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High-frequency trading in a limit order bookの (2.3)式を導出してみる

https://people.orie.cornell.edu/sfs33/LimitOrderBook.pdf

zennに書いていた記事をこちらに引っ越し。

掲題の論文の(2.3)式が謎で、なんとか解いてみたという内容。

まず、株価の中値が次の式で表される。

$$
dS_u=\sigma dW_u \tag{2.1}
$$

ここで $${S_u}$$は株価の中値で、その初期値が$${s}$$。$${W_u}$$は1次の標準ブラウン運動であり、$${\sigma}$$は定数。ブラックショールズ過程の第1項である時間微分の項がないバージョンで、かつ、右辺に$${S_u}$$が掛け算されていないバージョン、という理解。つまり、ランダム要素しか考えていない、という意味。

エージェントの目的は最終時刻$${T}$$の指数効用関数の最大化。$${q}$$の株を持つ最終時間$${T}$$の評価関数を次式で表現される。

$$
v(x,s,q,t)=E_t[-\exp(-\gamma(x+qS_T))] \tag{2.2}
$$

これは、効用関数を使って最大化を目的とするんだな。ふーん、という感じだったが、いきなり次で面食う。

$$
v(x,s,q,t)=-\exp(-\gamma x)\exp(-\gamma qs)\exp \bigg(\frac{\gamma^2q^2\sigma^2 (T-t)}{2}\bigg) \tag{2.3}
$$

これって、どうやったの?となり、これを導出してみたくなった。

まず、$${E_t[\cdot]}$$は平均値を表す、期待値演算子。なので、確率分布を掛け算して積分して期待値を計算したのだと推察。

また、目的の効用関数に$${S_T}$$が入っているので、こちらはきっと時間で積分したのだろうと。(2.1)式より、きっとこうだろうと。積分区間は任意の時間$${t}$$から最終時間$${T}$$までとして、

$$
S_T = s + \sigma \int^T_t dW_u \tag{1}
$$

積分区間は時間だが、微小変化量は$${dW_u}$$という変わった感じ。これは伊藤積分というやつ。離散時間系で次のように書くことができる。$${t}$$から$${T}$$までの時間を$${N}$$分割したと考えると、$${N}$$を無限大に飛ばせば連続時間になるので、

$$
\begin{aligned}
S_T &=s + \sigma\lim_{N\rightarrow \infty} \sum^{N-1}{i=0} \Delta W{u}(t_i) \\
&=s + \sigma\lim_{N\rightarrow \infty} \sum^{N-1}{i=0} \bigg(W{u}(t_{i+1})-W_{u}(t_i)\bigg)\\ \tag{2}
\end{aligned}
$$

のようになり、$${\sum}$$を展開して考えると、

$$
\begin{aligned}
S_T =s &+ \sigma\lim_{N\rightarrow \infty} \bigg(W_{u}(t_{N})-W_{u}(t_{N-1}) \\
&+W_{u}(t_{N-1})-W_{u}(t_{N-2}) \\
&+\cdots \\
&+W_{u}(t_{2})-W_{u}(t_{1}) \\
&+W_{u}(t_{1})-W_{u}(t_{0})\bigg) \\ \tag{3}
\end{aligned}
$$


差分が連続して出てくるので打ち消しあって、$${t_N=T}$$, $${t_0=t}$$なので、

$$
\begin{aligned}
S_T &=s + \sigma\lim_{N\rightarrow \infty} (W_{u}(t_{N})-W_{u}(t_{0})) \
&=s + \sigma{W_{u}(T)-W_{u}(t)}
\end{aligned}
$$

とかける。なので(2.2)式は次のようになる。

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