ひそひそ昔話-その15 受験生に愛を込めて-
柔らかい霧雨が河川敷の芝生に降り注いでいる。絶好の蹴り野球日和と言えるだろう。もちろん皮肉を込めて言っている。僕は芝生を少しむしり取ってはグラウンドに向けて投げた。曇り空にそれは、消しカスみたいに散らばった。
「なぁ、俺たちこんなことしてる場合かな。同級生は大学でサークルに入って、あるべき青春を謳歌してるんだぜ。冴えないクラスメイトが俺より先に彼女なんて作ってたら発狂モンだぜ」
バッターボックスに入った女の子が、ピッチャーからヒットを奪ったことで観客席は盛り上がっていた。僕