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【番外編】「ブギウギ」の名曲をもう一度!(SP盤鑑賞会)(2024年4月13日(土)金沢蓄音器館)

2024年4月13日(土)14:30~ 金沢蓄音器館
※ 金沢蓄音器館所蔵の以下のSP盤の鑑賞会
1) 恋は優し野辺の花よ(歌:三浦 環)
2) センチメンタル・ダイナ(歌:笠置シズ子)
3) アイレ可愛や(歌:笠置シズ子)
4) 夜来香(歌:山口淑子(李香蘭))
5) 別れのブルース(歌:淡谷のり子)
6) おしゃべりは嫌よ(歌:ナンシー梅木)
7) コペカチータ(歌:笠置シズ子)
8) 胸の振り子(歌:霧島 昇)
9) 一杯のコーヒーから(歌:霧島 昇,松原 操)
10) 東京ブギウギ(歌:笠置シズ子)
11) 青い山脈(歌:藤山一郎,奈良光枝)
12) 買い物ブギー(歌:笠置シズ子)
13) ヘイヘイブギー(歌:笠置シズ子)

2023年秋から半年間放送していたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」では笠置シズ子の歌手としての人生を存分に描いていました。過去の朝ドラの中でも特に歌唱シーンが多く,1回15分の放送のほとんど全部がステージの場面だった回などもありましたね。3月末で終わったばかりの時期ということで,「ブギウギ」に登場した音楽をSP盤で聴いてみようというイベントが金沢蓄音器館で行われたので参加してきました。参加者数は30名程度。どこかアットホームな雰囲気の中で蓄音器の音を楽しんできました。

この鑑賞会は蓄音器館の職員の方による,とても分かりやすい解説とともに進められました(蓄音器試聴コーナーでお馴染みの館長さんの方は,この日は「ほぼ皿回し」役でした)。ドラマのストーリーに沿って次々と音楽が流れましたので,ドラマの総集編を見るような趣きもありました。以下,流された曲を紹介しましょう。

会場はこんな雰囲気

恋は優し野辺の花よ(歌:三浦 環)
最初に演奏されたのは,福来スズ子(笠置シズ子のドラマの中での名前)が子供の頃よく歌っていたスッペ作曲の喜歌劇「ボッカチオ」の中のこの曲。浅草オペラ時代のテノール田谷力三の歌でも有名ですが,この日は伝説的なソプラノ三浦環による歌唱。結構古い感じの録音でしたが,針音の中から柔らかでゆったりとした声が伝わってきました。

センチメンタル・ダイナ(歌:笠置シズ子)
ドラマの展開的には作曲家・服部良一との出会いが生んだデビュー曲「ラッパと娘」のはずでしたが…残念ながらこのSP盤は所蔵していないとのこと(後から個別に質問してみました)。実はこの曲が目当てだったので,大変残念でしたが,考えてみると戦時中のレコードということで今となっては相当貴重なものなのかもしれないですね。

「センチメンタル・ダイナ」のSP盤は,とても生々しくリアルな声。笠置さんは朗々と歌っていて貫禄の歌という感じでした。後半テンポアップする部分は「ラッパと娘」と重なる感じですね。

アイレ可愛や(歌:笠置シズ子)
戦時中色々な制限を受ける中,南の架空の国をモデルとして作った曲で,ドラマの中では「福来スズ子とその楽団」として全国各地で歌っていました。一見,鄙びて素朴な感じだけれども,実は結構複雑な音の動きの曲で,今聞いても新鮮味のある曲ですね。笠置さんの歌も味わい深い感じです。

夜来香(イエライシャン)(歌:山口淑子(李香蘭))
服部良一が戦時中,上海で活動していたときにアレンジした作品。「ブギウギ」では,李香蘭役の昆夏美さんが歌っていました。「東京ブギウギ」の原点と言われている曲とのことで確かにそんな感じもありました。ただし,リズム的にはブギウギというよりはビギンに近い気がしました。李香蘭の伸びやかな声が素晴らしいですね。

別れのブルース(歌:淡谷のり子)
淡谷のり子の代表曲。ドラマの中では福来スズ子のライバルであり,同士でもあった茨田りつ子が歌っていた曲で,何と言っても,りつ子が特攻隊基地に慰問に行った際に出撃前の若者たちからこの曲をリクエストされて歌ったシーンが印象的でした(実話とのことです)。ゆったりとした曲の印象を持っていたのですが,そこまでもたれた感じはなく,さらりと深く聞かせる感じが,淡谷のり子らしいと思いました。

ちなみに蓄音器館の館長さんは,淡谷のり子が1990年代に金沢に来られた時に直接会ったことがあるとのことです。当時84歳だった淡谷さんはピンクのドレスを着て,ピアノに手を掛けながら,しっかりと立って歌ったとのこと(当時の香林坊109のシアターで歌ったそうです)。その時はタンゴを歌ったそうですが,これは実演を聴いてみたかったですね。

おしゃべりは嫌よ(歌:ナンシー梅木)
この曲はドラマには出てこなかった曲です。福来スズ子の付き人をした後,アメリカに渡った「小夜ちゃん」役は,後にアカデミー賞を受賞した俳優ナンシー梅木がモデルになっている説があるということで,この曲がかけられました。この音源だけ,妙に色っぽく生々しい感じで,他の曲と少し毛色が違う感じはありましたが,とても面白かったですね。

コペカチータ(歌:笠置シズ子)
福来スズ子は,戦後エノケンと共演して映画に出たりしていましたが,その時代の曲です。メキシコ風+スイングとルンバを合わせた感じということで,服部良一のチャレンジ精神はすごいと思います。オリジナリティのある曲ばかりです。今回ドラマでスズ子役を演じていた趣里さんの歌はどれも素晴らしかったのですが,こういう曲を聴くと本家の笠置シズ子さんの方が大らかで線の太さがある感じがしますね。やはり時代の空気を反映している気がします。

