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印刷/版画/グラフィックデザインの断層1957-1979(国立工芸館,2024年1月)

2024年1月新年早々,令和6年能登半島地震が発生し,金沢でも色々な影響を受けました。家屋の崩壊,地形の改変に加え,金沢では観光客の激減という2次的な影響もありました。公共ホールや博物館の一部では物理的に開館できないところもありますが,演奏会通いや博物館めぐりが好きな私のような者としては,いつもと変わらずに(余震への注意は必要ですが),地震前と同様の行動を取ることが自分にできることかなと考えています。

というわけで,昨年12月下旬に始まった,「印刷/版画/グラフィックデザインの断層1957-1979」という展覧会を先週国立工芸館で観てきました。

タイトルを見て,印刷や版画の技術について展示かなと思ったのですが,実際には,1957年から1979年まで東京国立近代美術館や京都国立近代美術館などを会場に行われた,東京国際版画ビエンナーレの出品作品を回顧するような内容でした。

会場の方はいつもどおり3つの展示室に分けて展示を行っていましたが,1階の展示室では版画関連の展示ではなく,「現代日本工芸の秀作:東京国立近代美術工芸館開館記念展」と題して,1977年に行った展示を振りかえる特集展示になっていました。

能登半島地震の直後でしたが,工芸作品の方にも特に影響はなかったようで「さすが」と思いました。今回の地震であ輪島塗,珠洲焼などの産地が大きな被害を受けたということで,いつも以上にじっくりと見てしまいました。撮影可だったので,以下展覧会の雰囲気を伝えるために写真を交えて紹介しましょう。

輪島のことが頭に残っていたせいか,特に漆器の朱色と黒のバランスが良いなと改めて思いました。

2階展示室は東京国際版画ビエンナーレ関連の展示でした。やはり地震の影響で,お客さんの数はものすごく少なかったのですが,その分じっくりと見られました。ぜいたくなことです。

1957~1979年というのは,日本の高度経済成長期に当たります。東京オリンピックや大阪の万国博覧会がその象徴です。芸術の分野では,前衛的,抽象的そしてポップな作品が,新しい技術を使いながら,沢山作られていた時代だったと思います。今回の展示にもそういう作品が多く,「時代の空気感」が伝わってきました(私は子供でしたが,1970年代の空気感ならば何となく体に残っています。)。くっきりした色合いというのは,版画の特性ですが,刺激的で尖っていて,どこか反体制的な作風にはかえって懐かしさのようなものを感じました。

これはポスター等のメインビジュアルになっている池田満寿夫さんの作品

ちなみに今回は結構立派な図録(リーフレットではなく冊子ですね)を無料で配布していました。

各回で賞を受賞した有名アーティストへのインタビュー記事も掲載されており,読み応えもある内容となっていました。「工芸」の中に版画や印刷も含まれるというのが少し不思議な点ではありましたが,しばし地震の被害のことなどを忘れることができました。

立派な図録をもらったということで,お土産にグッズを購入。版画の展示ということで,「雪の版画」と書かれた「お香」と台のミニセットを購入。こちらも日常生活の中の気分の切り替えに役立ちそうです。いろいろ選択肢はあったのですが,冬の金沢→雪という連想でこれを選びました。

京都の香彩堂という会社の商品でした。
右の白い皿(+金色の金魚)は既に持っていた「お香」用の皿です。

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