うらやましいか
昔、宇多田ヒカルさんが何かのインタビューで「英語でしか表現できないことがある」と話していた。
それは、おそらく多くの日本人にはない感覚なのだろう。
高校時代、数学の教師が「世界には、1、2、3より大きい数は全部『いっぱい』になる部族がいる」と話していた。
もしかしたら、世界には「うらやましい」という感覚がない人たちもいるのではないだろうか。
実際、僕は他人を「うらやましい」という感覚がよくわからない。
どんなにそう思ったって、その人になれるわけはないのだから。
そう思う。
そう思うが、それは他人をうらやましく思わないように、どこかでその感情を抑え込んでいるだけなのかもしれない。
子供の頃、高価なゲーム機を持っている同級生が、確かにうらやましかった。
1人3個までのビックリマンチョコを箱買いしてもらえる同級生が、確かにうらやましかった。
明るくてスポーツ万能で女の子に人気のある同級生が、確かにうらやましかった。
「よそはよそ、うちはうち」と親に言い聞かされたからだろうか。
あの感覚は消えたのか、抑え込んでいるのか、よくわからない。
他人をうらやまず、自分を憐れだとも思わないこの感覚が、時々不気味なのだ。
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