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仄暗い重雲の幄は 月華の軌蹟を葬り去り 天空に涕の情を伝えている 大地に響き渡る春雨の旋…
この世に倦んだわけではない 君への情緒が成長し過ぎたために 強い無意識の力に抗えなくなっ…
彼女との離別を悲しむ 過ぎ去った日々を懐かしみ 残してきた明日を惜しむ 魂は瀝る涕で曇っ…
微睡みから目覚めると 時間の回転とともに 色彩の美を得ていた太陽が 空に浮き彫りにされて…
黄金色の黄昏空を 巨大な墨色の鳥は風の力を仮り ゆっくりと飛び回っている 塗り潰されてゆく…
予め連続と離散を具えた光は あらゆる未来の圧縮された 原始の混沌から生まれる そして遠く隔…
小半日雨を降らせ続けた あの幾重にも重なる雲は まだ去ることを知らず 造化の天井を覆っている 澱んだ空気が流れる中 秋の冷ややかな風が 時折淡い雫を運んでくる 孤弱に取り残された ナトリウム灯の光は うら寂しい地上に嵌めこまれた 虚しい水鏡で散乱する 艶やかに彩られた朝顔が 人工の光を吸収しながら 大地を飾っていた 呼喚の誘いのままに 街の中心に背を向けると 黄金色の水田が姿を現わす 静かな波の狭間からは 蟋蟀の鳴き声が漏れ 生き餌を求める白鷺が どこからか飛んでくる
第壹詩 結晶君と家族の紲を結んだ十八年前 まだ生まれて閒もない私のことをば たゞたゞ暖かく…