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ガルガンチュア音楽祭2024:本公演2日目(2024年5月4日)

ガル祭 2024本公演2日目。この日も快晴。私は午後から3つの有料公演を聴いたのですが,それ以外にも無料公演にも色々参加し,ホール以外も音楽漬けになる「ガル祭の本領」を楽しんできました。この日は,北國新聞赤羽ホールにも出張しました(自転車で往復)。片道10分程度でしたが,心地よい疲労に浸りつつの鑑賞となりました。

音楽堂前はいつも大賑わい
とってんたん の皆さんによるストリートパフォーマンス中

最初は,もてなしドーム地下でのOBSESSION(三舩優子×堀越彰)によるスピード感とパワー溢れる,ピアノとドラムスのセッションを聴いてきました。石川県立音楽堂交流ホールでの【K24】(15:10~)公演に行けない代わりに出掛けたのですが,聞き応え十分の迫力がありました。

コーヒーを飲みながら聞いていました。

エリアイベント 13:00~ もてなしドーム地下広場
アルベニス/アストゥリアス
マルケス/ダンソン第2番
チック・コリア/スペイン
●演奏
OBSESSION(三舩優子(ピアノ),堀越彰(ドラムス))

演奏された曲は,K24公演と重ならない曲だったようで,大西洋をはさんでのラテン系の音楽が選ばれていた感じです。最初に演奏された,アルベニスアストゥリアスは,ピアノ独奏で聴いても,ギターで聴いてもスリリングな曲ですが,ドラムスが入るとさらにパラフル。堀越さんのドラムはドラムの音だけで一つの独立した世界を表現しているようで素晴らしいと思いました。

2曲目はマルケスダンソン第2番。この曲は3月末にOEKの演奏で聴いたばかりの曲ですが,「2+3」から成るルンバのリズムに乗っての演奏ということで,客席からの手拍子入りでの演奏でした。「ウン・パ・パ・+パン,パン,パン」と説明されていましたが,「パン,パン,パン+ウン・パ・パ」の方が私にはしっくり来る感じでした。拍子木(?)の音で始まりましたが,この音を聞くとどこか血が騒ぐ感じになります(私の場合ですが)。曲の方は段々とテンポアップし,ダイナミックに盛り上がって行きました。ピアノも打楽器だなと思いました。

3曲目はチック・コリアの「スペイン」。この曲は昨日の藤原道山さんと国府弘子による公演でも聴いたばかり。前半のゆったりとした感じと後半のスピード感の対比が鮮やかでした。ピアノ単独で演奏するよりも,2つの楽器が合わさる相乗効果で熱気が増していくようでした。

その後,お二人にサインをいただいてしまいました。実は20年以上前に購入した三舩さんのCDを持っていたのですが,その内容がまさに今回のテーマにぴったりのガーシュイン+バーンスタインの音楽尽くし。ガル祭中にどこかで遭遇できないかと思い,持参したものでした。

堀越さんには以下のとおり「チラシ」にいただきました。このチラシによるとOBSESSIONのCDも発売されているようでした(この会場で「実演販売」すれば,結構売れたのではと思いました)。池辺さん推薦のユニットということで,是非,次回以降のガル祭で再会したいですね。

その後,同じもてなしドーム地下のガルシェを観ているうちに,ついつい店の人と色々会話をしてしまい,入場料+義援金の意味も込めて,色々と買い物。

七尾のカフェリボンで上記のコーヒーを買いました。非常にうまかったです。

細かく描かれたガルちゃんクッキーはもったいなくてしばらく食べられないかも。

ジビエのお店では,ついつい「狩女のすすめ」なる本を著者のジビエふじこさんから買ってしまいました。サイン入りです。

青島広志さんの「作曲家イラスト」も恒例ですね。
交流ホールでは「0歳からのコンサート」。熊田祥子さんと沼尻竜典さんのステージ。
音楽堂前にバグパイプが入ってきました。
歩きながら演奏というのはお手のものですね。
大盛況でした。

