きみは韓国のTYPE-MOONと呼ばれるスタジオProject Moonを知っているか
初っ端で一番強いカードを切ってしまいましたが、この記事は韓国のインディーゲームスタジオProject Moonのリリース2作目『Library Of Ruina』を攻略wikiや攻略動画を頼りに137時間かけてクリアした人間によるProject Moon雑語りになります。
ここから先はProject Moonのリリース1作目『Lobotomy Corporation』と2作目『Library Of Ruina』のネタバレが多分に含まれます。ご注意ください。
2021年5月、『Lobotomy Corporation』に入社
2021年5月、「韓国のTYPE-MOONって呼ばれてるスタジオがあるんですよ」、この言葉を受けて筆者は即座に『Lobotomy Corporation』という企業で管理人とは名ばかりの地獄の中間管理職に就いた。我ながらチョロすぎる。
『Lobotomy Corporation』はSCPを下敷きに作られたアブノーマリティという化け物たちを収容した会社内で、管理人としてモブ顔の職員たちにアブノーマリティのご機嫌取りをさせてエネルギーを手に入れていくゲームだ。
1日経つ毎に新しい化け物(アブノーマリティ)がやってくるし職員の手は足りないし、ミッション条件まで考え出すと頭がパンクしそうになる。
この時点でProject Moonはどんどん要素を積み上げていくインフレ体質なゲームを作っているが、これに苦しめられた後に本編ストーリーをくらうと「すげぇ嚙み合ってるな……」と感心するので、Steamでセールの時にでもお買い求めいただきたい。安い時は900円程度で売られている。
現時点でSteamで1万6千件以上のレビューを集め、そのうち93%が好評という「非常に好評」なタイトルとしては大変お買い得だ。
このゲームは性質上プレイングにかなり性格が出るつくりをしており、筆者は「突破さえ出来ればええねん」と職員の死体を積み上げながらガンガンいこうぜ方針で進めていたが、同時期にプレイしていた友人は「職員ひとりも殺さず進める」という信念のもとゲームの一時停止機能を使いまくってプレイ、ゲーム内時間を1日進めたときには現実に1日が経っていたなんて事もよくあったそうだ。
結果的に筆者は『Lobotomy Corporation』本編50日のうち何度目かの24日目でギブアップしてしまったが、友人はその先へ進んでいったのでどちらが正しかったかは火を見るよりも明らかだ。
命は簡単に消費していいリソースではない……。
そんなこんなで何度も積み上げては1日目に戻ってやり直す『Lobotomy Corporation』をやっていると、「韓国のTYPE-MOONって言われてるんだよ」という言葉を受けていたこともあって気づきを得る。
「このゲーム、グローバル向けに角が立たないようにしたFateでは?」
そう思って見てみると「英霊ってセンシティブだよな……。あ、SCPってほぼフリーコンテンツなんじゃないか!?」と気づいてしまった人間の手で作られたゲームに見えて仕方なくなってきたし、ネタバレになるが『Lobotomy Corporation』が本編中でやっているエネルギー集めは聖杯生成の儀式なのでほぼ聖杯戦争だ。英霊を監禁してエネルギーを搾り取っている。
こうなったらもう止まらないので筆者はロボトミー社から脱走してDiscordに演説じみた真似をしに行った。
韓国エンタメは金を稼がないと干上がるとわかっているから外国をよく見ている。
