見出し画像

日本初戦で衝撃ノックアウト勝利~タイ最凶ファイター・コントゥアラーイ

昨年、このブログで取り上げた、タイ最凶ファイター・コントゥアラーイ・JMボクシングジムは4月23日に名古屋で行われたスック・ワンチャイ・ムエタイスーパーファイト( Suk Wanchai MuayThai Super Fight vol.8 ) に出場して実方宏介選手に2ラウンドKO勝利を収めた。

スクワンソンチャイスーパーファイトは、タイでもネットで生中継された。

ヘビー級で戦い続けている120キロの実方に比べてコントゥアラーイは身長も低く170センチ程度、体重も100キロに及ばない。せいぜいライトヘビー級の体格だ。

以前行ったインタビューの際に彼が190センチの身長のクルーザー級のオージーと試合すると聞いた時は驚いたものだが、今回はそれ以上に驚かされると共に「彼ならやってくれるだろう」と、少し安心感もあった。その当時は、コントゥアラーイは減量なしで79キロ、オージーは88キロだった。

彼がタイで有名なのは前回ブログ記事でも分かるように、”元囚人”ファイターという点に尽きる。頭にまで入った全身の入れ墨は見た目のインパクトも強い。若き日の嘱託殺人等での逮捕から、長期収監生活。刑務所での囚人ファイトでは、4階級でタイ囚人チャンピオンに輝く。出所後はプロボクサーとして活躍し、俳優としてイギリス映画「暁に祈れ」へ出演を果たし、そして40歳を超えた現在もリングに上がり続けている。

彼の闘いへのこだわりや、ジェットコースターのような人生に魅了されたものも多く、タイのテレビでも何度も取り上げられている。

今回、日本初登場となった名古屋のリング、立ち上がり静かなまま初回を終えるが、2回に入り、実方の顔面に何度もカウンターを決める。最後は左右のフックがクリーンヒットし、続けて右ローキックが実方の太ももに入って、そのまま120キロの巨体は沈んだ。2度のダウンを奪ってのKO勝ちとなった。この勝利で、コントゥアラーイはマイナー団体ながらもIMSAの世界ヘビー級王者となった。

これまでプロボクシングでは、ABFウェルター級、 WBCアジアライトヘビー級シルバー王座に輝いたことがあり、MX EXTREME ムエタイでも94㎏のベルトを獲得したことがある。そのように、マイナー団体を含めて何度も王者となっているが、彼にとって「ヘビー級」のベルトは初である。

彼のジムに訪問した際は、コロナ渦で全く試合がない状態だったが、それから1年間、試合の機会がまた増え始め、40歳を超えながらもコントゥアラーイは定期的にリングに上がり続けた。

ここ最近で出場した試合はMMAグローブムエタイから、国際式ボクシング、ムエタイと国際式ボクシングのミックスルールの試合(1-3ラウンドは国際式、4-5はムエタイ)、そしてベアナックルファイトとジャンルは多岐にわたる。

昨年9月に生観戦したベアナックルファイトのBKFC3でのドミニクアニー戦も印象的だった。この試合、筋骨隆々としてウェイトインの後で瓶ビールを飲み干すパフォーマンスをした、ハワイの強豪をレフェリーストップに仕留めた。

BKFC3の計量後記者会見で、ドミニク選手と。

元ボクシング世界王者のシリモンコンが出場したことで、タイで注目を集めていたベアナックルファイトについて、コントゥアラーイに興味があるか、以前のインタビューでも尋ねた。その際は「拳が痛いしそれはムリだ。オレはようやらん」との回答で、出場を固辞していたが、主催者側より良いオファーが来たのであろう。

当日のBKFC3のメインはブアカーオ・バンチャメックで、その入場よりこの日の一番の盛り上がりを魅せた。ブアカーオは初回1分50秒KOでトルコ人を葬ったが、試合内容は、対戦相手との実力差もあり、もうひとつだったと思う。

このイベントで、内容で魅せたのはコントゥアラーイであった。ドミニクとの実力は拮抗しており、緊張感のある中で、カウンターでダウンを奪い、拳で目の下をカットさせ、レフェリーストップに追い込んだ。彼のサポーターというべき地下格闘技団体・ファイトクラブタイランド(コントゥアラーイが創始者の一人)のシャツを着た若者たちの面々も会場で、勝利の瞬間に歓声をあげていた。

入場時も不思議な魅力で注目を集める
photo credit : BKFC ASIA  /  BKFC THAILAND 3のドミニク戦

その後、BKFCでのベアナックルを続けるのかと思いきや、まさかのイベントの規模縮小と、中断という状況となり、次は国際式ボクシングの舞台に再び戻ることとなった。

そして、WBCアジアクルーザー級王座決定戦出場のチャンスが来た。相手は二回りも大きい、カメルーン人のロリーランバート選手で、この試合まで14勝1敗1分という戦績。2022年10月26日、バンコクのRCAで行われた興行のメインイベントとして組まれた。ロリーの懐の深さとダイナミックな攻撃に守勢に回ることの多いコントゥアラーイは、なかなか突破口が見えないまま、判定負け。久々の国際式ボクシングのタイトル奪取とはならなかった。

photo credit : SPACEPLUS BANGKOK  /  WBC アジアクルーザー級戦
photo credit : SPACEPLUS BANGKOK  /  WBC アジアクルーザー級戦

そして今回の実方宏介戦と続いていくのだが、近年、コントゥアラーイは、自身より大きな外国人選手と試合が組まれることが多く、その経験からか、実方相手に、非常に落ち着いた戦いぶりで見事なノックアウト勝利となった。

公称42歳のコントゥアラーイは、「40歳を超えて試合の後、1日寝ただけでは疲れが取れなくなった」とは言っていたが、まだまだ現役生活は続けるだろう。自身のジム、JMボクシングジムで練習生と共に毎日汗を流して、常に試合に出られるコンディションを保っているという。これから名古屋で獲得したIMSA世界ヘビー級王者として、防衛戦も行い、再び日本のリングに上がる機会もあるかもしれない。

↓ 実方戦のKOシーン(タイ語)

↓ 実方戦フルラウンド(タイ語)

↓ BKFC(ベアナックルファイト)挑戦


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?