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するするエッセイ【おどって暮らす】#8

さぶすくマガジン「くまのつべこべ」するするエッセイです。毎月15日と30日に更新されるこちらのエッセイ。
どんな事を書くのか…僕自身も楽しみにしておりますので、どうぞ宜しくお願いします。


3日ほど前に、仕事のため故郷である札幌に行ってまいりました。
秋が始まった札幌は実に気持ちが良く、夜には15度くらいまで下り、少し肌寒くもある。
それがまたなんともいいのです。
「うぉー!来ましたね!僕、気を引き締めて頑張ります!」
と心の中でまんべんの笑みで叫んでいるんです。

もちろん寒さが苦手な方には異常な話に聞こえるでしょう、
実際に僕も寒さは苦手な方でこそありませんが、好きな訳でもなく。結局のところ札幌の寒さが好きなんです。
色々な記憶を札幌の秋が運んで来てくれるのでしょう。
毎回文章を書いている僕がこんな言葉に逃げていいのかわかりませんが「なんともいえない気持ち」になるんですね。
あえて言うなら【41歳のセンチメンタル】でしょうか…

さぁ。お話がただの札幌がなまら好き!
という方向になりそうですが、そうではなく。

少し自分をかわいがってみませんか?
という、お話なんです。

僕は23才で東京に出る、いわゆる【上京】を決心して、
レオパレスに勤務する高校時代の同級生が僕に言った「新宿から少し離れるけど、光熱費込みで7万だよ!家具も家電も付いているし!」と言われ、立川駅からモノレールで数駅揺られて辿り着く「上北台」という駅から徒歩15分のレオパレスに引っ越した。

「新宿から少し…タカベの少しは50分もかかるよかよ!片道780円もすんのかよ!」と心の中でカリカリしながら、知らない土地で目的地になかなか着かない不安なのか、これから始まる東京ライフへの不安なのか、とにかく【不安】と【怒り】はにているのねー。と、今は楽しく当時を思い出せるが、23の青年はおそらく肩凝りに気が付かないほど、肩に力が入っていたのでしょう。

やっとの思いでたどり着いた部屋の鍵を開けて、部屋の蛍光灯を点けると、2月の寒さのせいでゆっくりと勿体ぶって明るくなる部屋が、一段と不安と怒りと寂しさを呼び寄せたました。
羽田空港について4時間程で早々と東京に来た事を、小さく後悔したような記憶があります。

その日からずっと、楽しい事も、嬉しい事も沢山ありましたが、全ての感情を【不安】がうっすらと取り囲んでいるんですね。
20代ですから、勢いで不安を押しのける事も出来ましたが、強引に押しのけた不安は、ちゃんと勢いをまして帰ってくるんです笑。

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