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クラシック・キャラバン2022石川公演:クラシック音楽が世界をつなぐ:輝く未来に向けて「華麗なるガラコンサート」(2022年11月25日)

2022年11月25日(金)18:30~ 石川県立音楽堂コンサートホール

1) メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調, op.64~第1楽章
2) チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲二長調, op.35~第1楽章
3)ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調, op.104~第1楽章
4) ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調,op.73「皇帝」~第1楽章
5) ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番ハ短調 op.18~第1楽章
6) シベリウス/交響詩「フィンランディア」op.26
7) (アンコール)菅野よう子/花は咲く

●演奏
村田夏帆1,吉田南2(ヴァイオリン),上村文乃(チェロ3),佐藤卓史4,中野翔太*5(ピアノ)
岩村力指揮スーパー・クラシック・オーケストラ(コンサートマスター:神谷美穂)
合唱:藤原歌劇団合唱団,二期会合唱団*6-7
司会:松村雄基

クラシック・キャラバン 2022「華麗なるガラ・コンサート」の石川公演が石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聴いてきました。この公演は,クラシック音楽の演奏家たちがコロナ禍を乗り越えるために企画されたコンサートシリーズで,この日は若手ソリスト5人と2つの合唱団が岩村力指揮スーパー・クラシック・オーケストラと共演しました。

演奏会は,有名な協奏曲の第1楽章ばかり5曲が演奏された後,合唱入りの「フィンランディア」で締めるというという構成でした。いつも全曲を聞いている協奏曲ばかりだったので,「どうも妙(主食ばかり並んでいる感じ...)」でしたが,若手~中堅の独奏者たちの演奏はどれも安心して楽しめる内容で,次から次へと独奏者が登場する,文字通り「華麗な雰囲気」のある公演でした。

前半は弦楽器のための協奏曲3曲が演奏されました。最初に登場したのはまだ中学生の村田夏帆さんで,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の第1楽章が演奏されました。まだジュニアのコンクールにしか出場経験はないそうですが,演奏の方は「昔から(!)演奏してきた」(演奏後のトーク)だけあって,熟練の演奏という落ち着きがありました。よく通る,暖かみのある音色が素晴らしく,しっとり,じっくりと歌い上げていました。後から登場した奏者たちに比べると,多少「押しの強さ」のようなものが不足しているのかなと思いましたが,これから,「大人のコンクール」に出場して,どんどん頭角を表してくるのではと思いました。

続いて登場した吉田南さんは,チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第1楽章を演奏しました。吉田さんもまた落ち着きのある演奏。どこかクールで怜悧な雰囲気があり,甘くなり過ぎることなく,くっきりと歌っているのが良いなと思いました。曲全体のフォームも美しいなぁと思いました。

展開部は,この日,ティンパニを担当していたNHK交響楽団の久保さんの威厳のある音でスタート。スーパー・クラシック・オーケストラには,色々なオーケストラのメンバーが参加されていましたが,久保さんは,その中でもいちばんのベテラン奏者だったのではないかと思います。包容力のある響きで全体を包み込むような感じでした。この部分での,吉田さんのヴァイオリンもとても丁寧でした。透き通るような響きの高音域が美しく,ゾクゾクしながら聞いていました。

前半の最後は,上村文乃さんのチェロ独奏によるドヴォルザークの協奏曲の第1楽章が演奏されました。上村さんはピリオド楽器のコンクールのインディアナポリス国際バロック・コンクールで優勝されたそうですが,その音には透明感のある伸びやかさが感じられました。しっかりと歌われた第2主題には,心地よい空気が流れ込んでくるようなな爽快さがありました。

展開部になるとどこか孤独さを感じさせる気分になりました。それに寄り添うフルート(この日は高木綾子さんが参加しておりびっくりしました)の親密な感じも良いなと思いました。その他,冒頭に出てくるクラリネット。しばらくして朗々と歌われるホルンなど,管楽器の演奏も聞きものでした。

この日はステージの照明にも工夫がされていました。

後半では,ベートーヴェンの「皇帝」とラフマニノフの2番というピアノ協奏曲の王者のような名曲の第1楽章が演奏されました。演奏は,佐藤卓史さんと中野翔太さん。どちらも一度実演で聴いてみたかったピアニストでした。お2人とも安定感抜群のクリアな演奏を楽しませてくれました。

