「ヤマザキマリの世界」展(富山県南砺市立福光美術館,2024年9月21日)
お隣富山県の南砺市立福光美術館で行われている「ヤマザキマリの世界」展を観てきました。実は本日9月21日,ヤマザキマリさん本人が来館して特別講演会を行っており是非聴いてみたかったのですが,既に募集期間終了ということで断念。それでも展覧会だけは観てみたいと思い,出かけてきました。
出かけてみると「講演会のため第2展示室の入室はできません…」ということで第1展示室のみ鑑賞してきました。確かにチラシにはそう書いてあり「別の日にすれば良かった…」とも思ったのですが,講演会前に会場に入るヤマザキさんの姿を見ることができ,「やはり来て良かった」と思い返しています。そして,せっかくなのでヤマザキさんのサイン入り図録も買ってきました(限定○○部というのに弱い…)。第2展示室を見る代わりにじっくりと読みたいと思います。
色々と想定外のことはあったのですが,その分,第1展示室で上演していた15分程度のヤマザキマリさんへのインタビュービデオの方をじっくりと見てきました。撮影・SNS OKでしたので,その内容と合せてご紹介しましょう。
まず第1展示室の正面には「ヤマザキマリワールドの学堂」。これは図録の最後に入っていましたが,東京造形大学学生による共同制作作品。ラファエロの「アテネの学堂」のパロディ的作品です。時代的にもヤマザキワールドと違和感がないのが楽しいですね。
「誰が誰か?」という情報は図録には書いてなかったので,会場ならではの情報でした。
その後,ヤマザキマリさんの代表的なマンガごとに原画が並んでいました。私は映画「テルマエ・ロマエ」ぐらいしか知らないのですが,ヤマザキさんの確かなデッサン力やアイデアの数々を楽しむことができます。
マンガの制作には多くの工程があるのですが,「ネタを考えるとき」「最後に人物の表情を入れるとき」がいちばん楽しいとのこと(後述のインタビュー動画の中で語っていました)。最初と最後の間の工程は,色々な人を巻き込んでの「社会的な作業」になるということで,色々と苦労も多いようですね。
そして最近また描き始めている油彩肖像画コーナー。山下達郎,桐竹勘十郎,立川志の輔の肖像画の世界が並んでいましたが,図録の解説に書かれていたとおり北方ルネサンス絵画(ヤン・ファン・エイクなどの絵画。背景がみんな真っ黒ですね)の雰囲気があり見応えがありました。
そしてヤマザキさんへのインタビュー動画。ヤマザキさんの言葉や文章の素晴らしさは周知のとおりですが,この動画は「創造編」ということで,そのエッセンスが凝縮されている感じでした。(間違ってまとめたかもしれませんが)次のようなことを語っていました。
人間には表現したいという気持ちが元々備わっているが,絵や音楽については,人間が生きていくための元気を作る力がある。
それを作る人は生産者である。生産者は,他者にとっての栄養になる作品を作る使命がある。ヤマザキさん自身も「表現に奉仕したい」と心から思っているとのこと。何をやってもその奉仕の気持ちが出てくる。
もともとイタリアで油彩の勉強をしたが,子供が出来て,食べていくには社会的な仕事=経済的生産性のある仕事をしてく必要があり,マンガの仕事をするようになった。
それがたまたま上手くいったが,油絵はやめていない。久しぶりに山下達郎の肖像画などを油彩で描いた。
油彩肖像画を描いていると時間を忘れて,無心になれる。自分にとってとても良い状態にさせてくれる。
肖像画については,人間はみんな同様のパーツを持っているのに,人によって全然違うのが面白い。その人の顔にはその人の人生が出ている感じで(人相見になれるとのこと),ひとつの宇宙のよう。
「色」というのはアナログな世界である。記号化できないことを行っている快感がある。
ヤマザキさんの語りはいつも率直で分かりやすいのですが,イタリアで学んだ美術についての知識と技術に基づく作品の数々がその言葉の説得力をさらに高めているなと思いました。
ヤマザキさんのマンガは…実は読んだことはないのですが,特に気になるのは「プリニウス」。皇帝ネロ統治下の博物学者を主人公に,どういう作品になっているのか気になります。
図録の方は非常に見応え,読み応えがありそうです。じっくりと味わいたいと思います。
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