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オーケストラキャラバン読響創立60周年記念/ニューイヤーコンサート2023:読売日本交響楽団福井特別演奏会(2023年1月22日 )

2023年1月22日 (日) 15:00~ ハーモニーホールふくい(福井市)
1) ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番ハ短調, op.18
2) (アンコール)ショパン/マズルカ(番号は未確認)
3) シュトラウス,R./アルプス交響曲, op.64

●演奏
山田和樹指揮読売日本交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)*1,3
中瀬智哉(ピアノ*1-2)

Review

この日は金沢から福井まで遠征し,山田和樹指揮読売日本交響楽団によるオーケストラキャラバン公演をハーモニーホールふくいで聞いてきました。目的は,私自身実演で聞くのが初めてとなる,R.シュトラウスのアルプス交響曲でした。予想以上に大編成の作品でしたが,山田さんは特徴的なモチーフ各種を緻密に積み上げつつ壮大に聞かせてくれました。

天候心配な時期ですが,この日は大変良い天気になりました

ハーモニーホールふくいに来たのは2回目。前回は20年ぐらい前だったのですが,「こんなに豪華なホールだったのか」とホール内のシャンデリアを観た瞬間テンションが上がりました。せっかく来たので,公演前には,ホール周辺も含め,色々と写真を撮影。これは最後にご紹介しましょう。

私の座席は2階席の後方でしたが音響的にも視覚的にも全く問題なく楽しめました

演奏会の前半は,富山県入善町出身の若手ピアニスト,中瀬智哉さんの独奏を交えてのラフマニノフのピアノ協奏曲2番でした。中瀬さんは現在高校2年生。すらりとした立ち姿を見るだけで,これからどんんどん成長していきそうだなと思いました。

第1楽章冒頭は静かに開始。やや薄味かなと思いましたが,その分,爽快に聞かせてくれました。山田和樹さん指揮読響の方は,ゆったりとした雰囲気で熟練のサウンドといった感じ。憂愁のロシア音楽といたムードを作っていました。

ちなみにこの日の首席チェロ奏者は,ソリストとしてもオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と何回か共演されている,遠藤真理さんでした。団員名簿を調べてみると,ソロ・チェロという肩書になっていました。

第2楽章はピアノのモノローグで開始。それにフルートやクラリネットが絡むと,ラフマニノフの世界に。弦楽器の合唱も非常に美しかったですね。中瀬さんのピアノには古典派音楽のような清潔感とキラキラする美しさがありました。

第3楽章もバランスの良いオーケストラのサウンドに乗って,ケレン味のないピアノ。ピアノの方は,ちょっとひやりとする感じはありましたが,じっくりとカンタービレを聞かせるオーケストラと一体となってラプソディックに盛り上がっていきました。

その後,中瀬さんの独奏でショパンのマズルカがアンコールで演奏されました(番号は…パッと出てこないのですが,初期のマズルカだと思います)。爽やかな哀愁が漂う,透明感のある音楽。これは素晴らしい演奏でした。中瀬さんは今年金沢でもリサイタルを行うので,聞きに行ってみようかなと思います。

演奏開始前,ホール内を「探検」した際に撮影してみました。

さて後半は待望のアルプス交響曲。ステージ後半にずらっと並ぶ打楽器や金管楽器の人数を見るだけで気分が盛り上がりました。

曲の冒頭「夜」の部分での弱音だけど厚い響きを聞いた瞬間,改めて,この曲は,実演だとCDで聴く何倍も楽しめると実感しました。トロンボーンのハモリとが低音楽器がうごめく感じは,ワーグナーの楽劇に通じる世界があるなと思いました。

山田さんの指揮は全く慌てることなく,じっくりと曲を盛り上げていきました。すべての音が「何か」を表現しているライトモチーフになっている感じで(この辺を「研究」するととても面白そうです),続いては「日の出」になります。この部分での突き抜けて聞こえてくる金管,特にトランペットが素晴らしかったですね。

ここまでが導入部で,「登山のテーマ」が聞こえてきて,山登りが始まります。メロディが滑らかに上行していき,「体力十分・順調な立ち上がり」という感じでした。

ホルン(舞台上には8本ぐらいいました)による「岸壁」のテーマは,私の世代だと...ウルトラ・セブンのテーマ曲と「ほぼ同じ」に思えます。これに応えて,舞台裏から聞こえてくるホルンの響きも実演ならは。思わずホール内をぐるっと見回してしまいました(一体,どこにいたのでしょうか?)。

こういった色々な音が絡まって進んでいくのが大変面白いですね。木管楽器による優しい音になったり,弦楽合奏中心に薄い響きになったり...オーケストラのテクスチュアの変化を鮮やかに感じさせてくれる演奏でした。

「山の牧場」の部分ではカウベルの音が入ります。これが結構リアルな感じ。「知らんけど」の世界ではありますが,イメージどおりの牧場気分にさせってくれました。マーラーの交響曲にもこういう部分はありますが,一体,どういう楽譜になっているのか見てみたい部分です。

