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音文協年末公演第60回記念公演 音楽文化国際交流(2023年1月9日)

2023年1月9日(月祝)14:00~ 石川県立音楽堂コンサートホール

1) モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲,K.620
2) ベートーヴェン/合唱幻想曲ハ短調, op.80
3) モーツァルト/戴冠ミサ曲ハ長調, K.317

●演奏
松下京介指揮石川フィルハーモニー交響楽団石川公美2-3,東園2(ソプラノ),小泉詠子(メゾソプラノ2-3),糸賀修平2-3,古村勇樹2(テノール),上野高裕(バリトン2-3),竹田理琴乃(ピアノ2)合唱:石川県合唱協会県民合唱団2-3

Review

石川県立音楽堂で音文協年末公演(今年は”年始”ですが)が行われたので聴いてきました。この年末公演も今回で60回目となります。以前は,ベートーヴェンのミサ・ソレムニスと第9交響曲をセットで毎年演奏していましたが,ここ数年は色々なミサ曲を演奏するようになってきたようで,今年はモーツァルトの戴冠ミサ曲,ベートーヴェンの合唱幻想曲他が演奏されました。演奏は松下京介さん指揮石川フィルハーモニー交響楽団でした。

前半まず,モーツァルトの歌劇「魔笛」序曲が,まとまりのある響きできっちりと演奏されました。この曲では,冒頭や途中に出てくる「和音」が印象的ですが,特にこれらの部分での充実感とまとまりのある響きが印象的でした。

続いて,ベートーヴェンの合唱幻想曲が演奏されました。個人的に,今回の公演で特に楽しみにしていたのがこの曲でした。オーケストラ,合唱団に加え,ピアノ独奏,ソプラノからバリトンまで6人の独唱者が必要な曲ですので,なかなか演奏される機会のない作品です。私自身,この曲を実演で聞くのは20年ぶり(ぐらい)2回目です。今回は石川県合唱協会合唱団,6人の独唱者,そして,竹田理琴乃さんのピアノを交えての演奏でした。

この曲の構成ですが,曲前半の第1部はず~っとピアノだけで進む幻想曲風,第2部になってオーケストラとピアノが絡み合う変奏曲に。そして第3部(最後の5分程度)で満を持して合唱団とソリストが出てきて,華やかに盛り上がるというかなり変わった構成です。

というわけで,第1部から第2部に掛けては,竹田理琴乃さんの磨き上げられたピアノの独擅場という感じでした。昨年末,金沢市アートホールでリサイタルを聞いたばかりでしたが,音響の良い石川県立音楽堂コンサートホールで聴くのもまた格別で,濁ることのない美しい音によるのびのびとした演奏を楽しむことできました。この曲の時はかなりの大人数がステージに乗っていましたが,竹田さんのドレスが鮮やかな赤だったので,見た目的にもまさに紅一点という華やかさがありました。

第2部になると「第9とそっくり」のメロディが出てきます。オーケストラの色々な楽器と竹田さんのキラキラとしたピアノとが軽妙に絡み合っていく感じが楽しかったですね。第3部でソリスト6人が加わってるくると,音楽の輝きがさらに増してきます。それを受けて,大合唱が出てくると「ついに来たか。待ってました」という感じになります。曲の最後の部分では,ソリスト6人と大合唱に,竹田さんのピアノが加わり,一気に祝祭的な気分になります。曲の最後の部分,グイッと力こぶを作る感じで音楽が盛り上がり,聞いていて元気が出ました。新春にぴったりの曲・演奏だったと思います。

後半は,モーツァルトの戴冠ミサ曲が演奏されました。この曲については,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の公演でも聞いたことがありますが,実演で聞くのは石川県立音楽堂が開館した直後の定期公演以来かもしれません。

こちらの方は,ベートーヴェンとは対照的に冒頭すぐに合唱が登場します。出番も多かったので,後半の合唱は「椅子なし」でずっと立ったままでしたね。率直でまとまりの良い,声が「キーリエ」とバンと飛び込んできました。そしてすぐにソリストが登場。

このミサ曲では特にソプラノ独唱が活躍しており,おなじみの石川公美さんの明るく輝きのある声を存分に楽しめました。テノールの糸賀修平さんの軽やかな声とともに,テンポ良く,サクサク進んでいくのが心地良かったですね。

第2曲「グロリア」も明快で,心地よいボリューム感のある演奏。オーケストラと一体となって充実のサウンドを聞かせてくれました。第3曲「クレド」は,合唱による力強い宣言に続いて,4人の独唱者を中心とした「イエスの物語」的な部分になります。ミステリアスな部分,情感溢れる部分など,推進力と変化のある音楽を聞かせてくれました。最後の「アーメン」も充実感がありました。

第4曲「サンクトゥス」はコンパクトな音楽ですが,誠実さと同時に輝きのある充実した音楽になっていました。第5曲「ベネディクトス」は,独唱者のアンサンブルが中心で,モーツァルトのオペラの中に出てきそうな感じでした。

第6曲「アニュス・デイ」でも,ソプラノの石川さんが活躍。第1曲では「コシ・ファン・トゥッテ」のアリアのようなメロディが出てきましたが,こちらでは,「フィガロの結婚」の伯爵夫人のアリアのようなメロディが出てきました。しみじみとした温かみがあり,気分が浄化された感じになりました。

その後,「キリエ」と同じメロディが出てきた後,最後は「我らに平和をあたえたまえ」の合唱で全曲が締められました。安定した音楽運びで,しっかりと祈りの気分が伝わってきました。

全曲を通じて,明快さと同時にボリューム感のある合唱が素晴らしかったと思います。オーケストラの方は「ヴィオラ抜き」という不思議な編成でしたが,黒瀬恵さんのパイプオルガンが「隠し味」のように加わっており,安定感と充実感がありました。

配布されたプログラムの情報によると,来年は伝統の第9+ミサ・ソレムニス公演になるようです。2023年の1月現在,ウクライナでの戦争や新型コロナウィルスの感染拡大が以前として継続していますが,来年こそは平穏な中で聞いてみたいものです。

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