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藤井風の青春(その詞からの個人的見解)


藤井風の過去カバー動画の再生回数の伸びが凄い。軒並み伸び続けている。
これを見つけた当初、私も虜になった。日々仕事の合間どころか一時支障をきたしそうなほどにハマって眺めていた。何故にこんなにハマるのか、音やルックスに対する好みの問題だけでは済まされないドラッグ性とも思えるこの感覚は何なのか。

その要因の一つが「青春病」の歌詞に詰まっていると勝手に解釈するに至った。


昨年発表された「青春病」という楽曲。冒頭からJKのおしゃべりで「?どゆこと?」な感覚をぶっ込んでくるポップなこの曲を私なりに解釈した時、藤井風10代後半辺りからのカバー動画が何故にこれほど私の中で魅力的なのかがはっきりした。
「生々しい。」これに尽きる。

↓↓↓ここにupしたyoutubeカバーの「ホテル・カリフォルニア」は削除されたようですが、また復帰することを期待してこのまま置いておきます。


完成されていないとはいっても既に凄まじいテクニックと美声を放ちつつ、紛れもなくエネルギーが有り余っている。満足げにも不敵にも見える笑みを浮かべつつもフラストレーションの塊に見える。憑依の裏に見え隠れするその生々しさを撒き散らすさまが、鍵盤の弾き語りという形で画面から溢れ出るその赤裸々なさまが、これまでお気楽に垂れ流していたYoutubeから発信されている。弾き語りをしている動画のはずなのに見てはいけないものを見せられてる感覚。


 「 切れど切れど纏わりつく泥の渦に生きてる
   この体は先も見えぬ熱を持て余してる
   野ざらしにされた場所でただ漂う獣に
   心奪われたことなど一度たりと無いのに 」
                        (藤井風/「青春病」より抜粋)


誰だって思春期に煩悩と闘う時期がある(と思う)。それが望むものでなくとも成長に伴い不要なはずの事象に悩むこともある。必要としないはずなのにそれについて考え時間を奪われるものだ。
自分には心に決めた進むべき道がある。ストイックに自宅の部屋からひとり世界に向けて発信しつつそこに向かって進んでいるさなか、襲ってくる不安や不要なはずの気持ち。
その生々しさをこのような衝撃的美的な言葉に置き換える…うーんこれは本当に凄い。(語彙力の無さよ…)
冒頭のJKの呟きは実は本人の呟きそのものなのかもしれない。


この曲の歌詞は、さほど読書しない私でさえ文学!これ純文学だろ!と叫びたい。この歌詞は青春を知る者にとって文学として表彰レベルであると信じてやまない。(あ、実際2020年度ミュージック・ペンクラブ音楽賞の新人賞受賞に「藤井風」の名前があったな。)


さて、上京前であろう動画の中に
「Audition」がある。

憑依や演技ではなく、実はこれは藤井風そのものなのではないのか。
上京を控えこれから踏み出すデビュー前の心情、憧れる狂気の世界に飛び込むその不安やこれから成し遂げる覚悟を持った姿をそれこそ生々しく晒しているのではないのか。

この部屋から青春のありのままの姿をひとり発信し続ける生々しい人間藤井風に魅了されていたのか。。そうかそうだったのか。。
(この際音楽性の凄さは置いとく)

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デビュー後、本人の信念に基づきそれに徹して活動を続けていると思われる藤井風。
達観しきってほぼ仙人のように見えることすらある。
2021/09/04、日産スタジアムで行われたFree Liveは、癒しの場でありたいという構想よりもその「こう在りたい」という理想を具現化できてしまっていることがまずヤバいのよ(「関ジャム」インタビューで安田章大が教会のよう、讃美歌と称していたそれ)。
それは藤井風という身体をその精神がフルに使いこなしたステージだった。癒しを届けるという意志が半端ない。このLiveの準備状況からそれを実現できている以上、その信念は間違いなく半端ないものなのだ(NHK MUSIC Specialにて苦悩する様子が公開された)。
そんな強い思想や信念があるにもかかわらず、それを微塵も感じさせないその音は柔らかい風のように優しく流れ込んでくる。そして何度聴いても疲れない…これはどの楽曲にも言えることなんだけれども。

本当の優しさは強さから生まれるって誰かが言ってたっけか。(誰だっけ)
わしももがき続けとると言いつつ、もう怖いものなどないと変わらず己を晒しまくる藤井風。
青春にさよならをした藤井風はもう無敵なんじゃないんすかこれ。

今、もうあの頃のカバー動画のような青春の湿り気は感じられない。
湿り気を帯びてもそれは既に自信を持って突き進む大人の色気に昇華してしまった。
勿論そこにもハマっていけるだろう。
音楽性の凄さは既に証明済なのだから。

今後、どんなに大きなアーティストになっても過去動画が消されず残り続けることを願いつつ、これからも進化する姿を眺めていたい。


青春はどどめ色だろうとも 
やはり美しいのだよ。



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