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いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2023:市民オーケストラの祭典(2023年4月23日)

エリア・プレイベントの一つとして行われた,「市民オーケストラの祭典」もすっかり定着し,今回が7回目(4回目は中止)でした。メインプログラムは,今年のテーマに合わせ,ドヴォルザークの交響曲第8番でした。その他の曲も名曲揃いでした。

2023年4月23日(日)14:00~石川県立音楽堂コンサートホール
C01市民オーケストラの祭典

スメタナ/連作交響詩「わが祖国」~第2曲「モルダウ」
ドヴォルザーク/スラブ舞曲へ長調, op.46-4
ドヴォルザーク/スラブ舞曲ホ短調, op.72-2
リスト/交響詩「前奏曲」
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調, op.88
(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
●演奏
大浦智弘指揮風と緑の楽都音楽祭市民オーケストラ(コンサートマスター:坂本久仁雄)

この公演に登場したのは,石川県内のアマチュア・オーケストラのメンバーからなる特別編成オーケストラで,次の団体のメンバーが参加していました。

石川フィル/金沢弦楽合奏団/金沢交響楽団/金沢室内管弦楽団/管弦楽団オルビスNOTO/小松シティ・フィルハーモニック/メディカルオーケストラ金沢

さらには,金沢大学フィルが協力。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)メンバーやそのOBが首席奏者などを務めていました。指揮は,大浦智弘さんでした。

演奏会は,スメタナ作曲交響詩「モルダウ」で開始。曲は,モルダウ川の”水源”を描いたフルート二重奏で始まりますが,ここで演奏されていたのが,村山金沢市長夫妻。金沢で行われる音楽祭にぴったりの演出(?)。見事な演奏でした。村山夫妻は,この公演以外でもエリア・イベントに多数登場されていました。

その後も速めのテンポで,清々しい弦楽合奏が続きました。途中のポルカ風になる部分も大変軽快。「夜」の部分は,弦楽器とフルートが繊細に絡み合い,透明感溢れる気分。「激流」の部分も率直に盛り上がって,全曲が締められました。

続いて,ドヴォルザークのスラヴ舞曲から2曲演奏されました。op.46-4は,のどかな三拍子系の曲。金管楽器の音が少々明るすぎるかなとも思ったのですが,気持ちよく聴かせてくれました。op.72-2の方は超名曲。ここでも村山市長の伸びやかなフルートが活躍し,滑らかでスムーズな音楽を楽しませてくれました。

前半最後は,リストの交響詩「前奏曲」。冒頭のピツィカートの音がしっかりまとまっていて,聴いていてうれしくなりました。曲の中盤,木管楽器やホルンがソロをつないでいく部分がありますが,こういう部分がどう演奏されるのかを味わうのも,市民オーケストラを聴く楽しみの一つです。緊張した面持ちでソロパートを乗り越えた後には,幸福感のある平和な音楽が広がっていました。

曲の最後の部分では,OEKの渡邉さんが担当していた,非常に粒だちの良いカチッとした小太鼓の音が見事でした。この音に先導されるように,オーケストラ全体もキリッと盛り上がっていきました。メンバーの各人がきっちりと仕事をした後,全員で「打ち上げ」を行うような,最後の盛り上がりも良かったですね。

後半はドヴォルザークの交響曲第8番が演奏されました。

第1楽章は,哀愁を帯びたくすんだ音で開始。楽章が進むにつれて,深く沈み込んでいく感じが良かったですね。木管楽器のハモリの暖かさ,バランスの良い強さを持ったトランぺットなど,管楽器の音も冴えていました。楽章最後は,ガッチリとした響きで締めてくれました。

第2楽章にもしみじみとした深い味わいがありました。よく練られた丁寧な演奏で,心に染みるような演奏でした。この楽章でもそうでしたが,全楽章を通じてトランペットが音が冴えていて,聴いていて爽快な気分になりました。

第3楽章は,ゆっくり目のテンポでじっくりと丁寧されていました。その中からじわっと哀愁が漂ってくるのが良かったですね。中間部では,フルートのホッとさせてくれる音が良いなと思いました。コーダの部分は,ものすごくテンポアップする演奏もありますが,比較的落ち着いた雰囲気の演奏でした。

第4楽章は,前楽章からインターバルをほとんど置かず開始。最初のトランペットのファンファーレは,「こうでなくては!」と思わせる爽快さ。音量も力感も私にはぴったりで,お見事という感じでした。しばらくして,ホルンの低音が出てくるのも,印象的なのですが,この部分OEKのフィオリーニさんが演奏。「しっかり支えていますよ」という感じでした。

続く変奏の部分は,じっくりと演奏されていました。しっかりと歌うチェロ。ホルン・チームによる力強いトリル。好きな部分が次々と出てくる部分なので,いちいち「いいねぇ」と思いながら聴いていました。

フルートの長いソロも鮮やかでした。この部分は,ついつい息を止めて,応援しながら聴いてしまいます。童謡「コガネムシは金持ちだ...」みたいな部分ではクラリネットに続いてトロンボーン,テューバなどがが力強く活躍。改めて聞き所満載の楽章だなと思いました。

コーダの前は,じっくりとテンポを落とし,嵐の前の静けさ的な雰囲気になりました。こういった部分も良いですね。エンディングの部分も,無理にあおる感じはなく,オーケストラの美しい音色とガッチリとまとまったサウンドをしっかりと楽しませてくれるエンディング。

大浦智弘さんの指揮に接するのは初めてだったのですが,堂々とした音楽作りが素晴らしいと思いました。盛大な拍手に応え,アンコールではブラームスのハンガリー舞曲第5番が演奏されました。ダイナミックかつ濃厚さのある演奏で,「祭典」をしっかり締めてくれました。

今回参加していた市民オーケストラの今後の公演チラシがまとめて置いてありました。


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