「頂上」の部分は...正直なとこ,一体どこが頂上だったのかろ分からなかったのですが,壮大なパノラマが広がるような音楽となっていました。ありとあらゆる形で(パイプオルガンが加わったり,テューバが2台になったり...)盛り上げてくれているようでした。この部分では,感慨深げにオーボエがじっくりと聞かせてくれる部分があり,登山者の心理まで描いているようでした。さすがと思いました。

曲の後半は気象の変化や日没などが描かれます。まず,「日の出」の
テーマが弱々しくなるあたり,見事に光が弱くなっている感じが出ているなと思いました。オルガンの音がぐっと浮き上がってくるのも面白いと思いました。

石川県立音楽堂のものよりはやや小型でしたが,立派なオルガンです。

「嵐の前の静けさ」の部分でのティンパニのトレモロやクラリネットの不吉な気分,そして,打楽器がドロドロと大活躍する「嵐」の場へ。この辺は今の時代,電気的に作れるのかもしれませんが,あの大がかりなウィンドマシーンを使うからこそ楽しいですね。さらにはサンダーシート(ただのブリキの板のような感じ)も登場。この部分での多彩な楽器による多彩な描写の面白さは,シュトラウスの技の集大成。山田さん指揮読響の演奏は,リアルかつ十分に音楽的な嵐となっていました。

この嵐の部分は結構長く,その点でリアルだと思いました。最後の方,少しずつ収まってきて,「ようやく先が見えてきた」という感じまで描いていました。

嵐が収まった後は,壮大な日没の光景。ここでもパイプオルガンが威力を発揮していました。弦楽器が清々しくゆったりと響くと,大らかな感動に満ちた空気になりました。登山の過程を振り返る,「心の中」が描かれた後,最後は「夜」。振り出しに戻るという感じでした。曲の最後の部分までホルン(ワーグナー・テューバでしょうか?)やトランペットは活躍し続けで,本当にご苦労様でしたという感じでした。

ハーモニーホールふくいは,福井市の郊外の北陸自動車道福井インターチェンジの近くにあります。今回は自家用車で来たのですが,約1時間15分ほどで到着しました。お隣の県に,これだけ素晴らしいホールがあるということで(もちろん,石川県立音楽堂の四角い感じ(シューボックス)も素晴らしいですね),機会があれば,是非また来たいと思います。

PS.

この日,OEKは本日は静岡県三島市で公演を行っていたはずですが...アルプス交響曲のエキストラとしてOEKのオーボエ奏者の加納さんが参加していました。大きな楽器を演奏されていたのでヘッケルフォン?もしかしたら,お得意のルポフォンだったのかなと思い注目をしていました。

PS2.

以下,金沢~福井までの旅行記+ホール付近や内部で撮影した写真を時系列で紹介しましょう。

演奏会は15:00開始。12:50頃に金沢西インターから北陸自動車道に入りました。

安宅PAで休憩。アルプス交響曲に備え,白山でも見えないかなと思ったのですが…ここからは見えませんでした。高速道路からはよく見えたのですが…

カーナビのおかげで,全くまようことなくホールに到着。駐車場に到着した時,すぐ近くのローカル線の駅にも電車が到着。この電車にも一度乗ってみたいものです。

この特徴的な形がホールです。遠くに雪山も見えました。

ホール周辺は公園のようになっており,レストランなどもありました。

ヴァイオリンの森と書いてありましたが…よく読めず
いきなりカルタが登場
チェンバロに不可欠と書いてありました
ストーンヘンジを思わせるオブジェ
これもまた印象的なオブジェ
福井といえばハープの名産地ですね
遠くに山が見えました。白山に連なる山並みだと思います
開演の約1時間前にホールに到着
コンサートなどのチラシ。金沢で行われるイベントのチラシも入っていました。
ホールの公式ガイドブックの宣伝。2022年が開館25年でした。
大ホール以外にもう一つホールがあるようでした。
ガルガンアンサンブルなどでもおなじみのヴァイオリンの篠原悠那さんのインタビュー記事が掲載されていました。チェロの荒井結さんもガルガンアンサンブルのメンバーですね。
待ち時間を利用して…天井を見上げていました。
大ホールの入口。ドアの取ってもハープのデザイン
大ホール入口を入ると非常に開放的な雰囲気のロビー
待ち合わせに使えそうな像ですね
2階席へ
ステージを取り囲む感じとシューボックス型がうまく合わさっている感じ。
至るところにハープのデザイン
コロナ禍でなければ営業していたのかもしれません。
終演後。今聞いたばかりのアルプス交響曲同様,日没間近といった感じです。
楽屋口と思われる方に行ってみると,「読響」の楽器運搬用のトラックが停車していました。
公演終了後,駐車場から出る車はかなり渋滞していました。
北陸自動車道,帰りは女形PAで休憩+土産を購入
福井の冬といえば…水ようかん。もっと由緒ありげな商品もあったのですが,小さめのものを購入

以上で終了です。コロナ禍の影響もあり,福井県まで来たのは…5年ぶりぐらいでした(特急しらさぎで通過したことはありますが)。次の機会には,もっとゆっくりと訪問してみたいと思います。

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