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チャンスはどこに転がってるか分からない

大学4年の夏のある日
その日は午前に試合、午後に練習の2部練だった。

その日は去年主将でサッカー部を卒業した先輩と
他に2名の方が試合と練習を見に来ていた。
先輩は大学を卒業後フィリピンのプロクラブと
契約し活躍していた。

夏前はチーム状況も良いとは言えず、
また個人的にもJクラブの練習や試合にも参加できていなかった不安もありながらも
就活をせずにサッカーに専念していたので
とにかく毎日の練習に必死だった。

試合と練習を終えグランドから
ロッカーへ戻ろうとした際に
先輩と一緒に見に来ていた方から
声をかけて頂いた。

その方はフィリピンの先輩が所属するチームの
監督で、コーチの方と一緒にシーズンを終え
フィリピンから帰国後わざわざ選手を見に
視察に来てくれていた。

「フィリピンに興味ない?」
「もし良ければ名刺に書いてある番号に連絡して」

自分にとってはプロクラブからの最初で最後の
オファーだった。

正直最初の感想は

「フィリピンのクラブか、、、」

色々と想像もつかない事も多いし、
Jリーグじゃないしなんていう変なプライドもあり
あまり前向きに考えていなかった。

家に帰り親にその日あった事を伝えた。
両親はオファーをもらった事に対して
喜んでくれていた。

そこから1ヶ月くらい経って
Jリーグからの話もない。
他に一切のオファーを受けていないのにも
関わらず未だフィリピンのオファーを受けるか
まだ躊躇していた。

そんなある日
家に帰ってから母に強い口調で

「あなたフィリピンの話どうしたの?
 小さい頃からプロを目指してやってきて
 今こうやってあなたを獲得したいって
 言ってくれてるチームがあるのに
 何を迷ってるの?
 私はそんなに迷ってるあなたが信じられない

 こんな時期からオファーくれてるチームに
 今まで返事待たして決め兼ねてるなんて失礼よ」

ハッとした。

国、カテゴリー、レベル、関係ない。
自分の今までサッカーをやってきて
目標であったプロサッカー選手になる道が
すぐ目の前にあるのに何を悩んでいたんだろう。

すぐに監督に連絡し獲得のオファーを受け入れてもらった。

フィリピンに行く事を決めた。
これからサッカーで飯を食っていける事に
サッカーだけをして生活をしていく未来に
喜びと嬉しさがあった。

両親はフィリピンに行く自分を一切引き止める
どころか全面に後押ししてくれた。
大学4年生時に苦労し悩み、目標を見失いかけていた
自分にきちんと道を示してくれた。

そしてこのチャンスを掴んだのは
紛れもない、日々の練習、試合を全力で
していたからだと思う。

いつ、どこで、誰が見ているか分からない。

こうしてプロサッカー選手への道を切り開いた


プロ一年目

私はフィリピンリーグ2部に所属する
JP Voltes FCに入団した。

フィリピン2部リーグの開幕が2月末だった事もあり
卒業式を前にしてフィリピンに渡った。
海外に行くのは初めてでは無かったが、
それでもフィリピンという国のイメージが湧かず
不安な思いが強かった。

ただチームは当時オーナーが日本人
監督、コーチが日本人、また外国籍選手を日本人(当時8名)で構成していたため、その点では多少の安心もあった。

日本と比較したフィリピンは
サッカー、言語、気候、食事、生活、全てが違った。
チームのフィリピン人選手も技術や戦術等は
荒削りな選手が多かったが、
試合になった時の戦う気持ちが日本人選手より
遥かに高い選手もいたのですごく驚いた。
物凄いポテンシャルを秘めた国なのではないか?
フィリピンに来てそんな風に感じた。

この環境の中で結果を残す。
チームの目標である1部リーグ昇格を目指す。
そのために外国人枠として貢献したい。

ただ試合の中で個人としてやれるのは当然のこと。
外国人枠として雇ってもらっている以上
ピッチの中ではスペシャルな存在で
いなければいけない。
常にチームを勝たせる選手でなければいけない。
そこを意識していた。

リーグ戦が開幕しチームは波がありながらも
勝ち点を積み重ねていった。
全試合を終え2位となり、自動昇格は掴めなかったが1部の最下位チームとの入れ替え戦に進んだ。

そして入れ替え戦に勝利しチームは
来季フィリピン1部リーグへの昇格をきめた。

チームとして最低限の結果は残した。
年間を通しての一番の目標ではあったので
ある程度の達成感はあった。

ただ個人としてはどうだっただろうか?

もちろん全試合に出場しプレーした。
チームが昇格を決めたということは、
結果として個人としても良くやったと言えるのではないかと思う。

ただ今思うとまだまだ物足りなかったかなと。
今まで学生時代までにやっていたサッカーが
今度は仕事になる。

そこへの意識がまだまだ甘かった。

有難い事にシーズン終了後に
来シーズンもチームに残ってほしいと
契約延長を提示してもらいサインした。

来季1部で戦うチーム
フィリピン2年目となる年に私はまた大きな成長への
キッカケを掴む。

つづく







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