木綿のハンカチーフ / 太田裕美
ちょっと上の世代には知らない人がいないくらいの有名曲だ。
昔、テレビで堺正章が泣きながら熱唱していて、何だかわからないが憐れで感動してしまい、直ちにカラオケの持ち歌にした。
とある呑み会でこの歌の歌詞の解釈について語り合ったことがある。
僕は、この歌は虚飾にまみれた都会に染まって純朴な田舎の彼女を捨てたダメ男の歌だと思っていたのだが、そうではないのだと。
カッコつけて強がっているけれど、実は男は都会でめちゃんこ苦労している。
それなのに、田舎の彼女は彼の頑張りを全否定。何を言っても「いいえ」「いいえ」「いいえ」の繰り返し。これじゃやってられないよ、と。そういうことらしい。
へえ、と思って職場の太田裕美ど真ん中世代の上役にヒアリングを行ったところ、男はそんなに悪くないというのが自分達世代の感覚だと思う、と熱弁があった。
へえ、へえ、そうなのか…。
思い起こせば僕が大学時代に大ヒットした『やまとなでしこ』というドラマがある。
数学者になる夢に挫折して実家の魚屋を継いだ主人公。堤真一だ。
はっきり言って感じの悪い女だが、主人公が諦めきれないその夢を「逃げんじゃねえぞ」と応援するのがヒロインの松嶋菜々子。
「私は魚屋のあなたが好きなんです」とベッタリくる家庭的な女、矢田亜希子。
最後は堤真一は松嶋菜々子を選ぶ。
僕の周りには、ダメじゃん、矢田亜希子選べよ、と批判する友人が少なからずいた。
でも僕は松嶋菜々子派だった。
矢田亜希子は男の夢をやんわり殺しにくる悪女に見えた。
まあこの辺の思考自体に賛否あるかもしれないが、若い頃の僕はそう感じた。
そう思えば、確かに木綿のハンカチーフの歌詞もまた違った印象を受ける。
もっとも僕は矢田亜希子にも松嶋菜々子にも太田裕美にも縁はなく、ただ無闇に上京したわけだが。
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