その結果、グローバル市場では角が立ちそうなFate英霊をクリエイティブ・コモンズ(CC BY-SA3.0)を掲げているSCP財団ネタに置き換えることで問題をクリアしている。
もう『Lobotomy Corporation』キャラがセイバーやギルガメッシュの親戚に見えはじめているんだ。たすけてくれ。
そうやってひと通り吐き出して落ち着いてきた筆者に二の矢が刺さる。
2021年8月、Project Moonのリリース2作目『Library Of Ruina』が正式リリース。
2020年5月から出来てる分だけ形にしてアーリーアクセスに踏み切った『Library Of Ruina』、その後ソシャゲやオンゲのようにせっせと新章や新要素を追加していき、おかげで実装当時はゲームバランスが上手くいってなかったなんて事もあったそうで、攻略wikiを見ると「このボスはver.××では無法な攻撃を仕掛けてきたが最新版ではナーフされている」といった痕跡を確認できる。そうして2021年5月には1年がかりでほぼ完成という形にまでこぎ着けた。
物自体は2021年5月には完成したにも関わらず8月までSteamでの正式リリースが延びたのは、xbox game passでのリリースとタイミングを合わせたかったという事情らしい。
YouTubeの公式チャンネルでopムービーが公開されている。
このopだけでも「曲の趣味がいい……」と思った方はぜひゲーム本編に手を出していただきたい。各ステージ毎に新曲引っさげてくる勢いで数多くの楽曲を取り揃えており、おまけに各ステージ毎に背景、新規立ち絵、専用スチル……と行き届いたサービスが提供されている。
まぁ、それらを享受する為には地獄難易度のバトルパートを突破する必要があるのだが……。
そんなわけで図書館バトルSLG『Library Of Ruina』だが、図書館に客を招いては始末、招いては始末……を繰り返してぶっ殺した招待客を本にしていき、”たったひとつの本”を作り出すことが大枠としてのストーリーの目的になる。
ただこの目的というやつもメインキャラであるアンジェラの目的であって、当たり前だが他のキャラにはそれぞれ思惑があって舞台にあがっている。この辺の思惑も絡みあって本編の味は大変濃厚だ。そうなのだ、筆者はTYPE-MOON、TYPE-MOONと言っているが、Project Moonは共通の世界観で作品を展開してしっかりと独自の道を切り拓いている。ちょっと待ってくれ、この辺もTYPE-MOONっぽくないか? 言い出したらきりがないので割愛する。
ここでは『Library Of Ruina』のバトルシステムを理解させる気はないので、仕組みを詳しく知りたい方はゲーム内のマニュアルやインターネットにいる解説者を頼ってもらいたい。
とりあえず今回もロボトミーに続いてインフレに次ぐインフレを起こしていく事だけは実際に体験した筆者が保証する。
それでもざっくり触れさせてもらうと、初期は1ターン1回しか行動入力できなかったキャラが後期だと1ターンに4回入力できる。それを自パーティ5人、計20個入力して相手の行動を捌けと要求される。
このバトルにしか存在しない状態異常を持つギミックボス。端的に言ってふざけている。
バトルパートで最初からクイックモードがONになってる理由がわかった。これFGOと同じで等速だと話になら……等速だと行動する度に手動でダイスロールさせられるの!? クイックモードでも1回の戦闘に5時間使わされた事あるんだけど!?
