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特別陳列「没後30年田中太郎:誠をつくす彫刻」(石川県立美術館)+金沢21世紀美術館の近況

本日の午前中は意外に良い天気になったので,自転車で石川県立美術館に出かけ,常設展を観てきました。特に注目は石川県七尾市出身の彫刻家,田中太郎没後30年にちなんだ特別陳列でした(ただし,没年は1992年なので,今年は没後32年ですが…)。

田中太郎は,昭和前期,当時木彫の第一人者だった,平櫛田中(ひらくし でんちゅう)に師事します(田中(でんちゅう)の弟子が田中(たなか)というのも面白いですね)。ただし,その作風は鬼気迫るようなリアルさをもった田中(でんちゅう)の作品とは違い,非常に多彩です。その辺が通観できるような展示になっていました。無料図録も素晴らしい内容。全展示作品の写真と解説が書かれていたので,「保存版」といったところでした。

展示室の最初に展示されていた「烏」は,師匠譲りのリアルな迫力を持った作品。優しさ溢れる「母」の像など,戦前期の作品は師匠の影響が強いと思いました。それが終戦後の昭和20年代以降になると,一気に色々な表現や構図の作品が出てきます。人と動物が合わさったような像,非常に不自然なポーズの作品,抽象的な像…基本的に木彫作品なのですが,同じ作風を繰り返したくないという意識が強い作家なのだなと思いました。

その中で特に印象的なのは,やはりポスターのメインビジュアルにもなっている「音色(おんじき)」。1976年,65歳頃の作品です。作品に溢れる素朴なユーモアは,作者の人柄が飾り無く出ているようです。

田中は七尾市出身で,仏教の信仰がその生活の中心にあったようです。図録の解説によると「誠をつくし,心をこめて彫る」という教えが制作の基本にあったとのこと。そして,制作というのは対象からその「真(ま)」をくみとり,すべてをかけて造形する行為で,具象抽象にとらわれる必要はない,と晩年語っていたそうです。良い言葉だなと思いました。

これまで,この作家のことを知らずに何となく鑑賞していたのですが(「音色」だけば見覚えがあったのですが,もっと新しい時代の若いアーティストの作品かと思っていました),こうやって解説付きでずらっと並べてみると,面白いものだなと思いました。

その後,能登半島地震の影響で2月最初までずっと閉館していた金沢21世紀美術館に行ってみました。

まだメインの展示室はオープンしていませんでしたが,2月6日からは無料部分に入れるようになっていました。

地震前までのような混雑はありませんでしたが,21美の場合,建物をぐるっと一回りするだけでも十分楽しめるので,一安心しました。ただし,これだけお客さんが少ない21美も珍しいことです。せっかくなので,写真でご紹介しましょう。

名物のガラス張りのエレベータは賑わっていました,
メインの展示室はまだ入れない状態。がらんとした感じになっていました。
デザインギャラリーも空いていました
人気のプールにも入れない状態
チケット売り場の前に誰も並んでいない光景も滅多に見られないかもしれません。
この状態でも十分美しいですね。
コレクション展もこんな感じ
撮影スポットの定番の「うさぎの椅子」の付近は,相変わらず人気でした。
タレルの部屋には入れました
屋外にも展示はあるので,公園として楽しんでいるお客さんもかなりいました。
市民ギャラリーの裏の「雲を測る男」の前も賑わっていました。

展覧会をやっていなくても,結構楽しめるのが21美の素晴らしさだと実感しました。とはいえ,一日も早く,21美で以前のような展示が出来る状態に戻ることを待っています。

その後,香林坊方面へ。アトリオ~東急スクエアの地下通路には,能登半島地震からの復興を祈るマジンガーZのオブジェ。輪島市出身の漫画家,永井豪さんの作ったキャラクター。本当に復興のために働いて欲しいものだ,と思ってしまいました。




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