ギザギザハートの無頼漢

「あんたも早う結婚したらええで。守るもんができたら仕事に張り合いができるさかいな」

昔、赤坂の喫茶店で上司に言われた。

2007年頃。僕が荒んでギザギザハートの無頼漢だった頃の話だ。

上司なりに心配してくれたんだな。

ただ、こういう言葉は誰もがどこかで聞いたことのある、手垢にまみれたもので、当時は、
(仕事に張り合いを出すために結婚するなんて目的がおかしくないか?)と思ったものだった。

今ではわかる気がする。

張り合いが出るのはあくまで結果として、ということで。

家族ができると、心身に動物的なバックボーンが一本入る。

働く意味の中で、食うために、食わせるために働く、というものがひときわ鮮明になってくる。

自己実現とか社会貢献とか、ホモサピエンスとしてはそれも大切なのだが、その前に、そもそも動物として生きていくために日々の糧を得るということの大切さ。

そういう認識を新たにする。

この狩りをしくじれない、という緊張感。狩りをして生きていることの業の深さ。同じように狩りをしている人達に感じる敬意。

そういう感じだろうか。

まあ、家族を持たなくてもわかる人にはわかることなんだろうけど。

あなたの御寄附は直接的に生活の足しになります。