見出し画像

前を向く

先が見えない…。

どうなるのか誰もがわからない…。

だから、
だからこそ

足元を見て生きてきた私が
「前を向くこと」と決めた。

でも、
顔を上げようとするが
失敗の記憶と
先が見えない恐怖に
足がすくみその場に立ち尽くす。

「決めること」と
「動くこと」は違うんだな。

気持ちで手綱を引こうとするが
身体がこわばり
足元を見て着実に進むことへの安心感こそが
正解だという「今までの常識」と葛藤していた。

地面に目を落とす私の傍らに、
気配を感じた気がした。

声をかけられたら嫌だなと
うつむいたまま、
気づかないふりをした。

「大丈夫だよ」

誰のものか分からない手のひらが
そっと、背中に添えられた。

その背中から伝わるぬくもりが
頑固に結ばれ、
ほどくのをあきらめていた結び目を
ふわっと、ゆるめてくれる。

「あと、ほどくのはあなただよ」

そう聞こえた気がして
声の方に顔を上げた。

しかし、そこには誰もいなかった。
そして、見上げた先には
恐れていたものは何もなかった。

前を向いた私に
背中のあたたかさの余韻が
一歩踏み出させてくれた。

誰だったのだろう?
あの温かく懐かしい手のひら。

ありし日の記憶が
今の私を支えてくれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?