その後,「やはり交響曲も1曲は聞かねば」と思い,音楽堂コンサートホールで行われた,【C22】オックスフォード・フィルによるメンデルスゾーン「スコットランド」公演を当日券で購入して聴いてきました。

【C22】14:30~ 石川県立音楽堂コンサートホール
メンデルスゾーン/劇音楽「夏の夜の夢」~結婚行進曲
メンデルスゾーン/交響曲第3番イ短調, op.56「スコットランド」
●演奏
マリオス・パパドプーロス指揮オックスフォード・フィルハーモニー管弦楽団

このオーケストラを聴くのは昨日に続いて2回目ですが,今回もパパドプーロスさんのこだわりの音になっているなぁと思いました。楽器編成はコントラバスが下手奥に来て,その前にチェロが配列する対向配置で,最初に演奏された「結婚行進曲」からずしっと渋い音を聞かせてくれました。テンポはどの曲も遅めで,この曲については,「少し緩いかな?」「結婚を祝うには腰が重いかな」という印象もありましたが,金管楽器の音も刺激的でなく,どこかおっとりとした品の良さがあると思いました。

メインの「スコットランド」交響曲も遅めのテンポでじっくりと演奏されました。第1楽章冒頭の響きは暗いトーン。金沢の冬の気候を思わせるような,ジメーッとしたムードが漂っており,親近感(?)を感じました。パバドプーロスさんは弱音へのこだわりが非常に強く,演奏が進むにつれて,どんどん室内楽的になってくる感じがしました。第2楽章は木管楽器のマイルドだけれどもくっきりとした響きが印象的でした。第3楽章はじっくりと抑制された,こだわりの重い響き。ソリスティックに活躍する管楽器が丁寧に歌い継がれていく感じは,チェリビダッケの指揮と似ているのではと思ったりしました(実演で聞いたことはないので推測ですが)。

「スコットランド」交響曲は楽章間のインターバルを大きく取らないのがデフォルトですが,パバドプーロスさんは結構大きく間を取っていたのも印象的でした。第4楽章の最初の音は,満を持したようにホルンが強いアタック音を聞かせてくれました。楽章全体に渡り,一気にエネルギーを発散するような感じがありました。それでも,大げさに開放する感じはなく,哲学的といっても良いような落ち着きが感じられました。この曲のチェックポイントの一つであるコーダの部分も,重く荘重な雰囲気。じわじわとゆっくりと盛り上げていました。終結部ではホルン5本が演奏をしていましたが,その音がとても美しく,ここでもパバドプーロスさんのこだわりを感じました。オックスフォード・フィルについては,(3月末で終わったNHK朝ドラ「ブギウギ」風に言うと)「パパドプーロスとその楽団」といった趣きがありました。世界各地の,少しローカルなオーケストラを楽しめるのがガル祭 の楽しさだなぁと改めて思いました。

その後自転車で赤羽ホールに移動しました。

金沢市文化ホール裏(正面奥は尾山神社)を通り抜けて…
北國新聞赤羽ホールに到着
青島広志さんの司会で,ピアノ公演を行っていました。

今年はクラシック系以外のアーティストも色々聞いてみようと,ジェイコブ・コーラーさんによるピアノ公演【AK5】を聴いてきました。

【AK5】16:00~ 北國新聞赤羽ホール
チック・コリア/スペイン
マンシーニ/映画「ピンク・パンサー」のテーマ
モリコーネ/映画「ニューシネマ・パラダイス」のテーマ
ビリー・ジョエル・メドレー
エルトン・ジョン/ロケット・マン
ビートルズ・メドレー
ピアソラ/ビベルタンゴ
ジブリ・メドレー
ラ・ラ・ランド・メドレー
(アンコール)丸の内サディスティック
●演奏
ジェイコブ・コーラー(ピアノ)


外の緑が天井にも映っていて非常に美しい光景になっていました。

コーラーさんは,米国のピアニストですが,日本在住の方で,最初少し英語で自己紹介をした後は日本語でのトークも交えて進行しました。コーラーさんは,金沢に来るのは3年連続。会場にはリピーターの方も多かったのではないかと思います。