といった感じで大変楽しませてくれる骨のあるソシャゲチックバトルを堪能させてくれるゲームになっている。
意味わからん……と思われたかもしれないが、Don't think. Feel. という感じでお願いしたい。
まぁ、新しいTCGのルールを覚えた上に都度追加されるカードのテキストを読み込んで現環境を理解するくらいの覚悟が必要だが、一歩踏み込んでバトルページのテキストを読み込むようになれば結構すぐにコスト踏み倒しだのもうこれほぼ違法……なコンボだって見つけられると思うので、もしプレイされるならバトルパートもしっかり味わってほしい。
筆者は『Library Of Ruina』のバトルパートがあまりにも重量級だったおかげで、休日は起きてからずっとボスにかかりきりになるという生活を続けてSteamのフレンドから「もうずっとやってる……」「いい加減、刑務所から出所してほしい……」と遠巻きに見られていた。
その甲斐あって本編クライマックスあたりは2週間に48時間ほどプレイする生活をすることで攻略出来たが、攻略wiki等の助けがなければプレイ時間の桁がひとつ増えていたと思う。なんてゲームだ……。
余談だが、『Library Of Ruina』はバトルに勝つと敵が本になるという設定なのでドロップアイテムは本だ。岸辺露伴がいなくても倒すことで敵を本に出来る世界、本当に恐ろしい。この図書館で殺されたら書いた覚えのない自分の自伝本が世に出るのだと思うと「ここでだけは死ねない!!」という気になる。
このドロップ本を使って次のシナリオを解禁したり本を精製加工してキャラの装備品にするのだが、この加工パートがひどいので是非とも見てほしい。
おわかりいただけただろうか。そう、『Library Of Ruina』は買い切りゲーにも関わらずゲーム内の根幹部分に”ガチャ”があるのだ。
これを初めて見たときには頭がおかしくなるかと思ったが、初見の敵から奪った本でガチャを回してレアカードが出たとき、そこらのソシャゲなど目ではないほど脳汁が出た。
人はハマっているソシャゲのガチャからレアが出ると気持ちよくなるものだ。
『Library Of Ruina』とTYPE-MOON
ここからは型月に頭やられた人間が記号的に『Library Of Ruina』を見てしまった例をご紹介したい。
翼・・・ゲームの舞台になる都市の支配者層として君臨する大企業。1社につきひとつは特異点と呼ばれるオーバーテクノロジーを持つ。
特異点・・・人権無視な犠牲を出す代わりに使えるオーバーテクノロジー。ほぼ型月魔法。
フィクサー・・・都市中にいる武装何でも屋。依頼さえあれば猫探しから殺人、戦争出兵まで何でもやる。特色、1級~9級の格付けがある。ほぼ型月魔術師。
特色・・・フィクサーの元締めであるハナ協会から色を授けられたフィクサー。ほぼ型月冠位。
12協会・・・フィクサー協会。治安維持、戦闘特化、情報収集、暗殺案件と各分野ごとの依頼を所属事務所に振ったり協会直属フィクサーが処理したりする。ほぼ型月時計塔であり十二学科、1つ目の協会が法政科も兼ねてるつくりしてるのもポイントが高い。
図書館・・・前作のL社に代わる聖杯戦争の舞台であり、聖杯の器
Project Moon作品はグローバルTYPE-MOON
というわけで「韓国のTYPE-MOONって呼ばれてるスタジオがあるんですよ」と言われてProject Moon作品に飛びついた筆者はそれっぽい諸要素を見て楽しめた上、ADVパートの豪華さに感心したり狂人が作ったとしか思えないほど要素多すぎなバトルパートにブチ切れたりと感情を揺さぶられまくって気づけば1周クリアするだけなのに137時間も楽しませてもらっていた。
グローバル展開するにあたって危険な要素を角が立たないようきれいに整形しているかと思いきや、本編クリアまでに3桁時間を要求するような「広く売りたいのか狭くコアなファンを囲いたいのかわかんねぇ!!」と思わせる矛盾したタイトル『Library Of Ruina』。
この辺も含めてProject Moonの現時点での総決算タイトルなのは間違いないので、『Lobotomy Corporation』未プレイでも『Library Of Ruina』に気軽に手を出してほしい。
何しろ前作で起きたことをADVパートでゴリゴリ回想するし、公式の方からネタバレかまして「前作未プレイ者も囲い込むぞ!!」という気合を見せてくれるので……。
この辺り、『Library Of Ruina』は前作ロボトミーでは比較的ボリュームがなかったテキストをこれでもかと増量、ストーリー面を異常なほど作り込んで対策してきている。これは前作を触ったことがある人間には嬉しいボリュームアップだった。
もしも「ちょっと興味あるぜ!!」という方がいたらSteam版が3,090円で好評販売中なのでぜひ手に取ってほしい。要求PCスペックもそんなに高くないので、あなたがそこそこのPCをお持ちなら問題なくプレイできるはずだ。
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