胸の振り子(歌:霧島 昇)
一杯のコーヒーから(歌:霧島 昇,松原 操)
この2曲も「ブギウギ」には出てこなかったのですが,「蓄音器館長お薦めの服部良一作品」ということで紹介されました。「胸の振り子」は戦後,服部良一が金沢に来た時に,大手掘り付近を歩いていた時にひらめいた曲とのこと。このエピソードについては,昨年9月に石引商店街で行われた「ブギウギ」関連のトークイベントでも紹介されていたのですが,このエピソードを代々受け継いで行きたくなるぐらいの魅力的なメロディですね。

「一杯のコーヒーから」は,1回聞けば歌えるようなキャッチーなメロディ。ちょっとハワイアンな感じ(ハイカラな感じでしょうか)もする曲です。「いっぱいの こーひから…」と「ヒ」の音を延ばさないのもレトロな感じで良いのですが,実はこちらの方が英語の本当の発音に近いかもしれないですね。

東京ブギウギ(歌:笠置シズ子)
そしてドラマのタイトルにもなっているブギウギ時代となり,その代表作「東京ブギウギ」が出てきました。この曲については,ドラマでは電車の中で思いついて,途中下車した後,食堂に入り紙ナプキンにメモしていましたが,これも実際のエピソードだったようです。笠置さんの歌は,やはり大らかな明るさがありますね。この曲も時代の空気感が詰め込まれている感じがします。

青い山脈(歌:藤山一郎,奈良光枝)
売れっ子作曲家になった服部良一の代表曲。誰もが知っている曲ということで,会場のお客さんの中にも軽く口ずさんでいる人がいらっしゃいました。プログラムには藤山一郎とのみ書かれていましたが,途中から女声歌手も加わっていました。ということで奈良光枝さんと一緒に録音した盤だと思います。

買い物ブギー(歌:笠置シズ子)
その後もブギにこだわり続けて,ブギシリーズ最大のヒットになったのが「買い物ブギー」。今聞くとラップの原点のような曲で,こちらもお馴染みの曲ですが,オリジナルの歌詞の最後の部分に放送禁止用語が使われていることもあり意外に聴く機会は少なくなって来ている曲かもしれません。だけど「オッサン,オッサン…」の連呼の後,「ああしんど」で締める部分など,これは笠置さんでないと出せない味ですね。

ヘイヘイブギー(歌:笠置シズ子)
ドラマの終盤,歌手を引退する直前の「歌合戦」で歌っていたのがこの曲。「ラッキー・カムカム」とい歌詞が当時流行語になったそうですが,これを漢字に変換すると「福・来」ということで,この役名自体がドラマ全体に関わる重要な伏線になっていたのだなぁと感心しました。笠置さんの歌には,笑っている表情がしっかりと乗り移っているのが本当に素晴らしいですね。この「笑いながら歌う」感じは,クレージキャッツ時代の植木等さんの歌にも共通した感じがあると思います。この辺は天性のものという感じがします。

というわけでほぼぴったり1時間で終了(途中までで切り上げた曲もいくつかあったから収まったのですが)。まさに充実の時間でした。古い録音を蓄音器で聴くというのは,今となっては大変ぜいたくな時間だと思います。機会があれば,また聴きに来たいと思います。

PS. 金沢蓄音器館にはビクターのロゴマークにもなっている,小首をかしげたニッパー犬グッズを色々と売っています。

毎回蓄音器館に来るたびに,これらのグッズを眺めていたのですが…今回ついに以前から気になっていたスマホスタンドを買ってしまいました。次のようなものです。

横から撮影
上から撮影。His Master's Voiceのフレーズも印字されています。
一応,充電ケーブルも入れられます。が,ちょっと充電用には使いにくい感じです。
充電ケーブルを使わない少し安いタイプのスタンドも売っていました。

この場所で買わなくても,通販でも買えるのですが,念のため自分のスマホがしっかりと収まるか確認した後,今回の上乗せ料金(実は今回のイベントは入場料310円のみでした)の積もりで購入。このスマホスタンドの下の方にラッパ型に広がった部分があるのですが,これはまさに蓄音器と同じような発想。その点でも蓄音器館のグッズとしてもぴったりだと思います。

通常スマホの下部にスピーカーがあり,その音を下から出す感じです。
蓄音器同様,少し曲がっている分,音が柔らかくなっていると思います。

最近,寝ながらスマホでネットラジオを聴くことが増えてきているので(FMいしかわ「広上淳一のいーじークラシック」とかです)試してみたところなかなか良い感じ。この部分があるとないとではかなり音量が違います。気軽に聴くには,この「なんちゃって蓄音器」でも十分行けるのではと思っているところです。

毎週土曜日に放送している「広上淳一のいーじークラシック」。
本日はこのスタイルで聞いてみました。

PS. 本日「ラッパと娘」だけは,イベントの開始前に小さめの音量で流していたのですが,下の蓄音器型の音楽プレーヤーを使っていたようです。こうやって見るとなかなか魅力的な姿なので,調べてみると,「昭和レトロフォン」というコロンビアの商品でした。懐メロ50曲が本体に収録されており,小型スピーカーとしても使えるようです。
https://shop.columbia.jp/shop/pages/retoro_phon.aspx

どんな音かもう一度聞いてみたい気はしますが…スマホからケーブル無しでBluetoothで音を飛ばせるようならば欲しくなってくるかもしれません。ケーブルで接続するのは,ちょっと雰囲気がない気がします。


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