最初に演奏されたのは...チック・コリアの「スペイン」。前日から聴くのは3回目でしたが,それぞれに個性的でその違いを楽しむことができました。コーラーさんのピアノには常に余裕があり,ゴージャスさを感じました。曲の後半,テンポアップする部分では足でリズムを取りながらの演奏。お客さんの方に体を向けながらの演奏でした。

その後,「ピンク・パンサー」,「ニューシネマ・パラダイス」とお馴染みの映画音楽が演奏されました。「ピンク・パンサー」の方はオリジナルとはちょっと違ったリズムによるノリの良い演奏。「ニューシネマ・パラダイス」の方は,ラウンジでゆったりと楽しんでいる感じでした。

その後,ポップス~ロック系のお馴染みの洋楽が演奏されました。「ビリー・ジョエル・メドレー」では,「素顔のままで~ピアノマン~オネスティ」と続き,懐かしくなりました。ビリー・ジョエル自身,ピアノを弾きながら歌うスタイルなので,本家を聴くような充実感がありました。続いてのエルトン・ジョンの「ロケットマン」は,実は初めて聴く曲。キラキラした感じがあり,前向きな気分になりました。「ビートルズ・メドレー」は,「ノルウェイの森~サムシング~イエスタディ」と叙情的な曲が続いた後,最後は「ヘイ・ジュード」。ピアノ・ソロで聴くとウィスキーなど飲みながら聴きたくなりますね。

ピアソラの「リベルタンゴ」は,今回の公演のいちばんの見せ場だったかもしれません。キレの良いリズムに乗って,難しいパッセージをバリバリと聴かせる演奏で,会場は一気に盛り上がりました。次の「ジブリ・メドレー」は,金沢公演の前に行った,富山公演(お寺で演奏されたとのこと)でも演奏した曲とのこと。お寺の本堂での演奏では神秘的な響きになったそうです。ちょっと聴いてみたかったですね。

プログラムの最後は,コーラーさん自身が好きな映画である「ラ・ラ・ランド」の中の曲のメドレー。この映画は観たことはないのですが,コーラーさんのお得意の曲なのだなと分かるようなノリの良い演奏。最後の部分では会場から湧き上がった手拍子に合わせての演奏になりました。

公演時間的に「アンコールは難しそう」という感じだったのですが,最後の曲でお客さんから手拍子が入ったことを受け,コーラーさんは「みんな手拍子したそうなので…」と一言おっしゃられた後,手拍子に合せて「丸の内サディスティック」という曲が演奏されました(後で調べてみると,椎名林檎の作品だと分かりました)。せっかくなので終演後のサイン会にも参加。金沢にも何回も来られているコーラーさんの人気がの秘密が分かったような公演でした。

その後,17:10から広上淳一さんと沼尻竜典さんが「やすらぎ広場」で連弾をするということで,すぐに音楽堂に帰還少々遅刻しましたが(自転車だと5分ぐらいですね),何とか間に合いました。

行ってみると,何やら童謡のような感じの曲を広上さんと沼尻さんが和気あいあいと連弾中。最初の説明を聞き逃したので推測なのですが,中田喜直さんがアレンジした「こどものための連弾曲集」を順番に演奏していた感じでした(ピティナのサイトに情報が載っていました)。
こどものための連弾曲集/One Piano 4 Hands - 中田 喜直 - ピティナ・ピアノ曲事典

トークの方は「ほぼ漫談」。やはり人前で演奏するとなると,覚悟が必要ということで,トークで繋いでいるとのことでしたが,ほのぼのとした味わいのある演奏も素晴らしく(譜めくりの松井慶太さんも色々大変そうでした),このコンビ新たなガル祭名物になるのでは,と思いました。

その後は「Junichi Cafe」に切り替わり,コーヒーを無料サービス(サイズ的には「カルディ」ぐらい)をしていたので,音楽堂前で購入したサンドイッチと一緒に味わいました。

