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ひそひそ昔話

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20歳前後までの忘れ去られた記憶を手繰り寄せて、話します。恥ずかしいので、ひそひそ喋るから耳を近づけて読んであげてください。
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2020年8月の記事一覧

ひそひそ昔話-その12  『黒い雨』の時代と、現代と-

教室のうしろに飾られる,、読書ポップづくりの仕上げ作業をしていると、隣の班を見終わった副担任の先生が近づいてきた。机の上に置かれた私の文庫本を手に取り、その表紙や裏表紙の内容紹介をじっくり眺めた後、彼は口を開いた。寡黙なリクガメを思わせる口の開き方だった。 「井伏鱒二、黒い雨。私も読みました」 そして机の上に本を置き、「素晴らしいですが、本当につらいお話です」とだけ言い、別の班へと移動していった。 姑息で、卑怯で、周囲の評価を気にしいな性格だった高校1年生の私は、読書を促すた