「皇帝」の方はオーケストラの明るい和音の後,佐藤さんの明快で清潔感のある音が続きました。古典的な端正さと自在に動き回る自由さとが共存した「お見事!」という演奏だったと思います。その後も迷いのない率直で推進力のある演奏が続きで,ぐいぐいと引きつけてくれました。機会があれば,是非一度,オーケストラ・アンサンブル金沢と共演して欲しいなと思いました。

ラフマニノフの2番の方も冒頭部から,リアルな鐘を思わせるような中野翔太さんのピアノの美しい響きを楽しむことができました。オーケストラと一緒に演奏している部分でも,ピアノの音の動きがクリアに分かるような感じがあり,重苦しく成りすぎないラフマニノフだった思いました。

中野翔太さんは,ニューヨークのジュリアード音楽院出身で,その頃からジャズも演奏しているとのことでした。実は少し前,NHKのEテレ「クラシック音楽館」の先日亡くなられた一柳慧さん追悼コーナーで中野翔太さんが「ピアノメディア」という「もの凄い」としか言いようのない曲を演奏するのをたまたま聞いて,圧倒されてしまったのですが,一度,多彩なプログラムによるリサイタルなど聴いてみたいものです。

演奏会の最後の曲は,藤原歌劇団合唱部二期会合唱団の合唱入りのシベリウスの「フィンランディア」でした。この日のオーケストラの女性メンバーは色とりどりのドレスを着ていましたが,その雰囲気どおりの華やかな明るさのある演奏でした。中間部で合唱が加わると,急に親しみやすいローカルな感じになり,一気に北欧気分になった感じでした。この曲が「フィンランド」の第2の国家になっている理由が分かるような演奏でした。

合唱団の出番がこれだけだともったいないかな...と思っていたら,アンコールとして「花が咲く」が演奏されました。東日本大震災後に頻繁に歌われていた曲ですが,Withコロナの今にも通じる曲だと感じました(実は,アンコールの演奏の前に,指揮者の岩村さんが演奏の趣旨を語っていたのですが...マスクなしを気にされて口を押さえながら話していたのでよく聞き取れませんでした)。

本日登場したスーパー・クラシック・オーケストラは,上述のとおり,日本全国のオケのメンバーや演奏者から成る臨時編成の楽団でしたが,フルートの高木綾子さん,ティンパニの久保昌一さん,そして,コンサートマスターの神谷未穂さんなど,お馴染みの方が多数参加しており,見ているだけで嬉しくなりました。

ソリストの吉田南さん,村田夏帆さんは今年の「いしかわミュージック・アカデミー」の受講生(吉田さんはIMA音楽賞受賞),上村文乃さんも2006年にIMA音楽賞を受賞されており,金沢に縁のある方々。今後また金沢での公演を期待したいと思います。

PS

この公演は,ガラコンサートということで司会の松村雄基さんが各曲の前後に登場し,出演者にインタビューをしました。あまり大げさに感想を言ってもらわなくても...という感はありましたが,その分お祭り的な気分は出ていました。演奏が始まる前,演奏会の趣旨説明をする部分では,少々ハラハラするようなトラブルがありましたが(非常にややこしい名前ばかりだったので,ペーパーを見ながら話してもらった方が良かったかも...),その後は若々しい進行でした。

指揮の岩村さんのトークも良かったですね。元サッカーのゴールキーパーだった話題など(言われてみれば,そういう雰囲気があります),タイムリー(?)な話題が披露されたのが楽しかったですね。

この「クラシック・キャラバン」は,コロナ禍中の特別企画というだと思いますが,個人的には,やはり協奏曲ならば全曲聴いてみたいなというのが正直なところでした。次年度も継続するならば,もう少し短めの曲(この日は結構長い「楽章」ばかりだったので,かなりのボリュームになりました)を集めたガラコンサートでも良いのかなと思いました。

11月末ということで,音楽堂の内外にもクリスマスの飾りが目立つようになってきました。

見ているとハッピーな気分になるツリーですね。
柱にもクリスマスの飾り
ホテル日航金沢の前
中にはツリーが飾られていました。

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