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音楽よもやま話

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自分を形作ってきた大切な音楽たちをエピソードを交えたり、交えなかったりして話します。
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2020年2月の記事一覧

音楽よもやま話-第9回 Mr.Children-友とコーヒーと嘘と胃袋

プロローグ—ねぇ、くるみあぁ、曇り。灰色のカーテンが街には降りている。 街頭ビジョンに流れるCMは、企業の宣伝を15秒の間にきっちり終えてしまうと、すぐ次のCMへバトンを渡した。そんな液晶画面から零れる赤や黄色や緑の光が、くすんだキャンバス地みたいなあまり綺麗とは言い難い曇天に抽象的な模様を作っていた。 CMが明けると、ニュースキャスターが人類を代弁して喋りはじめる。 「…厚生労働省によりますと…感染症…新たに…中国の…では…一方アメリカに対して…」 なんだかミスチルのライブ

音楽よもやま話-第8回 ゴスペラーズ-愛してるなんて言ったこともないが、そう歌いたかった

路地裏のバーで「学校のさ、一番響くところを探し回ってさ、歌ったよね?」 街の通りから少し外れた路地裏のバーで催された二次会では、度数の高いカクテルを片手に思い出話が花開く。 「渡り廊下が一番響いたんだよね、たしか。それで放送部に頼んで録音までしてもらってさ。あの録音どこ行っちゃったんだろうなー」スナック菓子を頬張りながら、空間の一点を睨む。 「そうそう。歌ってたら、人だかりが出来ちゃってサ、困ったななんて思いながらちょっとカッコつけてた」友人の指がクルクルとウィスキーに浮かぶ