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現場のくまがいさんvol.1『演劇の現場で学ぶ「振付」のあり方。』

踊るさぶすくマガジン『くまのつべこべ』内で不定期に配信していた動画コンテンツ「現場のくまがいさん」をリニューアルいたしまして、メルマガ形式による僕が考える「踊り哲学」をお伝えしていこうと思いました。
僕にとっては「仕事」でもある「踊り」の話は踊る以外の創作者にも通ずるかと思っています。

そんなリニューアル後最初のテーマは『演劇の現場から学ぶ「振付」のあり方。』についてです。
今年に入り2つ続けて演劇作品の振付をさせて頂いて気が付いた、「踊り」や「振付」の可能性をまとめていきます。

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※(左)「僕の名前はズッキーニ」上演脚本。(右)「染、色」上演脚本。

■現場に潜んでみる■

今年の1月からノゾエ征爾さん演出の「僕の名前はズッキーニ」(2月28日~3月14日東京・よみうり大手町ホール/3月19日~21日大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール)、4月から瀬戸山美咲さん演出の「染、色」(5月29日~6月20日東京グローブ座/6月24日~30日梅田芸術劇場 シアタ・ドラマシティで上演予定 )の2作品のリハーサルに参加させて頂きました。

実際に振付を行うまでは色々なパターンはありますが、リハーサル前に演出家の方と打ち合わせをした後、リハーサル内で振付を行う日時を決めて、使用する曲やシーンのト書きを頂き、その日までに振付を考えて行き当日役者さんへ振付をする流れを踏む事が多いと思います。
「染、色」に関しては現在も絶賛リハーサル中ですが、僕は2作品とも※本読みの日から参加させて頂きました、ノゾエさんとも、瀬戸山さんとも事前に打ち合わせはさせて頂きましたが、実際に振りを踊るのは役者さん達ですからまずは皆さんの声や、居方を感じなくては何も始まらないだろうという気持ちと、実際に振付に入るまでの時間を少しでも長く現場で過ごした方が僕も役者さんも緊張が少ないと思うからです。

僕だって緊張はします(笑)、緊張感が好きな振付家や演出家の方もいらっしゃいますが、僕はとにかく嫌いです。

リハーサルが本格的に開始する前に行われる「読み合わせ」から何をするわけでもなくそこにいると、それはそれで沢山の事が見えて来ます。初めましての役者さん同士の会話や、久しぶりの共演の挨拶、それぞれの俳優さんに対する演出家の雰囲気、演出家の方が何にどう気を遣うのかなどなど。

色々書きましたが、そこまで分析出来なくてもその場に潜むのが大切なので、力まずその部屋の観葉植物にでもなったつもりで潜みましょう笑
肝心なのは参加しない事です、今回お話している現場はどちらもとても素敵な方々が集まっていますので、お話を振ってくださったり気さくにお話してくれますが、まずはお仕事、お仕事。
中に入ると気が付き難い事を、至近距離で外から観察するイメージです。

役者さんを見て気が付いた事があれば些細な事でもメモをとったりもこの時期にやってみます。
〇〇さんアキレス腱長い
△動く前に目から動く
△大きな声を出す時は背中が丸い
△泣くお芝居の時の表情が好き

などなど、何だっていいので書いておきます。
後で使うか使わないではなく、観察が大切です。

この時間は後に実際振付を行う時に豊かなやり取りを可能にしてくれる材料になるんです。

【※本読み】
演劇などで、けいこに入る前に、作者や演出家が出演者を集めて脚本を読んで聞かせること。また、出演者が脚本を読み合わせること。

■じわじわ振付に入る■

そんな時間を過ごすうちに、今度は実際に役者さんたちが稽古場で動きながら、小道具を使い、仮の舞台セットの中で動きながら台詞と共にリハーサルを繰り返す立ち稽古が始まります。このあたりから現場によっても変わりますが、ではここで踊るシーンになりますので後日○日○時から振付をお願いします。という流れになります。しかしここでの2作品はそのあたりをいい意味で曖昧にやらせてもらっておりまして、立ち稽古を見ている中でなんとなくタイミングがやって来て、「じゃちょっと熊谷さんお願いします。」みたいなテンションで振付を行うスタイルが実現しています。

実際振付に入ると観察時間の材料が少しずつ役に立ってきます、一人ひとり違う体を持った役者さん達に、無理のなくかつ演出家の方々の意見を反映させた振りをするのが理想ですが、最初から飛ばさずにじわじわ振付する事を心がけています。
踊る事が得意な役者さんもいますが、そうじゃない方もいますから無理をさせる必要はないんです。振付を踊りこなす事を押し付ける事はせず、その役者さんが演じる上で使う道具のような意識で振りを渡していきます。

振付を実際に行うことを、「振り入れ」とか「振り渡し」とか言いますが僕は「渡す」方が好きです。渡してあとは便利な時にあなたがあなたの為にお使い下さい。というイメージですね。

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