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ライブラリー・ミニコンサート:魔法の笛:オーケストラ・アンサンブル金沢メンバーによるフルート二重奏(2024年6月16日)

2024年6月16日(日)16:00~ 石川県立図書館だんだん広場
1) ベートーヴェン/2本のフルートのための二重奏曲ト長調, WoO.26~第1楽章
2) モーツァルト/歌劇「魔笛」~「私は鳥刺し」「なんと不思議な笛の音」「夜の女王のアリア」
3)シュナイダー/プロヴァンス風組曲~II.藤の中のミツバチ,IIIブイヤベース,IV.ミストラル,VI.ファランドール,VIII.遠くで聞こえるアフリカの音,IX.エクスの噴水
4)(アンコール)星に願いを
●演奏
満丸彬人,八木瑛子(フルート)

6月の日曜日の夕方,緩い空気が流れる時間帯。石川県立図書館だんだん広場で行われた,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)メンバーによるライブラリー・ミニコンサートを聞いてきました。毎月のように開催しているこのシリーズは大人気。30分以上前に会場に着いたのですが,既に結構長い列ができていました。今回はOEKに入団したばかりの2人のフルート奏者,満丸彬人さんと八木瑛子さんが登場しました。そして,タイトルは「魔法の笛」でした。

入場無料のミニコンサートなので,親しみやすい小品集が演奏されるのかな?と思っていたら,べートーヴェンの2本のフルートのための二重奏の1楽章,シュナイダーという作曲家による「プロヴァンス風組曲」(抜粋)という,2台のフルートのためのオリジナル曲がしっかりと演奏されました。その間に演奏されたのは,演奏会のタイトルどおりのモーツァルト歌劇「魔笛」の中の有名なアリア集。ということで,とてもバランスの良い構成となっていました。

会場のだんだん広場。客席がオープンになるまでの待ち時間に撮影。
会場を取り巻くように長い列ができていました。

最初に演奏されたベートーヴェンの二重奏を聴くのは初めてだったのですが,2人のフルートのくっきりとした音の絡み合いが楽しめる作品でした。2人のフルートの音は,まさに生きているようでした。このホールは残響が少なく,ごまかしがきかない怖さもあるのですが,ピタリと息があっており,「さすが同じオーケストラの同僚だなぁ」と思いました。ちなみにこのお二人ですが,「とても長い付き合い」で,同じオーケストラに入ることになり「びっくり」だったそうです。満丸さんは鹿児島県出身なのですが,高校生・中学生の頃からの知り合いとのことでした(八木さんの方は色々な県に住んでいたそうですが,同時期に九州に住んでいたこともあり,同じコンクールを受けたりしていたとのこと。クラシック音楽業界も狭いですね。)。

続いてモーツァルト「魔笛」の中のアリア3曲がフルート2本で演奏されました。英語読みだと「Magic Flute」ということで,ぴったりの選曲でした。ただし,フルート2本で演奏されるのは結構珍しいかもしれませんね。木管合奏では結構よく演奏されますが,フルート2本で「メロディも伴奏も」となると結構大変とのことでした。

「私は鳥刺し」はオリジナルではパンフルートのような楽器を使っていますね。のんびり聞いているうちに自然と幸福感が湧き上がってくるような演奏でした。「なんと不思議な笛の音」の方は,「魔法の笛」があれば世界は平和になるといった感じの曲(意訳しすぎでしょうか)ですね。日曜日の午後後,のんびりと音楽を楽しめる―平和のありがたさをしみじみと味わいながら聞いていました。会場のだんだん広場は残響はほとんどないのですが,冷たい感じはせず,非常に集中して音を楽しめる空間です。今回もモーツァルトの曲の持つ幸福感や平和への思いがしっかり伝わってきました。このコーナーの締めは「夜の女王のアリア」(2幕の方)でした。コロラトゥーラソプラノのアクロバティックな華やかさで有名な曲。原曲だと「超高音が正しい音程で出るだろうか?」と聞く方も少々緊張するのですが,フルートだと音が楽々と出過ぎて「鼻歌」風になってしまうかなと思いました。というわけで,この曲だけは,やはりオリジナルのソプラノで聞く方が色々な面でスリリングな楽しみがあると思いました。

開演前に撮影。小さい音でもしっかりと聞こえるホールです。

最後はシュナイダーというスイス出身アメリカの作曲家による短い曲からなる「プロヴァンス風組曲」でした。今回はその中から6曲が抜粋で演奏されました。ここまでの2曲とは趣向が変わり,ジャズ風でモダン響き(前衛的とまでは行かないのですが,特殊奏法を色々と使っていました)を散りばめた音楽でした。色々なタイプの音楽が次々と出てきたのが楽しかったですね。

最初の「II.藤の中のミツバチ」は,速い音の動きにクールさが漂っていました。「III.ブイヤベース」はタイトルからして「なんじゃこれは?」風で,軽やかなユーモアを感じました。「IV.ミストラル」はフランスで吹く季節風ですね。怪しい雰囲気の後,最後にヒューッという息の音が入っていました。2つのフルートが微妙にズレながらハモる感じは,ちょっとミニマル音楽風かもと思いました。

「VI.ファランドール」は変拍子風のちょっと粋な感じの曲でした。「VIII.遠くで聞こえるアフリカの音」は,「言われてみればアフリカ風かな」という感じがだんだんとジャズ風になっていき,エキゾティックなムードも高まっていく,といった感じの曲でした。最後は「IX.エクスの噴水」。チョロチョロと出ていた水が,段々と大きくなっていく感じでした。音程を微妙に揺らすような感じも面白かったですね。

あっという間に予定の時間となり,最後にアンコールで「星に願いを」が演奏されてお開きとなりました。日曜の夕方という「ゆるさ」と少々寂しさのある時間帯に響くフルートは最高でした。来月のライブラリー・ミニコンサートは7月14日に行われるのですが,こちらも日曜日の16:00から開演。日曜夕方の定番になりつつあるようですね。

来月のチラシです。お馴染みヴァイオリンのトロイさんが,
加藤純子さんと共演します。
だんだん広場の前のスペースでは,「あさいち」の絵本を展示中
図書館入口にあるHUM&Go。能登ミルクの看板がいつも出ていますね。


 

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