ガルちゃんも登場

非常においしかったので尋ねてみたところ,もてなしドーム地下に出店していた七尾のリボンというお店とのこと。「これはお昼に飲んだ店だ」と思い出し,是非また飲みに行きたくなりました(七尾市まで行きたいですね)。

そして...沼尻さんから念願のサインをいただきました。コロナ禍の最初期,びわ湖ホールの「神々の黄昏」が観客なしのWeb配信になってしまう「悲劇」がありました。この非常に美しく,印象深い公演に敬意を表し,クラウドファンディングの積もりで個人的にブルーレイを購入していました。このことについて,いつか感謝したいと思い,本日持参してみたものです。

その後はまた音楽堂内をふらふら。

この日の最後は菊池洋子さんのピアノとマリオス・パバロプーロスさん指揮OEK による【H24】公演へ。

【H24】18:30~ 石川県立音楽堂邦楽ホール
1) ヴォーン・ウィリアムズ/イギリス民謡組曲(I.行進曲「日曜日には十七歳,II.間奏曲「私の素敵な人」,III.行進曲「サマセットの民謡」)
2) モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番ハ長調, K.467
●演奏
菊池洋子(ピアノ*2),マリオス・パパドプーロス指揮オックスフォード・フィルハーモニー管弦楽団

開演前は協賛企業名を投影

菊池洋子さんのモーツァルトの協奏曲が聞けるということで選んだ公演でしたが,まず,最初に演奏された,ヴォーン・ウィリアムズのイギリス民謡組曲が素晴らしい作品。吹奏楽版で聴いたことはあるのですが,ヤングさんのリードするOEKに管弦楽版による演奏も生き生きとした心地よい演奏。安定感と躍動感が両立したような,安心して楽しめる曲集でした。民謡を題材にした作品をストレートに楽しませてくれる,5月の青空を思わせる気持ちのよい演奏でした。

続いて,菊池洋子さんが緑のドレスで登場。こちらも視覚的に5月の気分に相応しい雰囲気になりました。モーツァルトのピアノ協奏曲第21番は,菊池さんが最初にOEK定期公演で共演した時の曲,OEKとのCD録音も残っています。「十八番」の21番(変な文章ですね)ということになります。邦楽ホールで聴くOEKということで,第1楽章冒頭からドシッとした迫力を感じさせる演奏でした。パバドプーロスさんは,手兵のオックスフォード・フィルを指揮した時同様,抑制された整った演奏を聴かせてくれましたが,ここぞと言うときにはヤングさんを中心とした弦楽器がたっぷりと歌い,充実した演奏を聴かせてくれました。

菊池さんのピアノも非常にクリアで優雅で安心感のある演奏を聴かせてくれました。この曲の第1楽章には,一瞬,モーツァルトの40番の交響曲の「あの有名なテーマ」がよぎる部分がありますが,そういった部分での陰りも印象的でした。この曲ではフルートは1本のみですが,このフルートがソリスティックに活躍する部分が結構あります。この演奏では八木さんが輝きのある音で曲を大きく盛り上げていました。

第2楽章は「みじかくも美しく燃え」という映画の音楽として使われたことで知られています。輸入盤CDでも「Elvira Madigan」という現題が書かれたものを観たことがあるので,世界的に映画のイメージと結びついた曲なのかもしれません。というわけで,今回は恐らく「映画」つながりでこの曲が選ばれたのだと思います(ただし,この映画を観たことのある人は最近では少ないかもしれません。実は...私も観たことがありません)。

菊池さんのピアノもOEKの演奏も気品のある美しさに溢れていました。ピアノとオーケストラが一体となって「単音の美」を楽しませてくれました。至福の時間でした。第3楽章も走りすぎることなく,優雅に遊びながら,鮮やかな演奏を聴かせてくれました。モーツァルトの20番代のピアノ協奏曲を聴くと,オペラブッファ的な楽しさが感じられる部分が多いのですが,この楽章には特にそういう感じもありました。

OEKとの共演も多い菊池さんならではの気持ちの良いモーツァルトで本公演2日目は締めました。

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