The Half of It

映画の感想を気ままに。

舞台はアメリカの田舎町。主人公は高校生のエリー・チュウ。中国出身の父と二人暮らし。父は英語が苦手。エリーは成績優秀で、宿題の代行で小遣いを稼ぐ毎日。そんな中、アメフト部のポールから「ラブレターの代筆」を頼まれる。エリーは密かにアスターを好いていたが、その感情を押し殺して依頼を引き受けることにした…というあらすじ。ここまで、だいたいwikiから取りましたが、実はこの時点で私はちょっと不服です。

エリーが、アスターへの感情を「密かに」するには、すでに自分の好意に自覚していなければなりません。でも最初の頃のエリーは感情に対してとても未熟です。賢い彼女は、学校のレポートは得意ですが、恋人との別れ際に電車を追いかけてしまう人の気持ちを理解することはできません。

この映画では、そんな彼女の心の中に、「理解者」に出会えたという喜びの芽が吹き、やがて恋という感情が育っていく様子を丁寧に描いています。

途中、おしゃべりが苦手なポールのために、エリーはピンポンをしながら会話のキャッチボールを指導するシーンがあります。けれど、ピンポンを通して、他者とのコミュニケーションとはどういうものかを教えられたのはむしろエリーのほうだったりするのです。

(ネタバレになりますが)この映画のラストで、エリーは町を出ていきます。アスターと結ばれるとか、ポールとうっかり結ばれるとかではなく、この世界にはアスター以外の、ポール以外の、登場人物がたくさんいて、エリーは広い世界でもっとたくさんの人間に出会うのでしょう。聡明な少女が、これからたくさんの生身の経験を経て、大人になっていく。最初の一歩を爽やか&キュートに描いた作品です。

恋愛映画でよく引用されるプラトンの「片割れ」。
人生は、片割れ探しだけではないよ、というメッセージをあえて込めた、いいタイトルだと思いました。



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