息子はLサイズ

母親の買ってくるダサい服からいかに脱却できるか。

それが男の子の成長過程の一つの難関である。

最近は親もセンスがいいし、安くてもデザインがいいファストファッションが増えた。

男の子もなかなか成長しにくいだろう。

僕の母のセンスは致命的に悪かったし、服を買う店も町のスーパーにある、申し訳程度の洋服コーナーしかなかった。

誤解のないように、「街」ではない。「町」だ。限りなく村に近い町。

そして、母親はいつもLサイズの服を買ってきた。ダボダボだ。

サイジングというのはファッションにおいて極めて重要な点で、極論、サイズが合っている服を着ていれば、その人はほぼまともに見える。

子供だから。大きくなるかもしれないから。

そういう貧乏性はあるだろう。
実際、我が家は貧乏だった。

しかし、中学生の時点で今とほぼ変わらない170cmの身長があった大きめの僕は、その時点で両親の身長を超えていたことにかんがみても、大きな成長は見込めない子供だった。

それでも、息子の服はLサイズ。

理系の母の合理的判断だ。聞くまでもない。
大きくなる可能性に備えたに過ぎない。

それでも僕はそこに希望を見てしまうのである。

息子の服はLサイズ。

私の息子はLサイズ。

この子はLサイズ。

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