オーケストラ・アンサンブル金沢 新春ミニコンサート(2023年1月3日)
Review
私にとっての「2023年演奏会初め」は,石川県庁で行われたオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)メンバーによる,新春ミニコンサートでした。例年このコンサートは,19階展望ロビーで行っていたのですが,今年はワクチン接種会場になっている関係で,1階の入口横の休憩・待合コーナーで行われました。出演は,OEKの坂本さん,トロイさん,丸山さん,早川さんの4人。弦楽四重奏の編成で,3曲+アンコール1曲を楽しんできました。
最初に演奏されたのは,バッハ「主の人の望みの喜びよ」でした。今回は,速目のテンポによるすっきりとした演奏でした。オリジナルは合唱曲ですが,マイラ・ヘス編曲によるピアノ独奏版などでもよく演奏されますね。弦楽四重奏の編成で演奏される機会は多くないと思いますが,間近で聞くと各声部の絡み合いがくっきりと分かり,「バッハらしいな」と思いました。途中,第2ヴァイオリンのトロイさんがメロディを演奏する部分で,すっとメロディが浮き上がってきたり,個々の楽器の活躍も楽しむことができました。
続いてボロディンの弦楽四重奏曲第2番の第3楽章「ノクターン」が演奏されました。この選曲の意図は,今年の春の連休に行われる楽都音楽祭のテーマが「東欧」ということによるとのことでしたが,考えてみるとボロディンはロシアの作曲家ですので…「ちょっと違う」かもしれませんね。
冒頭,チェロが夢みるように美しい主旋律を演奏して始まります。早川さんの音色は実に温か。夜聞くと心地よく眠れそうでした。その後,第1ヴァイオリンの坂本さんが高音で同じメロディを繰り返します。一気に音域が高くなり,ゾクゾクとさせてくれました。この曲を実演で聞くのは久しぶりでしたが,改めて美しい曲だなと思いました。
最後はピアソラの「4人のためのタンゴ」が演奏されました。その前に,なぜこの曲を選んだのかについて坂本さんから説明がありました。ピアソラは2022年が没後30年,2021年が生誕100年だったが,コロナ禍で記念年を祝い損なったので...ということでした。ちなみに昨年のこのコンサートでは,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中の「カヴァティーナ」を演奏したそうですが,この曲についても,「2020年にベートーヴェンが生誕250年を祝ってもらえなかったから」とのことでした。コロナ禍も色々なところで影響があったようですね。
その他,「タンゴは不景気の時にはやる」ジンクスについても紹介されました。例として「だんご3兄弟」や「黒猫のタンゴ」が挙げられていました。どちらも曲は覚えていますが…さすがに当時の景気のことまでは覚えていませんね。
さてこの曲ですが,特殊奏法満載の面白い曲。ピアソラだけあって,急にダークな雰囲気になりましたが,トントン叩いたり,コマの近くをギシギシ擦ったり,キュッキュッと音を滑らしたり,これもまた間近で聞いて楽しめる曲でした。最後はドンと足踏みを入れて終了しました。
「この曲で終わるのもちょっと…」ということで,アンコールでは「人物を紹介する「あのテレビ番組」のテーマ曲」という坂本さんの思わせぶりな紹介の後,「情熱大陸」のテーマが演奏されました。坂本さんの演奏する主旋律も良かったのですが,バックのリズムなども全部弦楽器で演奏するのも心地よかったですね。文字通り情熱的な演奏でした。
この日は,天気予報では雨とか雪だったのですが,この時間帯(私は13:00の回に参加しました)の時は,天気予報が外れた感じで,素晴らしい好天に。良いスタートを切れそうだなと思わせてくれる新春コンサートでした。
PS.
せっかくなので19階展望ロビー(上述の事情で,半分ほど使えませんでしたが)から山並みや金沢港を眺めてきました。
PS2.
「今年は1階で演奏」ということで,実は,入口ホールの真ん中(以下の写真)で演奏してくれるのかな,と期待していました。残響が多すぎるでしょうか。
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