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聖域のギャラリスト(自問自答ファッション 新コンセプト)

物語の始まりは、例えばこんなふう。
相変わらずのコント調、あなたの夢におじゃまします(ブリアナちゃん風に)

(私):「いらっしゃいませ」
よ」
(「自問自答ファッションを愛する会」会長、以下A):「こんにちは、jujubeさん。お店を始めることにしたんですって?今日は招待状をいただいたので、遊びにきましたよ」
(私):「そうそう、どうもありがとう。ようこそギャラリー『サンクチュアリ(聖域)』へ」
「って、ギャラリーにしちゃ、作品が何も無いじゃないですか〜!!」
(私):「そう、ここはそういうお店なのです。」
(A):「え!まさか賢い人にしか見えません、とか言って見えないものを売りつける気じゃないでしょうね⁈それって詐…!」
(私):「何言ってるの、人聞きの悪い!そんな訳ないでしょ。ここではね、まずゆっくりお客様の話を聞くんですよ。作品をお売りするのはそれから♪」

自問自答ファッションにおける、新しいコンセプトについて、モヤモヤと考えておりました。
転職したこと、そのタイミングで自問自答ファッション講座を受け、実践して二年。始めた当初とコンセプトが進化してきたようです。想いがむくむくと、夏の入道雲みたいに膨らんでいきます。
コンセプトは気に入っていたけれど、「長」というような肩書きのつくものを、これからも目指すことに少し違和感を感じる部分がありました。

さて、どんな風に進化しましょうか。

自問自答ファッションを始めた頃は、持ち前の好奇心の強さから、着てみたいスタイルもあれこれ欲張っていました。ピタリと定まっていなかったものが、自問自答して解像度が上がり、クローゼットの精度も少しずつ上がり、「必要なものを、必要な分だけ」の最高のスタイルに近づいているように思います。

そこでコンセプト「美術館館長」からもっと個人的な「ギャラリスト」にしてみたくなりました。
(「組織に属して肩書きを背負い、たくさんの作品、万人に向けたもの」から、「組織に属さず肩書きは持たず、唯一無二のプライベートな作品、個人に向けたもの」へ。)
現実の私自身とも少しリンクするものがあるし、これから目指したいところでもあります。

今度収集・展示するものは「個人の聖域」です。
唐突だけれども、自問自答ファッションを始めて、私が服以外に買ったものはまず「絵」。
大好きな絵本作家、齋藤槙さんの原画をいくつか。

それからランプ、チクニのとても美しいランプを一つ。


写真はCATAWARAさんのもの

ファッション関係ないよね!と言いたくなるような、この心境の変化よ。
気がついたら私はそっと創り始めていました、私だけの聖域、小さな祭壇みたいな場所を。自分が美しいなと思うものや愛しいものたちを集めて。
そんなわけで私は、この感覚で理想と現実の仕事を融合させられないものかと思っています。
現実の仕事も小さな聖域を創り、自分のためだけでなく、それが誰かの救いになれたらとてもいい。

私は「今が人生の底かもしれない人」の話を聞くことが多い星の元に生まれているようです。
カウンセリングなんてできないし、アドバイスもしません。ただ聞く、ありのままを肯定する、共感するだけですが、心に自分の聖域を持っていて常に「気持ちが常温、平熱」なので、疲れた人が時たま話をしにきて、自分の人生へ帰っていくイメージです。それが私の人との繋がりかたなら、まあいいかとこっそり思っています。(16パーソナルはINFJ提唱者)

差し出せるものしか、差し出さないけれど。
奪ってなお、満たされない悲しきテイカー(相手から奪うことばかりして「自分さえ得すればいい」と考えている人)体質の人もいて、懲りているのでそっとドアを閉めるけど。
世界を変えられなくても。

世界は残酷だ それでも君を愛すよ
なにを犠牲にしても それでも君を守るよ

ヒグチアイ

残酷だけれど美しく、愛おしいこの世界で、自分が素敵だと思うものを、少しずつ集めた小さな聖域のようなギャラリーを片隅に持てたなら。
自分の聖域を創り、何かしら人の役に立てることを生業としていけたらなら。

その時、私はどんな格好をしているだろう?
ギャラリストは、国籍も性別も年齢も不詳な格好がいいな。
ちょっと神秘的で、風変わりで。思わず目を奪われ、とっつかまえて「なにこれ⁇」と言いたくなるような物を何かしら身につけるのもいい。
それからふらっと旅に出られるような身軽な姿で。

(グローブトロッター一つでどこへでも)

それはこんな物語です。

商店街の片隅に、小さなギャラリーがある。
ドアを開けると、シャラシャラと小さなウインドチャイムが鳴り、足を一歩踏み入れると、少しひんやりとした空気と柔らかい光を感じる。
どこかの国の民族音楽が低く緩やかに聞こえてきて、不思議と懐かしい気持ちになる。様々なスパイスが混ざり合ったような香りもする。

店内を見渡すと片方の壁は空っぽで、手前にテーブルと大小の椅子がいくつか。それからソファーが一つ。学校帰りの小学生たちのたまり場になっているらしく、ソファーの周りにはおもちゃ箱や菓子鉢などが置かれ、雑然としている。

もう片方の壁には、ギャラリーにふさわしく、小さな絵がいくつかあり、祭壇のように整然としている。端にはアンティークの飾り棚が置かれ、本、様々な国の雑貨。ドウダンツツジが青々と生けられた壺とユーカリのスワッグ。

入り口正面、奥の方には本が天井までぎっしり積まれた小部屋が見える。その小部屋の手前、古い書き物机でやはり本に囲まれて、何やら作業していた店主が顔を上げ、「ああ、いらっしゃい」と呑気そうな声で話しかけてくる。その脇には、床に敷かれた絨毯の上にちょこんと座る小さめの茶色い看板犬がおり、小刻みにしっぽを降って歓迎してくれる。

「お久しぶりですね、最近、調子はどうですか?」
店主がゆっくり立ち上がり、こちらにやってくる。麻のような涼しげなゆったりしたローブ、ゆるっとしたパンツ、足元には金色の刺繍が施されたバブーシュ、といういでたちだ。今さっき異国から帰ったばかり、とでもいうように、古めかしい大きなトランクも足元にある。

「それがね、以前作ってもらった私の『聖域の棚』、少し新しくしたいんだよ」
「わかりました、そちらの椅子にどうぞ。話をお聞かせ下さい。あなたの聖域にふさわしい本を選びましょう、必要ならそれ以外のものも一緒に。」
そう、ここは『聖域のギャラリー』。
一見すると普通の古書店兼ギャラリーだが、秘密のメニューがある。
この店主は、頼めば自分だけの『聖域』を創ってくれる。まるで何か、普通では見えないものが見えているかのように。そして客はなぜだか、この飄々とした人物の前で、懺悔でもするように、するすると心の澱みたいなものを吐き出してしまうのだ。
「時にオーナー、いいスリッパ履いているじゃないの。」
「これはお目が高い。このバブーシュはチュニジアに嫁いだある女性が作っているもの。どんな話か、ご興味がありますか?」
「いいね、聞こうじゃないの。」
「では、スパイスの効いた異国のお茶でもいれましょう。これも今回の旅で仕入れてきたもの。」
「ありがたい。」
「それではお話いたしましょう、この美しい靴にまつわる、悲しく切ない祈りの物語…。」

『聖域のギャラリスト』jujube作 より




うーん、そんな生き方ができたらいいな!
まだ、ただの理想だけれど。

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