱で加わった全出演者による「歌えバンバン」。山本直純作曲による永遠の名曲。トロンボーンの音が入ってくると特に元気が出ますね。

その後、アンコールが演奏されたのですが、その前に「今から避難訓練を行いますのでご協力ください」というお願いがあり、手拍子入りでラデツキー行進曲が楽しく演奏された後、訓練になりました。音楽を聴いた後に、「あの警報音」を聞くのは、少々興ざめではありましたが、能登半島地震発生後3ヶ月の今だからこそ,大切なことなのかもしれません。ただし、訓練の実施については、それなりに時間がかかったので、演奏会の開始前に事前のアナウンスがあった方良かったかなと思いました。

避難訓練では通常の出口とは違うところから出ている人もいました。

プログラムを見る限りでは、公演時間はそれほど長くないと予想していたのですが、舞台転換等も何回かあったので、休憩なしで1時間30分以上の公演になりました。少々集中力が切れている子どもたちもいましたが,演奏会前には楽器体験コーナーがあるなど、特に子供たちにとっては、オーケストラ,合唱,邦楽器が身近になった公演だったと思います。

配布されたプログラムにはOEKメンバーの顔写真も入っていました

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