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波打つ、

No.2 Milan Lutz Schneider ________ それは、よく、晴れた日。 一点の曇りもなく、まっすぐに広がる空。 やわらかな、温い、陽。 鳥のさえずり。 何処からか、何か良い香りが漂う。 彼は、劇場を前に立っていた。 Aの言った通りならば、また、彼女に会える。 そう思うと、分かりやすく胸が高鳴る。 期待感や緊張からか微かに震える手でその扉を開けると、 そこに広がるステージはあの日と同じく、 私を歓迎しているように思えた。 他に人の気配は

    • 真昼の月

      No.1 Ann Hawkyard ________ それは、少しばかり、曇った日のこと。 地に向かって、一筋の光が差した。 雨上がりの匂い。 水滴の落ちる音。 少しずつ、少しずつ、太陽が昇っていく。 彼女は、劇場を前に立っていた。 何故か、何かに呼ばれる様にそこに足が向いて、 気が付けばここにいた。 外壁にぶら下がる呼び鈴を一度鳴らしてみるも、 返事はない。 大きな扉に手をかけゆっくりと開けると、 そこに広がるステージはあの日と同じく、 私を歓迎しているよう

      • 劇場にて

        ❍序章 ______ 穏やかな日。 やわらかな空気。 陽気な音楽。 街。 溢れる人。 笑い声。 ここにいつか、来たことがあるような気がしていた。 街を行く、見る人見る人が、 見たことがあるような、ないような そんな顔をしている。 言語もそうだ。 聞いたことがあるような、ないような、 分かるようで分からない言葉。 ここは、おかしい。 しかし、懐かしい。 _____朝。 目が覚めるとそこもまた、知っているような、知らないような一室だった。 ドアの前に

        • 踊るのは

          ❍ 序幕 ______ 「____Ladies and gentlemen. 大変、長らくお待たせ致しました。」 「本日は、案内役を務めさせて頂きます。 私のことは…… そうですね、Aと。 以後、お見知り置きください。」 「ああいや、お構いなく。 貴方のことは、よく存じ上げておりますので。 お名前も、その他も、概ねは。 入国審査を受けて頂いてますからね。」 「さて、ここからは本題となります。 ここ、”踊る国”について、私から御説明致しましょう。」 「ここは、

        波打つ、