過ぎる五月の雨音

少し前に比べて
背の高い草が増えた月の半ば

午前中に少し降った雨の雫が
伸びた草をつたって落ちる

固いアスファルトの上で弾ける雫が
午後の日差しに照らされてキラキラと光る

ビニール傘を杖がわりにして
人と目が合わぬように俯いて歩く

キラキラと光る宝石のような液体の粒が
俯く私の目の前を通り過ぎ
足元の薄汚れたスニーカーの上に落ちた
さっきまで宝石のように輝いていたそれは
薄汚れたスニーカーの生地に吸い込まれ
さらに汚れた濃いシミのように
私の足元に同化している

しばらくすれば
背の高い草の上のキラキラした雫も
スニーカーの上の薄汚れたシミも
乾いて消えてしまうだろう

午前中にささやかながら
ビニール傘を叩き鳴らしていた雨音も
もう聴こえない

雫やシミや雨音と同様に
五月も知らぬ間に通り過ぎてしまうのだろう

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